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ロンとハーマイオニーが監督生の仕事があるからとヒヨリ達とともに前に向かっていくのを見届けて、僕は空いているコンパートメントに入った。歩けばどこからともなく目を向けられるからだ。早く戻ってくるからと言った二人の言葉を信じて、視線から逃げるように窓の外を見た。
その時、コンコンとコンパートメントを叩く音が聞こえた。そっちをむけば、監督生バッチをつけた黄色のローブを着たセドリックがいた。
「セドリック...!!」
「やぁ、ハリー。連絡ができなくてごめんね」
「ううん、いいんだ...!!タイリー達には会った?皆、君の心配を...」
「あぁ、さっき会ったよ。...ハリー、僕は君に謝らないといけない」
「...え?なにを?」
セドリックは、周りをキョロキョロと見たあと、そっと中に入ってきて後ろ手に扉を閉じた。そして杖を一振りして魔法をかける。
「今のは...?」
「人避け呪文だ」
セドリックは杖を懐にしまい込み、僕の前の椅子に座る。顔を近づけて、じっと僕の顔を見つめたあと彼はゆっくりと口を開いた。
「...全て君に任せてしまってる。僕も、君と同じ場にいたのに」
「セドリック...」
「僕も君と戦うよ、ハリー。君は一人じゃない」
一緒にあの墓場に連れていかれたセドリックは、途中呪文を唱えられるまでは覚えているらしい。まずそもそも、死の呪文を唱えられたのに生きているはずがないという理由で、セドリックの名前が預言者新聞に書かれる事は今まで一度もなかった。
それでもセドリックは、覚えている。あの場にいたのは、蘇ったヴォルデモートだという事を。
「ありがとう、セドリック」
「当たり前の事さ」
当然のようにそう答える彼に、僕はやっと笑顔をうかべる事ができそうだった。
「そういえば...どうして呪文をかけられたのに、その...」
「生きているのかって?」
「...うん」
「ダンブルドア先生が仰るには、タイリーにかけられた守護魔法が関係しているらしいよ。詳しい原理は僕たち外国人にはわからないけれど、僕も君も無事なのは、守護魔法があったからだって」
粉々になってしまったヒヨリから貰った守護魔法のかかったブレスレットが、僕をまもってくれていた。それは重々理解しているつもりだったのだけれど、改めてそう言われると、どうやってこの感情を処理したらいいのかがわからなかった。
「...そうだったんだ」
「守護魔法は人を生き返らせる事はできないから、僕や君の命を守ってくれたみたいだ」
いつだってヒヨリ達は守ってくれていた。僕を。ずっと。そのことがどれだけありがたいことで、どれだけ嬉しいことなのか。セドリックがこうやって、僕に話してくれるなんて、きっと知らなかっただろう。
「おい、ポッター」
列車から降りて、ロンとハーマイオニーとホームを歩いていれば、後ろからマルフォイが話しかけにきた。珍しく一人だ。クラップ達がそばにいない。
ロンが少し睨みつけながらマルフォイに何の用だと問いかける。
「お前に用はない、ウィズリー。ポッター、魔法省がお前に目をつけてる。今年一年は大人しくしていた方が身のためだぞ」
「うん...わかってはいるけれど...」
「魔法省が目をつけてるってどういう事?マルフォイ」
「そのままの意味さ」
ハーマイオニーにそう答えると、マルフォイはもう一度僕の目を見ると前に歩いていった。あまりに普通に話しているせいか、ロンだけが一人驚いたように目を見開いていた。
「...君達いつのまにあのマルフォイと...?」
「去年の試合の時に、僕がゴブレットに名前をいれたわけじゃないって、マルフォイは信じてくれたのさ」
「あー...その...」
「大丈夫さ、ロン。僕はもう気にしてない」
「...ごめん」
たしかに、あのマルフォイがこんなに親切に僕の心配をしてくるなんて普通ならわからないだろう。これも全部、ヒヨリが彼を更生(といっていいのかわからないけれど)してくれたおかげだ。
大広間について席に着けば、いつもなら近くに座ってくるシェーマス達が僕を遠巻きに見ていた。そんな事気にするなと言いたげな顔で、ロンとハーマイオニーは隣に座ってくれたことが救いだった。
まずは新入生の歓迎をして、そのあとにダンブルドア先生の「かっこめ!」という掛け声で全員でご飯を食べ始めた。
皆が食べている間も、よくわからない視線や声は止まらなくて、なかなか手は進まなかったけれど。その時、ダンブルドア先生が前にでて毎年恒例のお話が始まった。
「諸君、今年は先生が二人変わる。まずはグラブリー・ブランク先生がハグリットの不在中”魔法生物飼育学”を担当する。闇の魔術に対する防衛術担当は、ドローレス・アンブリッジ先生じゃ。先生のご健闘を祈ろう。
さて、管理人フィルチさんからの要請が...」
ダンブルドア先生が一旦言葉を切り、後ろをちらりと見た。ドローレス・アンブリッジという人は、どぎついピンク色の服を全身に纏い、椅子から立ち上がっていたようだ。そういえば、あの顔に思い当たる節がある。尋問にいた、ファッジの部下だ。
「歓迎のお言葉ありがとうございます」
アンブリッジはわざわざダンブルドア先生の言葉を遮り、前に歩きながら話す。急な出来事に生徒も先生たちも驚いている。我らが寮監のマクゴナガル先生はもともと大きい目がさらに驚きで大きくなっていた。
「皆さんのしあわせな笑顔が私を見上げているのは、素敵ですわ。皆さんとはよいお友達になれることでしょう」
「「だろうね」」
甘ったるい話し声に唖然としながら皆見つめる。双子達が茶化すように、同時にそういった。
「魔法省は常に若い魔法使いの教育を重要視してきました。歴代校長は歴史あるこの学校に新風を吹き込みましたが、進歩のための進歩は奨励すべきではありません。保持すべきものは保持し、正すべきものはただし、禁ずべきとわかったものは切り捨てていきましょう」
あまりにもよくわからない話だったために、全員がポカーンと見つめる。それが終わったのだとわかったのは、ダンブルドア先生が拍手をしたからだ。あぁ、終わったんだとでもいうかのような雰囲気でまばらに拍手をする生徒達と共に僕も何度か拍手を小さくしておいた。
「ありがとうアンブリッジ先生。実に啓発的じゃった」
「啓発的?どこが?」
「...どういう意味?」
さっきのあの話が一体どんな意味を持っているのか。ざわざわとした喧騒のなか、僕たちと同じような話をしている生徒がたくさんいた。近くで話しているヒヨリ達の声も聞こえて、それをちらりと見てからハーマイオニーを見る。ハーマイオニーは僕とロンを交互に見ると「魔法省が干渉するという事よ」と答えた。
「なぁ首席様。さっきの話要約してくれよ」
「ダンブルドア先生のやり方が気にくわないらしい」
さすがは首席のタイリーの言葉。その一言であっという間に理解できたのは僕たちだけじゃなくて、聞き耳を立てていたほかの生徒もだったらしい。一瞬で動揺を露わにする皆の反応を見て、僕はもう一度アンブリッジの方を見た。彼女は依然とにっこり笑ったままキョロキョロと僕たち生徒を眺めているようだった。
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