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昨日の歓迎会で聞いた「あのガマガエルみたいなアンブリッジによるとても啓発的だったお話(byフレッド)」なんてどこへやら。結局どんな人間が来ようとグリフィンドールの天下のウィーズリーには関係ないそうで、朝からいつも通り楽しそうにいたずらの話をしていた。
「Ms.陸奥村、Mr.シェバン、少しだけお時間よろしいですか?」
アンジーとアリシアとわらいながら、フレッド達の世話を焼いているタイリーやリーを見ていると、突然背中からマクゴナガル先生の声が聞こえた。振り向けば、少しだけ険しい顔をしている先生がこっちを見ていて、私とタイリーは顔を見合わせて慌てて席を立ち上がった。すると、先生は手のひらを見せて、「その場で座ったままでよろしいのです」と私達の動きを制す。
「...貴方の祖母とは古い知り合いです。私からきちんと、貴方達はホグワーツが保護しているとお伝えしました」
「ありがとうございます...!!」
タイリーと立ちあがり、先生に頭を下げる。一安心とまではいかないけれど、ホグワーツにいる間はなにも考えずにいてもいいだろう。そんな心を察してか、マクゴナガル先生はすぐにまた口を開き言葉を紡いだ。
「ですが...今後、どうするのか。貴方達はしっかりと考えるべきです。...部外者でもある私から言えた事ではありませんが、周りの人の意見や心配も考えて、是非慎重に行動をしてください。よろしいですね?」
その言葉はもちろん厳しい言葉ではあったけれど、それでも滲み出る先生の優しさがあって、私とタイリーはもう一度深く頭を下げてお礼を言った。
家に戻るのかどうするのか。はっきりいって、そんな事は火をみるより明らかなのに。
新しくきた闇の魔術に対する防衛術の先生、まぁつまりアンブリッジ先生の授業はあの啓発的なお話しから想像つくようにとてもつまらない授業、らしい。ハーマイオニーが怒りながら廊下を歩いていたのをちらりと見ただけだからなんとも言えないけれど、5年生の言葉を聞く限りでは杖を使わせないようだ。
机の前につき椅子に座る。なんというか、そんな教科書を見るだけの授業なら自習でいいじゃないかと思うのだけれど。
「やーね、教科書だけだなんて...」
「今年は私達NEWTなのに」
前の席に座るアンジーとアリシアがこっちを振り返りながらそう言う。ホグワーツ最終学年となった私達は、今年で最後の試験を受ける。はっきりいってとても大切な試験だからこそ、しっかりとした授業を受けたいというのに。私は二人になんと返事をすればいいのかわからずに、とりあえず肩をあげて流しておいた。
そんな話しをしていれば、アンブリッジ先生が教室の中に入ってくる。机と机の間をカツカツとヒールを鳴らして歩いていく先生からは、鼻にツーーーンとくるようなとてもきつい香水の香りがしていた。
「御機嫌よう、皆さん。この授業では杖を振るなど野蛮な事は行いません」
ほらね。こんなこと言ったらグリフィンドール生だっているんだから文句連発されるに決まってるのにある意味その勇気を讃えたいよ。ほかの生徒も皆ブーブー文句を言ってる。そんなものは無視なのか、アンブリッジ先生は甲高いんだか甘ったるいんだかわからない笑い声をあげて「それでは教科書3586ページ」と一言でぴしゃりとその空気を凍らせた。
「先生」
「なんですか、Mr.ディゴリー」
不満たらたらなのは全員同じだ。そんな中セドリックが手を挙げて発言する。
「杖を使わせないということは、どういうことですか?」
「そのままの意味です、Mr.ディゴリー。今のご時世杖を使ってなにを覚えると言うのです?」
「闇の魔術に打ち勝つための呪文は、この授業で覚えるものですよね?」
「Ms.スピネット、発言したい場合は許可を得なさい」
「先生は、闇の帝王は復活していないと?」
はっきり言って、この事を信じている人がどれだけいるのかは知らない。私はもちろん信じているけれど、その言葉にどれだけの真意があって聞いたのかは分からないがアンジーが凛とした声でそう言った。
「...いいですか?闇の帝王など復活していません。そんな嘘をほらふく人達には罰則を与えます」
アンブリッジ先生は私達生徒をじろりと眺め終えると、明らかに私に目を合わせて、続けた。
「それに...こんな真っ赤な嘘を信じて国を閉じるバカな国もあるようですわね」
思わず握った杖を振り上げようとしたその時、私よりもいち早く立ち上がったのは隣の席に座るタイリー。彼はすかさず無言で杖を振り、アンブリッジ先生を縛り付けて地面に転がせた。
「教師に杖を迎えるとは何事ですMr.シェバン!退学ですよ!」
「彼女のまえで日本を、家をバカにするのは俺が許さない。退学にしたければすればいい。俺には失うものも守るものも、どうせなにもないのだから」
タイリーはそう言うと、机から離れてゆっくりとアンブリッジ先生にむかって歩いていく。恐怖にでも慄いているのか、先生は少しだけ震えながら体制を整えようと頑張って立とうとしていた。
そんな罰則をタイリーにだけ被らせるわけにはいかない。もう一度私は杖をにぎり、彼と同じように先生にその先を向けて立ち上がった。
「杖を向けてしまいました。私も退学でしょうか」
どこまでも、私はタイリーと一緒だ。タイリーは私をちらりと振り向くと、その動作に合わせてか前に座るアンジーやアリシア、さらにはフレッド達も立ち上がった。
「おっと、俺の杖もだ」
「私の杖もよ」
「僕の杖もさ」
黄色のネクタイをつけたセドリックまで。ほかの寮のひとたちも皆杖を握りながら立ち上がり、先生を睨みつけた。
「俺たちの王様とお姫様を退学になんてさせるわけねーだろ?」
それを言ったのはジョージだろうか。彼はいつも浮かべてる笑顔を消して、じっと冷たい顔で先生を見ている。皆が庇ってくれている事が嬉しくて申し訳なくて、私はもう一度強く杖を握りアンブリッジ先生を睨む。私達だけじゃない。これは全員の意思だ。授業を、きちんとしたものに。
「...タイリアナ・シェバン。今夜部屋にきなさい。罰則を与えます」
静かな教室に、アンブリッジ先生の声だけが響いた。
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