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ホグワーツに通って2年が経った。生まれて10数年、常に一緒にいた相棒に、新しい相棒が加わったのはつい去年の出来事だった。一人はリー・ジョーダン。ドレッドヘアを毎日結い上げるイカしたヘアスタイルの相棒だ。クィディッチバカで、俺たちがクィディッチ選手になった時おかげかなんなのか、実況スタイルを築き上げた第一人者だ(と、自負している)。
「天文学は意外に楽しいんだよな〜眠くなるけど」
「それは楽しいとは言わないんじゃないのか、リー」
「なんつーの、見てて楽しい」
「勉強をしろ」
天文学は基本的に夜に行う。俺たちは寒い中寄り添いながら地面に座り込み上を眺めて羊皮紙を広げていた。魔法薬学に比べたらどの授業もましに思えるもんだけど、どうやらリーは天文学がお好みのようだ。塔の上は担当の教授がまだ来ていないのも相まってか皆思い思いに騒いでいる。
「何だよリー、お前は星を見るのが好きだってか?」
「意外にロマンチストなところもあるんだな?リー」
「うるせーよジョージ」
相棒にそうからかわれて少し恥ずかしそうに笑うリーを、俺も一緒になって小突いてやる。星や月が動くのを眺めるのはいいが、それをどう見たら楽しいのか生憎俺にはこれっぽっちも理解できない。とりあえず必修だから、という理由でしかこの授業は受けていないから何が面白いのか是非とも俺にご教授してほしいものだ。
「あら、私も天文学好きよ?」
「おいおいアンジー、君もロマンチストだっていうのかい?」
そんな俺たちの話に入ってきたのは、アンジェリーナ・ジョンソン。クィディッチの選手で、去年から引き続きずっと一緒にいる相方だ。そりゃもうアンジーは、他の女子と比べちゃ失礼なぐらい素敵な体で、俺の目は去年から釘付けってわけだ。その溌剌とした性格も、ものをはっきりというところもドンピシャなわけだけど。
「天文学は女の子に人気よ、ねぇアリシア」
「そうね、私もこの授業は結構好きな部類よ」
同じように島を作って地面に座っている隣の人物に話を振るアンジー。話を振られたのは金髪の美女、アリシア・スピネット。彼女も同じクィディッチ選手で、相方である。アンジーとアリシアは本当に性格が似ていて、時々衝突みたいなことをしているがそれでも常に一緒にいる。あんなに喧嘩してても仲良くいれるのはさすがこの二人のサバサバした性格が効いているのだろう、とは思うが、まぁ一番は、真ん中に一人クッションがいるからだろう。
「意外にアンジーもアリシアも乙女だもんね〜」
「ちょっとヒヨリ!!」
「乙女って何よ!!」
「え、乙女でしょ?お二人さんは」
その名も、ヒヨリ・陸奥村。グリフィンドール唯一のアジア人だ。またの名をオジョーともいう(俺たちはずっとこう呼んでいる)。去年、アンジー、アリシアとともに仲良くなった相方の一人だが、このオジョーは本当にいい性格をしている。悪戯な笑みを浮かべながら二人を茶化す時もあれば、二人が喧嘩をした時はお互いが一人にならないように気を使って行き来して仲直りをさせる天才だし。
そして、極め付けには俺に意味ありげな視線を寄越すところ。いや、オジョーが俺に気があるというわけじゃない(そんなことは100歩譲っても、いや1万歩譲ってもありえないけれど)。誰にも言ってないのにどうしてこいつはわかるのだろうか。オジョーは俺をちらりと見てから、またアンジーに笑いかけるのだ。
「(ったくこいつは...)」
俺はふぅと息をついて肩をすくめる。すると俺の肩に腕を回してきたジョージが面白そうに耳元で笑い声をあげた。
「ほらほら、フレッド、俺たち静かにしねーとママが怒るぜ?」
その言葉に俺も同じように(同じ顔だけど)ニヤリと笑みを浮かべて、先生が来るまでざわついているこの塔の上で一人おとなしくリーの隣で座りながらこっちを睨んでいるもう一人の相棒を見た。
「そうだな相棒、ママが怒る」
「誰がママだ」
腕を組みながら俺たち二人を睨み上げるタイリーに、俺たちは肩を組んでいない方の手を顔に当てて、やれやれとわざとらしく首を横に振った。リーが苦笑を浮かべながら、同じように俺たちを見ていた。
「ママは俺たちを産んだことをお忘れになったようだ」
「産んだ覚えはない」
「こりゃひどい。この中で一番誕生日が早いからもうボケてしまったらしいな」
「お前たち、さすがの俺も怒るぞ?」
タイリアナ・シェバン。黒髪でスラリとした鼻筋の、切れ長な目を持つどこからどう見ても惚れ惚れとするような顔を持つこの男が、もう一人の相棒だ。タイリーは日本とイギリスのハーフで、ホグワーツに入るまではオジョーの家でオジョーの使用人として生きていたらしい(まぁ今もなんだけど)。そんなグリフィンドールの王様は(この前レイブンクローの女子がそう言っていた)、主人であるオジョーがそれはもう大好きで大好きで仕方がない。これ以上ないほど大切にしていて、見てるこっちがその甘さに胃もたれしそうなぐらい、タイリーはオジョーを大切にしている。
「おぉ怖い怖い。冗談だってタイリー」
「ったく...」
はぁ、と呆れたようにため息をついているタイリーを俺たちは笑いながら見つめる。そんな俺たちのことを見ていたオジョーたち三人も、クスクス笑いながらこっちを見ていて。タイリー楽しんでるだけだからもっといじめていいよ、ととても最高なことを言ったオジョーに俺はもう一度ニヤリと笑えば、タイリーは慌てながらお嬢様と小さい声で叫んだ。
「お嬢様、俺は別に楽しんでなんて...!!」
「そんなこと言って、タイリーいつも優しい目してるよ?」
「呆れてるだけです...!!」
「えー本当は?」
「本当はも何もですね...!?」
普段は冷静にあまり感情を表に出すことの少ないタイリーは、オジョーの前になるとコロコロとその表情を変える。その目も、いつも俺たちに見せるような変なことをしてないかと監視する鋭い視線や、呆れた視線、見守るような視線(こう考えるとやっぱり母親だ)とは違って、本当に、大切な人を見るそんな目だ。
まだまだ青い年齢ではあるけれど、それでもこの二人の関係性は、見ていて本当に安心する。ずっと見ていたいと思うほど、この二人を纏う雰囲気は、ふんわりとした優しいものなんだ。
きっとそれが、オジョーとタイリーの言う、英国とは違う日本の魔法というものなのだろう、なんて思ってしまうほど、俺はやっぱり、このカップルが好きらしい(付き合っているわけではないけれど)。
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