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次に受ける予定だった占い学が、先生の都合で休講となったために私は一人、廊下を歩いていた。
タイリーは同じ時間にある数占い学を取っているため、フリーだ。アンジーたちも数占い学とってるし、フレッドたちは知らない。図書館にでも行って時間を潰そうかなと思いながら、足をそっちに向けた。
授業中でもあるからか、図書館は人が少なかった。これなら人の気配も気にせずに勉強ができそうだ。私は持っていた教科書を机の上に置いて席を取り、変身術の参考になりそうな本を探すために棚を物色する。
どれを選ぼうかなと棚を見上げながら歩けば、背の低い女の子が短い腕を必死に伸ばして上の方にある本を取ろうとしていた。
私は彼女の後ろに近づいて、その本を取り彼女の顔の前に差し出す。
「はい、これかな?」
「あ、ありがとうございます...!!」
驚いたようにこっちを見上げて、その本を受け取って深く頭を下げたその子の胸元にあるのは、赤いネクタイ。どうやら我らがグリフィンドール寮生だったようだ。
「グリフィンドールだね。1年生?」
「はい...!!」
「私もグリフィンドールだよ。その本もう読んでるの?すごいね〜...」
術を連携して行う際の変身術の便利さ、と書かれたその本は私もつい最近まで読んでいた本だった。そもそも変身術は授業の中でも一位二位を争うほどに難しい授業と言われてるから、その変身術の中でもレベルの高い本を1年生が読んでる事自体凄い事だ。
「私...マグルだから、少しでも魔法について知りたくて...」
とても勤勉な子のようだ。本当はレイブンクローに向いていたんじゃないだろうか?私は、少し笑みを浮かべながら、その子の頭の上に手を置いて、膝をかがめる。
「私、ヒヨリ・陸奥村、三年生だよ。あなたは?」
「ハーマイオニー・グレンジャーです」
「ハーマイオニー...ね。ちょっと言いにくいから噛んだらゴメンね」
おどけたようにそういえば、ハーマイオニーは小く笑いながら、頭を撫でる私の手を受け入れてくれた。
「グリフィンドールに一人だけ東洋人がいるって噂で聞いたの。それってヒヨリの事...かしら?」
「うん、多分そうじゃないかな?」
「その東洋人と、そばにいる黒い髪の男の人が三年生のトップだって聞いて...ずっと、お話したかったの」
「え、なにその噂」
1年生にそう広まってるということは...おそらく双子たちだろう。私は苦笑いをこぼして膝を伸ばす。自分の胸元らへんにあるハーマイオニーの顔を見下ろして、自分の席を指さした。
「私あっちに席取って置いてるから、一緒に座る?」
「い、いいの...?」
「うん。私でよければ教えるよ。変身術はこう見えて得意なんだ」
「嬉しいわ...!!変身術は、原理を理解していないと中々うまくいかないって書いてたから教えて欲しいの!!」
「オッケー、じゃあオススメの本あるし、それ取ってきてあげるから先に席座っててくれる?」
「えぇ!!」
ハーマイオニーは嬉々としながら歩き出す。その後ろ姿を見送って、私は1年生の頃に期末試験などでたくさんお世話になった変身術の本を取りに行った。変身術の原理とシンプルに書かれたそれは、一見堅苦しいように見えて実はとてもわかりやすく書かれている。ハーマイオニーは勉強家っぽいし、きっとこれを熟読すれば変身術のなんたるかを理解できるだろう。
「はい、これオススメだよ」
「ありがとう、ヒヨリ...!!」
マダムに怒られるからできるだけ小さい音で声をかける。私はハーマイオニーの隣の椅子を引いて座り、その本をパラパラとめくりながら説明をした。
「術式がたくさん並んでて一見難しそうに見えるけど、この術式が変身術の本当の原理。この式が理解できればこっちのもんだよ」
術式とともに図解も載ってあるページを開いて、まずは変身術がどのようなものなのかを私なりの言葉で説明をする。ハーマイオニーはとても真面目な顔で羽ペンを握り、羊皮紙にカリカリと文字を書き出した。
「そもそもAと言うものをBというものに姿を変えるという行為が、とても無茶な行為だということを理解すること。A≠Bだから、私たち魔法使いはこれを=にする必要があるの。そのために、術を使う。オーケー?」
「えぇ」
「その術というのがね...んーと...」
本を何ページかペラペラとめくり、ある部分を指差す。術式とともマッチ棒を針に変えるという例を使いながら、その本には文字が書かれていた。
「この式、これが実際に私たちが変身術をしてる際に計算されている術の概要」
「こんなに緻密なのね...とても複雑だわ」
「マッチ棒を針に変えるだけでも複雑だから、そりゃ変身術は難しいと思わない?」
「えぇ...その通りね」
ハーマイオニーは本に書かれている文字を指でなぞりながら、じっと見つめる。その瞬間、あるところで指がふと止まり、私の顔を見上げた。
「ねぇ、ヒヨリ」
「ん?」
「ここはどういうことかしら?」
そう言われた場所は、私も1年生の時に何回も何回も考えてもわからなかったところで。きっとこの子と私は似ているな、と心の中で思った。私は自分の羽ペンを握り、羊皮紙を広げる。私が当時理解した自分なりの考えを教えるために。
ハーマイオニーは食い入るようにその羊皮紙を覗き込み、たまに疑問に思ったことを質問して、そして納得したらまた説明を聞き、そしてまた質問をして、を繰り返した。気づけば私も熱が入っていて、夜ご飯の時間が近づいていた。
「ごめんねハーマイオニーもうこんな時間」
胸元にある懐中時計を取り出して見せれば、ハーマイオニーも驚いたように目を見開いて羽ペンを置いた。
「一緒に広間に行こうか」
「えぇ、ごめんなさいこんな時間まで...」
「大丈夫大丈夫私も楽しかったよ」
申し訳なさそうに目を伏せるハーマイオニーの頭を撫でて、私たちは本を閉じながら立ち上がる。結局自分の勉強はできなかったけれど、とても可愛い後輩ができたし良しとしよう。ハーマイオニーは私オススメの本を借りるそうで、マダムの方へと近寄った。私はハーマイオニーの分の羊皮紙や羽ペンも抱えて、入り口に進む。
「ごめんなさい...!!持たせてしまったわ...」
「気にしないで。はい、どうぞ」
「ありがとう...後、もしよかったらなんだけど、さっき説明しながら書いてくれてた羊皮紙ももらえたりする...?」
隣に並びながら広間に向かって歩く。ハーマイオニーは私の顔を見上げながら、そう聞いた。
「いいけど...もっと綺麗な字で書けばよかったね」
「ううん、とてもわかりやすかったわ。これで変身術も頑張れそう」
「それはよかった」
丸めていた羊皮紙をハーマイオニーの持っている本の上にそっと置いて、もう一度前を向く。ハーマイオニーはとても勉強熱心で、一緒に過ごして楽しかった。こんなに真面目な一年生いるんだな、ととても感心したのだ。
「ご飯は友達と食べる?」
広間の扉を開けながらハーマイオニーにそう聞けば、彼女は少し顔を曇らせてうつむかせた。まぁまだ始まって1ヶ月ほどだしね。
「じゃあ一緒に食べよっか」
「いいの...!?」
「うん」
一緒に食べようといえば、キラキラと輝いた笑顔を見せたハーマイオニーに、私も思わず笑顔が溢れる。こうも喜ばれるとは思わなくて。私はグリフィンドール寮の人たちが座ってる机の方により、一人の姿を探す。真っ黒なサラサラとした髪を持つ男の人を。
「タイリー、お待たせ」
「お嬢様...!!一体どこにいらっしゃったのですか...!!」
「図書室にいたの。気づいたらこんな時間だったんだ。アンジー達は?」
「クィディッチの練習だよ」
タイリーが私に気づいて立ち上がり、焦った顔を見せながら詰め寄る。私の質問に答えたのは、タイリーの前に座っていたリーだ。リーももうご飯を食べ終えたのか立ち上がる準備をしていた。
「そうだったの」
「タイリーずっとオジョーのこと待ってたんだぜ」
「ごめんね、タイリー」
「いいえ...何事もないのなら大丈夫です」
心のそこから安心したように安堵の笑みを見せるタイリーをリーは笑いながらおちょくり、そして立ち上がる。最近できたハッフルパフの彼女と夜のデートらしい。楽しんできて、といえばリーは片手をひらひらと振りながら入り口に向かっていった。
「タイリー、紹介するね。図書室で仲良くなった後輩のハーマイオニーだよ」
そう言ってハーマイオニーを紹介すれば、ハーマイオニーは慌てて頭を下げて自己紹介をした。タイリーはハーマイオニーの視線に合うように膝を屈めて、笑顔を浮かべる。
「タイリアナ・シェバンだ。よろしく」
「よ、よろしくお願いします...!!」
私たちの学年一位と知り合えて嬉しいのか、ハーマイオニーは若干興奮気味にそう言った。私は教科書を置いてタイリーの座っていた場所の隣に座り、自分の隣をトントンと叩く。
「ご飯食べよ」
そう言ってハーマイオニーに顔を向ければ、彼女は教科書を机の上に置いて恐る恐る言った風に隣に座る。それを笑顔で見て、タイリーはまた私の隣に座ると、私とハーマイオニーの分のサラダやお肉をよそってくれた。
それに慌てながらありがとうとお礼を吸うハーマイオニーが可愛くて、思わず私とタイリーは妹のような後輩をゲットしたのだ。
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