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ある日グリフィンドール寮に駆け巡った一つの噂はとてつもない速さで走り、そしてグリフィンドールの寮生の全員の心を鷲掴みにしたのだ。


「ハリーがシーカーになったのよ!!」


談話室で盛り上がるアンジーたちを尻目に、当の本人であるハリーはおとなしそうに談話室の隅の方で縮こまっていた。私は隣でクィディッチのシーカーに選ばれる事が、どれだけすごいことなのかわかっていないハーマイオニーに熱く語る。


「そ、そうなの...?」


やはりよくわかっていないのだろうハーマイオニーの顔がなんだか青く見える。熱く語りすぎただろうか?少し反省。とりあえず双子達が主役なのかというぐらい騒いでいる中心から離れて、本を読み始めたハーマイオニーをそっとしておこうとタイリーと決めた。


「ハリー」


タイリーを従えて(という言い方にも語弊はあるけれど)私は一躍英雄となったハリーに声をかける。まぁ一躍と言っても彼は生まれた頃から今までずっと英雄なのだけれど。組み分けの時なんてポッターをとった、ってずっと騒いでいたしな。


「シーカーおめでとう、すごいね」
「皆からの期待もすごくなるとは思うが、あまり気負いすぎないようにな」
「うん、ありがとう...えっと...」


そうだ。双子たちから聞いてはいるだろうけれど、話すのは今日が初めてだった。何度も私とタイリーを繰り返してみるハリーに改めて、私たちは自己紹介をした。


「フレッドたちから聞いてたりするかな?三年生のヒヨリ・陸奥村だよ、よろしくね」
「タイリアナ・シェバンだ。タイリーって呼んでくれて構わない」
「よろしく、二人とも」


小さい掌を握って握手をする。ハリーは少し恥ずかしそうな顔をしながら顔を赤らめていた。
英雄だなんだとずっと言われていた生き残った男の子のハリーだったけれど、なんだ、ただの可愛らしい一人の男の子じゃないか。ハリーの眼鏡が少しずれていたから私はそのメガネに少し触れて、元に戻してあげる。


「あ、ありがとう...」


さらに顔を赤くしたハリーに私は慌てて手を離して、少し子供扱いしすぎたかなと危惧する。それを見ていたのか、フレッドとジョージがニヤニヤ笑いながらハリーに覆いかぶさった。


「何顔赤くしてんだよ、ハリー!!」
「オジョーはダメだぞ、ハリー!!もう先約がいるんだ!!」
「先約...?って、別に僕は...!!」
「ハリーがかわいそうだから離れなって、二人とも」


フレッドたちによる熱い抱擁のせいで小さいハリーが押しつぶされそうになってる。見かねた私がそういえば、彼らの保護者的存在であるタイリーがフレッドとジョージからハリーを救い出した。そのあともなおフレッドたちは騒ぎに騒いでいて、もはや何のために騒いでいるのかもここにいる大半の人たちはわかってないだろう。

私とタイリーは顔を見合わせて苦笑を浮かべる。まぁ、これがグリフィンドールってやつなのだろう。



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