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「呪文のコツって何かしら?」


一人だけの時間があればハーマイオニーと図書館に過ごすようになって早何回目。ハーマイオニーたちはついに明日呪文を使うらしい。勉強熱心なハーマイオニーは予習をしようと張り切って教科書を読んでいる。


「んー...発音かな?」
「発音?」


よくフリットウィック先生はビューンホイとかなんとかっていうけれど、私的には発音も重要なのではないかと思うのだ。私は日本人だから、日本の呪文とはわけが違くてなかなかに手間取ったことを覚えている。


「しっかりと発音できれば大体うまくいくと思うよ。あとは杖の振り方かな?」
「なるほど...杖の振り方はどんな感じなのかしら?」


ハーマイオニーは杖を握って、何度か振りながらそう聞く。私は開いていた教科書から一回目を離して、隣に座っているハーマイオニーの杖を握っている手に自分の手を重ねて、何度か杖を振ってみせた。


「こうやればいいよ。できるだけ自分が思っている以上に大きく振ってね」


そう言ってあげれば、頭の良い彼女はすぐにその振り方を体に覚えさせて、練習を開始した。本当にこの子のこの努力家なところは一体どこからくるのか、私は不思議に思う。





そんな練習を昨日してあげた今日、ハーマイオニーを朝の広間で見つけ、タイリーと一緒にハーマイオニーの近くに行って、昨日教えた通りにね、と耳元で言えばハーマイオニーは少し頬を赤らめてしっかりと首を振っていた。

そんな朝が終わって、夕食の時間。今日はハロウィンだからご飯もご馳走がたくさんあるはずだ。(ほとんどかぼちゃ料理だけど)


「ハーマイオニーがいない...ねぇ、タイリー、ハーマイオニー見かけた?」
「いいえ...お嬢様の言う通り見つかりませんね...」


双子とリーが手当たり次第いろんな人にトリックオアトリートと言っている中、私とタイリーはハーマイオニーを探す。初めてのホグワーツのハロウィンなのだから、一緒にご飯を食べてどれが美味しいのかとか教えてあげたかったのだけれど。

二人でキョロキョロとしていれば、隣に座っているアリシアがこっちを見てクスリと笑った。


「貴方達同じ動きしてて面白いわ」
「笑わないでよ、アリシア」
「そんなことよりタイリー、子供三人から目を離してもいいの?」


アリシアの隣に座っていたアンジーが笑みをこぼしながらタイリーの後ろにいる双子とリーに視線をよこす。その視線に気づいたタイリーが後ろを振り向けば、双子とリーは満面の笑みを浮かべて手を差し出した。


「「「Trick yet Treat!!お菓子はいいから悪戯させろ、タイリー!!」」」
「断る」


その手の中にあった花火爆弾がタイリーに向かって投げられそうになるが、タイリーはすかさず杖を振ってエバネスコ、と唱えた。


「くっそー...一体いつになったらタイリーに悪戯できるようになるんだ」
「消さなくてもいいじゃねーかよータイリー」


消えてしまった花火爆弾をキョロキョロとしながら探すふりをする双子は、そういうとどさりとタイリーの隣に座る。タイリーはため息を大げさにつき、杖をローブの中にしまった。


「君たちと同室になってから一度だって悪戯にかかったことがあったか?」
「ない」
「むかつくほどにな」
「一回ぐらい成功させてーよな」
「一度も成功させずに卒業する」


フレッド、ジョージ、リーの順番にそういえば、タイリーはぴしゃりと言葉を言い放った。本当にこの四人は...と、私とアンジー、アリシアは顔を見合わせてクスクスと笑った。

もうそろそろご馳走も無くなってしまうだろうから、私はかぼちゃパイやクッキーなど、私の好きなお菓子を紙ナプキンに包んでローブのポケットの中に入れる。あとで寮でハーマイオニーにあげるためだ。それを見たタイリーも、同じように包んで、ローブに入れていた。


「もうそろそろ寮に戻る時間かしら?」
「今日は練習ないの?」
「えぇ。あとで部屋でお菓子でも食べましょう」
「いいわね」


今日はアンジーとアリシアもいるそうだ。お菓子を包んでいてる二人を笑顔で見ていれば、急にざわざわと広間が別の意味で騒ぎ始めた。なんだろうかと私たちも顔を上げて広間の入り口を見れば、クィレル先生がバタバタとダンブルドア先生の元に走り寄った。


「トロールが...地下室に...!!お知らせしなくてはと...!!」


クィレル先生はそういうと、ばたりと床に倒れた。
先生が倒れた。その事実だけで生徒である私たちには衝撃が走る。途端に響く悲鳴の声や焦るような声。それをダンブルドア先生は立ち上がり少し沈めると、声をあげた。


「監督生よ、すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮に帰るのじゃ」


その言葉に、各寮の監督生が立ち上がった。我らがグリフィンドールの監督生、パーシーも立ち上がり、生徒は皆椅子から立ち上がって広間の入り口へと殺到する。
こんなに人がいたらなかなか寮に戻るのも大変だろう。私の斜め後ろにいるタイリーもそう考えてるようで、私の手を引っ張り、少し人が少なくなってからにしましょうと言った。
それに頷いて、二人で人の流れに逆らって壁際によれば、巻き込まれる形で入り口に流れ散ったアンジーたちが、「寮に先に戻ってるわよ!!」と言っていたので、それに手を振ってわかったと大きく声をあげた。


「ねぇタイリー」
「はい?」


タイリーは未だに私の手に自分の手を重ねて、きつく握っていた。使用人だから、守る使命にでも駆られているのだろう。ひょんなところで手を握るというイベントが発生して喜んでいるのもつかの間、私は重大なことに気づいたのだ。


「ハーマイオニー、この事知ってるのかな?」


その言葉に、いつもならすぐに言葉を返すタイリーが何も言葉を言わなかった。つまりはそういう事だろう。

そう思えばすぐに、私は動いた。タイリーを無理やり引っ張って人ごみの中へと入ろうとする。タイリーは後ろで私を引き戻そうと私の手を引っ張っていた。


「お嬢様!!」
「タイリーいかないと!!ハーマイオニーが!!」
「ですが、彼女の居場所をご存知なのですか!?」
「それは...!!」


そうなんだけど。

最後にもう一度強く引かれて、タイリーの方を振り返る。タイリーは困ったような顔をしてこっちを見ていた。


「俺たちがむやみに探すより、先生に言った方が早いのでは...」


確かにその通りだ。一度冷静になろうと何度か深呼吸して、もう一度タイリーの顔を見て、首を縦にふる。タイリーの手を引っ張り、前の方にいるマクゴナガル先生の元へと行く。かわいい後輩がもしかしたら危ないかもしれないのに、何もできない自分に無性に腹が立った。


「マクゴナガル先生!!」


スネイプ先生と話をしているマクゴナガル先生の元に行く。先生は目を見開いてこっちを見ると、キリッとした目つきで私たちの名前を呼んだ。


「Ms.陸奥村、Mr.シェバン、寮に戻るようにと言ったはずですが?」
「すぐに戻ります。あの、ハーマイオニー...えっとグリフィンドール1年生の、Ms.グレンジャーが、夕食の時間ずっと見かけていなかったんです。もしかしたら、この騒ぎを知らないでいるかもしれません」


私がそういえば、先生は驚いたように目を見開く。すかさず隣にいたスネイプ先生が口を開いた。



「寮に戻っている可能性は?」
「あるとは思いますが、寮にいない可能性も考えたので」


タイリーがそう答えれば、スネイプ先生とマクゴナガル先生はもう一度顔を見合わせる。
そして私たちの方を向いて、わかりましたと言った。


「報告ありがとうございます、Ms.陸奥村。貴方達も、早く寮に戻るように。決して、Ms.グレンジャーを探すような無謀なことはしないように」
「はい」


先生にそう釘を刺されれば、さすがの私も勇気は出ない。その言葉にしっかりと頷いて、二人で頭を下げて人の少なくなった入り口へ足を進めた。ハーマイオニーが無事であることを願って、寮に走るように二人で帰った。


寮に戻れば、アンジーとアリシア、フレッド、ジョージ、リーのいつもの五人が談話室で私たちを待っていて、私とタイリーの繋がったままの手を見てからかってきた。慌ててその手を離すタイリーに少し残念な気もしたけれど、その夜部屋に戻ってアンジー、アリシアと三人で私のベッドに集まってきゃっきゃっと笑いながら話したのは、ある意味で一つの思い出だ。




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