12
ヒヨリに心配をかけないという約束を私は二度も破ってしまった。約束ではないかもしれないけれど、それでもあれは、彼女なりのお願いだったと思っている。
初めて出会ったあの時から、私は何かとヒヨリに頼ってきていた。呪文のコツや、どの教科書を見ればテストで点数を取りやすいのか。私が今も尚学年で優秀だと言われているのは、ヒヨリの助けがあったからだし、そんなヒヨリが私は心の底から大好きだったのだ。
だから無礼にも、誰にも伝えずに私の悩みを聞いてくれ、なんて言っても、きっとヒヨリは助けてくれるってわかっていた。
去年と同じように、選択授業で空いている時間なんかは私とヒヨリは一緒に勉強していたけれど、最近は常に、秘密の部屋についての調べ物をしていた。
「まず、秘密の部屋には何があるって言ってた?」
「...この世で一番恐ろしい生き物よ」
「なら、部屋について調べるよりそれを調べる方がいいんじゃない?」
「つまり...?」
「魔法生物について。私としては、"サラザール・スリザリン"が作った部屋なんだから、彼に関連する生き物を調べるべきだと思う」
「...蛇!!」
「That's right。これで絞られるんじゃないかな」
やっぱり、ヒヨリは天才だ。何に手を出したらいいのかわからない真っ暗な道でも、ヒヨリのように一つ一つ的確に後を追っていけば、答えは見つかるんだ。
私とヒヨリは声を押し殺して、お互いに顔を見つめ合ったままコクリと首を縦にふる。そして手当たり次第、魔法生物、特に蛇や爬虫類について描かれている図鑑を探した。
就寝時間ギリギリまで、私たちは毎日のように図書館に通った。そんな私たちを必ず迎えに来るのは、ヒヨリの使用人、タイリーだ。
「お嬢様、ハーマイオニー」
図書館の奥で本を積みかさねて調べている私たちを、タイリーはすぐに見つけていた。静かな、タイリーの落ち着く低い声が聞こえて私は隣のヒヨリの肩をトントンと叩いた。
「あぁ、タイリー。今日もありがとう。もう時間?」
「はい。あと30分ほどで、就寝時間です」
「じゃ続きは明日ね、ハーマイオニー」
「そうね」
本がどこに行ったかわからなくなってはいけないため、目の前にある本棚にアルファベット順に本を入れる。きっと全部が終わったら、元に戻すからごめんなさい、誰にでもなく私は心の中で謝った。
「いつも夜遅くまで、何の調べ物ですか?」
「ハーマイオニーのレポートのお手伝いだよ。闇の魔術に対する防衛術で、闇に生きる生物についてのレポートが出されたみたいでね」
ヒヨリは、タイリーにも言わないでいてくれていた。
いつも一緒にいて、どんな時でも仲の良い二人に、秘密を作らせてしまったのは申し訳ない。
「ハーマイオニーの選んだ題材がすごい難しくて。でも私も興味があったから、少しだけお手伝い」
よくもまぁ、嘘がべらべらと出るものだ、と感心した。その嘘を言わせてしまったのは私だけど。
「そうなの。ヒヨリの方が、熱心になっちゃってて困ってるわ」
「お嬢様は昔から、興味が出るととことん突き詰めていくのが癖なんだよ」
私を間に挟んで、タイリーとヒヨリは横に並ぶ。笑顔でそう話すタイリーを見上げて、次にそんなタイリーに「やめてよ」と少し恥ずかしそうに言うヒヨリを見る。
こんなラブラブな二人に挟まれて、居心地悪いと思われるだろうか?残念なことに、私はこの二人が大好きだから、とても居心地が良かったのだ。
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