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「アンジー、アリシア、頑張ってね!!」
「えぇ、当たり前よ」
「貴方の応援の声、今回も期待してるわ」
ハッフルパフ戦が始まる。ユニフォームを着て寮生全員から激励の声を浴びて、競技場へ向かっていくチームの後ろ姿を見守る。アンジーとアリシアは、クリスマスプレゼントにあげたクィディッチの用具品、手袋をつけていた。
そんな二人をきちんと笑顔で見送って、私はタイリーに「後で行くから先に行ってて」と伝える。訝しげな顔を見せながらも、リーに連れ出される形で出て行ったタイリーを見送って、私とハーマイオニーは図書館へ向かった。
「確か昨日見た本にあったんだよね」
「どれ?」
「...あった!!」
世界で最も恐るべき生物一覧。そう書かれた分厚い図鑑のあるページを開く。小さい声で、ハーマイオニーに聞こえるように話しながら、指を添えてその文字を読む。
「我らの世界を徘徊する怪獣で最も恐るべきはバジリスク。数百年も生きながらえ、この巨大な蛇の人睨みは命取り。蜘蛛は、前触れ...蜘蛛って?」
「そういえば...ミセス・ノリスが石にされた時、蜘蛛がいたわ。外に向かって行っていた」
私は一度も、その場に出くわしたわけではなかったからわからないけれど、出くわしたハーマイオニーには思い当たる節があったようだ。
「...これよ、ヒヨリ。バジリスクだわ」
「...でも、こんな大蛇がどうやって動き回るのかな...」
本を机の上に置き、私は顎に手を添える。蛇が動き回る...?
どうやって動き回るというのか。
思考を巡らせていれば、ハーマイオニーがハッと顔を上げた。
「...パイプよ」
「パイプ?」
「えぇ。ホグワーツの歴史という本を読んだ時に書いてたの、ホグワーツのトイレはマグル式で、パイプがあるって」
そんな名前の本があることは知らなかった。確か、一度タイリーがそんな風な本を読んでいるのを見た気がしたけれど。
さすがはハーマイオニー。私は彼女の頭を撫でてそう言った。
「でも肝心の部屋がどこか...」
「そんなの、トイレでしょハーマイオニー」
「え?」
パイプを伝って移動するのなら、パイプの元をたどればいい。マグル式のトイレを使っているのなら、答えはトイレだ。
「...どこのトイレ?」
「...手当たり次第探してみる?」
トイレは何個かある。今日はクィディッチだし、人は少ないはずだ。今のうちに男子トイレと女子トイレどちらも探してみようと提案をすれば、ハーマイオニーがコクリと頷く。
バジリスクについて描かれているページをハーマイオニーが無理やり破り、丸めて手にして、私たちは図書館を出た。
まず先に、図書館に近いトイレに行くことにする。
「待ってヒヨリ!!」
「ん?」
「バジリスクは一睨みで殺すのよね?でも誰も死んでなんていないわ」
図書館の入り口で、私たちは立ち止まる。そうだ、その通りだ、誰も死んでなんていないのだ。理由はなぜだろうか。
まずはミセス・ノリス。次にコリン、ニック、ジャスティン。
彼らに共通するものは?
「...コリンはカメラを持ってたわ」
「ニックはもともと死んでる。ジャスティンとニックは近くにいた?」
「えぇ!!ジャスティンはニック越しに見たのよ!!それに、ミセス・ノリスが石になった時、床は水浸しだったわ!!」
答えは案外簡単だった。彼らは誰一人、その目を直に見なかったのだ。ならやることは一つ。私は杖を取り出す。
「アグアメンティ・マキシマ」
くるりと回して床を水浸しにする。私の得意の魔法だ。初めて見たのだろう、ハーマイオニーが少し興奮した顔で今度教えてくれと言った。その言葉に首を縦に振って、私たちは気を引き締める。
「絶対、水から目を離さないでねハーマイオニー」
「えぇ、ヒヨリもよ」
ビシャリ。ビシャリ。
足を進めるたびになる音だけが、やけに静かな廊下に響き渡る。あと少しで、トイレの中に入るという時、私が見たのは蛇の頭。
その顔が上がる前に私は隣にいるハーマイオニーに腕を伸ばして抱きしめて、杖を振る。
最後に聞こえたのは、ハーマイオニーの悲鳴だった。
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