19
学年末パーティーが行われた。ヒヨリ様が石になってからずっと、俺はいつ彼女が目を覚ましてもいい様に毎日ローブの中に、彼女が好きだったマフィンやパンを紙ナプキンに包んで潜ませていた。
アンジーやアリシアも同じ様にそうしていて。きっと俺なんかよりも、彼女たちの方が好みの味やらに詳しいのだろうけれど。
「ハリー!!ハーマイオニーだ!!」
不意に、ネビルが大広間の入り口に指をさす。その行為に沿って、周りにいた俺たちも入り口を見れば、そこには笑顔を浮かべたハーマイオニーが立っていた。
そっちを振り返るハリーとロン。そして勢いよく立ち上がって、こっちに向かって走ってくるハーマイオニーを、ハリーが抱きしめた。
「やっぱり貴方達が解決したのね!?やったわね!!」
「君のおかげだよハーマイオニー」
ハリーから離れたハーマイオニーは、次にロンを抱きしめようとした。だけど二人は、ピタリと動きを止めて次に握手をした。なんだか不自然なその行為だったけれど、ハリーはそれをニコニコと、微笑ましそうに見ていた。
フレッド達もニヤニヤしながら俺の肩に腕を回してみている。
「青春だな、相棒」
「あぁそうだな、相棒」
「なんなんだ、お前ら」
「はははっ!!」
ニヤニヤと笑うフレッドとジョージに、呆れながらそういえば、リーが明るい笑い声を出す。
その時、アンジーとアリシアが、せっせとまとめていたパンを机の上に落とした。どうしたのかと二人を見れば、二人は全く同じところを見ていた。
どこを見ているのかと、俺たちも顔を見上げる。
彼女たちがみている大広間の入り口には、ヒヨリ様が、立っていた。
いちはやく立ち上がったのはアンジーとアリシア。さすがはクィディッチ選手なのか、二人はあっという間にヒヨリ様の元へ走り寄ると、きつくヒヨリ様を抱きしめた。
俺も、なんとか震える足を奮い立たせて立ち上がる。
ヒヨリ様が、戻ってきた。
フレッド(もしくはジョージ)に首根っこを引っ張られる形で、俺は3人の元へいった。泣いているアンジーとアリシアから手を離して、フレッド、ジョージ、リーと握手をするヒヨリ様。
「オジョー」
「無事で何よりだ」
「気分はどうだい?」
それぞれに笑顔で言葉を返しながら、握手をするお嬢様をじっと見つめる。そんな俺を、フレッドが押し出して、無理やりヒヨリ様の目の前に立たせた。
ゆるりと俺を見上げるヒヨリ様。
よく、ご無事で。
守れなくて、申し訳ありません。
お帰りなさい。
言いたいことはたくさんあった。だけど、まずは何を言えばいいのかわからなくて。
ヒヨリ様は笑顔で俺を見つめている。彼女の後ろに立っているアンジーとアリシアが腕を組みながら、そんな俺とヒヨリ様を笑顔で見ていた。
「...ヒヨリ様」
思ったよりも震えた声に、ヒヨリ様は笑い声をこぼして手を伸ばした。その手がゆっくりと、俺の頭を撫でる。
情けない顔をしていたのだろう。涙を浮かばせているわけではないけれど、それでも彼女の目には俺がどのように写っているのだろう。
ゆっくり撫でられるその手のひらに、俺はトクリ、トクリと鼓動を打って、自分の腕を彼女の腰と首に回した。
自分の胸にヒヨリ様の顔を押し付ける。
無事でよかった。戻ってきてよかった。生きていてよかった。
その思いを全て抱擁に込めて、俺はきつくヒヨリ様を抱きしめた。
後ろで、フレッドたちの口笛を吹く音が聞こえた。目の前に立っているアンジーとアリシアは、口を両手で覆いながら、俺たちを見ているのが見えた。
それでも、そんなことが気にならないくらい、今の俺にとってはこの時間が大切で、永遠のものに感じられたのだ。
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