6
「ついに貴方達も5年生、O.W.L生となるわけです。今まで学んだ5年間の集大成として、学年末には普通レベル試験通称ふくろう試験が待っています」
新学期が始まり何度聴いたかわからない説明も、我がグリフィンドール寮の寮監の言葉は重く受け止めざるを得ない。
「ここでもしも成績を落とすようなことをすれば、来年度の単位獲得のみならず、将来にもその問題は降りかかってくるのです」
「俺たちには関係ねーよな」
「その通りさ相棒」
隣の机で仲良く座っている双子達をキッと鋭い視線で見たマグゴナガル先生。それに怯えたように口を閉じる双子達を見たリーが、教科書に顔を隠して笑っていた。
「1年間、貴方達はO.W.L生として勉学に励むように。それでは、教科書362ページを」
話は終わり授業にはいる。机の上に置いてる教科書を開いて、俺は教壇に立つ先生を眺めた。
O.W.Lは実技試験と筆記試験に別れる。筆記試験の方はなんとかなるとして、問題は実技試験。特に変身術なんかは高度な学問のために毎年度落ちる人は数人いるらしい。
フクロウ試験フクロウ試験と何度も言われて内心辟易としている俺たち生徒の事も鑑みてか、マグゴナガル先生は杖を持ち、高度な術を見せた。
「筆記だけでは成績はつけられません。今年度の授業は、実技を多めにやっていきます」
マグゴナガル先生のその言葉にグリフィンドールだけではなくスリザリンからも歓喜の声が出た。
「マグゴナガル先生はやっぱり最高の先生だ!」
「掌返しが早すぎるのよこの人たち」
肩を組みながらなんの歌なのかわからない歌を歌う上機嫌な双子を、呆れた顔で見つめるアンジーにアリシア。その二人の隣でお嬢様も笑いながら歩いていた。
「次って新任の先生だろ?どんな授業だろうな?」
お嬢様の斜め後ろを歩く俺の隣を、頭の後ろに両手を組んで歩いていたリーが不意に口を開く。
「ハーマイオニー達の学年はボガードを用いて実技をしたらしいよ」
後ろをちらりと振り返りそういったお嬢様に、フレッドとジョージが「なんという事だ!」と大げさに答えた。
「そんなに面白い授業が今までにあったか!?」
「いーや、なかった!」
「去年はどんな授業だったか?はい、オジョー」
突然始まる双子のショーにお嬢様を巻き込むなと俺が言えば、リーが笑いながらまぁまぁとポンポンと俺の肩を叩いた。
「好きな色を教えられた」
「この上なくどうでもよかったわよね…」
「何色だったかしら?赤?」
「アリシア、ライラックだよ」
「どうでもいい…」
去年の闇の魔術に対する防衛術の教師を思い出す。薄ら寒い笑みを浮かべた自画自賛タイプの人間だ。あいつの授業で教わったことは一つもないと断言できる。
「きっと今回の先生はとても身になる事を教えてくれるさ!」
「どんな賞を獲ったのかとか、どんな本を書いたのかとかよりも!」
「「有益なことをね!!」」
珍しい程にあの双子が授業にやる気を出している。ただ、それほどまでに今までの、特に去年の授業は何も身になるものではなかったのだ。
「今年、君達は晴れてふくろう生となったわけだけど…」
と、あんなにも楽しんでいた双子は授業の冒頭のこのセリフでそのやる気はどこへいったのか、最初から顔を机に伏していた。
「またこの話か…」
「もううんざりだぜ俺…」
この二人の気持ちも少しはわかってしまうために、何も言えない。毎日毎回のようにこの話をされれば、ふくろう試験のやる気が削がれると言うことを、教師達は何故理解しないのだろう、と少し思ってしまう。
「だけど、君達は今まであまり良いとは言えない先生達に当たってきたらしい…そこで、だ。今までの復習も兼ねて、当分は実技メインで授業を行いたいと思う」
その言葉にさっきまでの姿はどこにいったのか。双子達は背筋をピンと伸ばしてのめり込むように話を聞いていた。それを呆れながら見るアンジーとアリシア。さらにそれを、後ろから笑いながら見つめるお嬢様。
「それじゃあ机の上にある教科書を片付けて」
その言葉にいそいそと机の中に教科書をいれる生徒達を笑顔で眺める先生。我真っ先にと教科書を片付け終えた双子達に気づいて苦笑して見た先生は、杖を握って教壇に立つ。
「それでは、杖を構えて」
結論から言うなら、今まで受けた闇の魔術に対する防衛術は一体なんだったのかと言うぐらいには、この授業はかなり有益なものだった。
それぞれが授業の感想を言っている喧騒とした教室の中、ルーピン先生の言葉が響く。
「授業の片付けを手伝ってもらおうかな…今回はグリフィンドールの監督生にお願いしよう」
そう言われて、俺とお嬢様はゆっくりと前に歩いていった。
「次回はハッフルパフ生にお願いするね」
先生のその言葉に、すでに片付けておいていたセドが「はい」と笑顔で首を縦に振っていた。彼に手をあげれば、セドもにこりと笑いながら手を振り近づく。お嬢様はアンジー達に聞こえるように「先に行ってて」と話していた。
「今回の授業はすごく為になりそうだ」
「あぁ、俺もそう感じる」
ハッフルパフのプリンスがそう言うのだ。黄色のネクタイをしっかりと上まで締めているセドに俺もそう答えれば、セドはにこりと笑みを浮かべて「それじゃあまた」と言って教室を出て言った。
誰もいなくなった教室には、俺とお嬢様と、ルーピン先生だけが残る。
「それじゃあ、手伝ってもらうかな」
「はい」
「まずは何を?」
人の良さそうな笑みを浮かべたルーピン先生は、俺とお嬢様をチラチラと見比べて、笑った。
prev next
ALICE+