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「おはよう、アンジー、アリシア」
「おはよう、ヒヨリ。荷物整理なんてしてどうしたの?」
「ヤダこれ、今注目されてる高額ハンドクリームじゃない」
「欲しいならあげるよ」

今日はおホグズミードの日だ。朝早く起きて、今まで婚約者候補たちからもらってきたプレゼントの数々をジャンル分けしていれば、アンジーとアリシアが起きて私のベッドに近づいてきた。

「いらないものは今日売りに行くからさ。欲しいならあげる」

アンジーが手にとって興味深そうに見ていたそのハンドクリームをあげれば、アリシアももらっていいかと聞いてきたため快く返事をする。

「他もあるよ、欲しいのあったらもらって」
「いいの...?でもこのネックレスとか絶対高いじゃない...」
「これ...本物...?」

二人が手にしてジロジロと見ているのは、豪華な箱に入っているアクセサリーの数々だ。はっきり言ってどうでもいい人たちにもらって嬉しいものではないので、二人の言葉に曖昧に返事をするしかない。

支度も終えて、私たちは三人並んで談話室に降りた。

「お嬢様、行きましょうか」
「うん」

当たり前のように私の前に立つタイリーにそう言って、二人で談話室を出ようとしていると、後ろの方でフレッドとアンジーの話す声が聞こえた。「やぁアンジー、ご機嫌いかがかな」「まぁまぁね」その会話に思わず二人で振り返れば、私と同じように意味ありげな笑顔を浮かべているアリシアと目があった。

なるほどなるほど。これはもうそろそろって所ですな、といった顔だった。










「...結構な値段になった」
「よかったですね、お嬢様」

たくさんあったプレゼントをタイリーに半分(多分それ以上)持ってもらいながら、骨董品屋さんなどにいって売っぱらうこと1時間ほど。私のカバンの中には結構な量のお金がたんまりと入っていた。

二人でゆっくりと歩きながらホグズミードを回る。タイリーは笑顔で私を見ていた。

昼時の時間帯になり、恋人たちに人気のマダム・パディフッド店には、女の子やラブラブなカップルがたくさんその場にたむろっていた。それをちらりと見て、私の少し後ろを歩くタイリーを見上げる。

私のその行為に不思議そうに首をかしげたタイリーに首を横に振って笑顔を見せて。私たちはホグワーツへいち早く戻った。







「ヒヨリとタイリー?早いね?二人とも」

大広間へ向かう廊下を歩いていれば、後ろからハリーの声が聞こえた。そっちを見れば、ハリーとルーピン先生が二人で一緒にいて。私とタイリーは一度顔を見合わせて、二人に向かって頭を下げた。

「それじゃあ僕はここで」
「はい、ありがとうございました、ルーピン先生」
「二人も」

ルーピン先生はハリーにそう伝えると、私たちにも手を挙げて挨拶をして踵を返した。ハリーはこっちをちらりと見て「そっち行ってもいい?」と言う。断る必要性なんてどこにもないので、私とタイリーは笑顔で頷いた。



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