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シリウス・ブラックがホグワーツに侵入する事件もあっという間に過ぎていった。その理由は、ついにクィディッチ戦が始まるからなのだけれど。マグルの人たちでさえ興奮するクィディッチ。私も日本にいた時から大好きなので、今年もアンジーたちの活躍に期待していた。
「あ、セドリック!!」
教科書を持って歩いていれば、前の方に見知った黄色のローブを見かけた。少し駆け寄って、彼の肩に手をポンと置くと、セドリックはにこりと笑みを浮かべながら私を見た。
「やぁヒヨリ。タイリーは?」
「いつも一緒にいるわけじゃないよ」
「え、そうなの?」
「今は多分フレッドたちといるんじゃないかな」
ふくろう試験の勉強を嫌でもやろうとしたくないフレッドたちに勉強をさせるために、タイリー自ら教師となって教えるそうだ。さすがはあの三人、特に双子たちの保護者らしい。
「そういえば聞いたけど、君とタイリーはO.W.Lで全科目受けるんだって?」
彼がどこへ向かうのかは知らないけれど、私とセドリックは二人並んで歩き出した。
「うん。タイリーから聞いた?」
「あぁ。話の流れでね。すごいな...僕は流石にそこまでやる気は出ないよ」
何を言うのか。このイケメンは。私はふっと笑いんがら、セドリックに目を合わせる。セドリックだって十分優秀な人なのだ。
「私知ってるよ?いつもセドリックの名前は私の名前の下にある」
そう言えば、セドリックは肩をすくませて、前を向いた。
不意にローブの内ポケットの中にある大量のお菓子を思い出して、私はセドリック、と彼の名前を呼んだ。
「ん?」
「お菓子好き?」
「人並みには...どうかした?」
一度足を止めて、私はポケットの中にあるお菓子を出す。たくさんもらっている高級洋菓子の一つ。マカロンだ。
「たくさんあるからあげる。お互い試験に向けて頑張ろうね」
そう言って渡せばセドリックは何度か首を縦に振りながら「なんか毎朝大変そうにしてるもんね...」とつぶやいた。その言葉に対して、私が苦笑いをこぼせば、セドリックはマカロンをありがとうと言いながらポケットにしまいこみ、人の悪そうなニヤリとした笑みで私を見た。
「でもいいのかい?敵に差し入れなんて渡しても」
「敵...?」
彼のその言葉に、あぁと納得するのは次の土曜日のことだった。
ついにクィディッチ戦が始まった。初戦はグリフィンドール対ハッフルパフ。シーカーであるセドリックも、上空で箒に跨ぎながら降りつく雨になんとか耐えているようだった。
「アンジー!!!!アリシアーーーー!!!!!」
『雨なんて知るか。選手たちはもっと大変なんだ』精神でアンジーたちの名前を叫びながら、私は観客席の前で騒いでいた。隣のタイリーはフレッドとジョージの名前を叫び、たまにセドリックの名前も呼んでいた。親友がどちらのチームにもいるっていうのは、案外大変なのかもしれない。
雨はどんどん強くなる。風も強まっていて、選手たちは大丈夫だろうかと少し心配になっていれば、私の心配は当たるらしい。雷が響き、その雷が空を飛んでいたアンジーの箒にあたり、燃えた。
「アンジー!!」
「今のアンジー!?」
「アンジーだよ!!アンジー!!」
慌てて前のめりになって下の方を向けば、アンジーは無事のようで、箒から降りてマダム・ポンフリーに手当をしてもらっていた。よかったと胸をなでおろしたのもつかの間、次は隣のタイリーが叫んだ。
「セド!!」
上空約300メートルほどだろうか。そんなところから黄色のユニフォームを着たセドリックが落ちてきたのだ。
そしてその上には、赤色のユニフォームを着たハリーも空を舞っていた。彼の周りには吸魂鬼もいる。
「ハリー!!」
皆が叫び声をあげた。目を見開いて私はとっさに、胸元で両手を握りしめて、呪文を唱えようとした。
「守護魔法!!」
声を出して思わず口を閉ざす。試合に呪文は厳禁だ。下手したら反則負けになってしまう。どうしようとタイリーを見ようとすれば、ダンブルドア先生の声が競技場中に響き渡った。
「アレスト・モメンタム!!」
その呪文によって、ハリーとセドリックがゆっくりと落ちてくるのが見えた。
私たちは慌てて下に降りる。今回の試合は、きっとこれで中止だ。今の時点で点数が多いのはハッフルパフ。残念だけど、グリフィンドールの負けだろう。燃えて尻尾の部分が黒くなっている箒を見つめているアンジーのところに走りより、私はぎゅっと強く抱きしめた。
「...ヒヨリ」
「アンジーよかった...無事で...!!アリシアも...!!」
「大丈夫よ」
「えぇ」
アンジーとアリシアは私を見ると、同じように私を抱きしめ返してくれた。
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