12

「怪我はないか?セド」
「タイリー、あぁ、今のところは捻挫だけだ」

ユニフォームを着たままのセドの寝ているベッドに椅子を近づけて座る。ハリーと同じように上空から落ちたのだ。怪我が捻挫だけで済んでよかった。

まだハリーは目を覚ましていなくて、お嬢様たちがベッドに寝ているハリーを囲んでいた。

「ハリーの方は?」
「まだ目を覚ましていない」
「そう...」
「...ひどい嵐だったな。お疲れ様」

ハリーの方をちらりと見て、セドは上半身を起こそうと手をベッドについた。彼の背中に腕を回して、俺は支える。

「ありがとう...そう言えばタイリー、君の声聞こえたよ。応援もありがとうね」

そう話すセドに俺は何のことだかと首を傾げれば、セドは喉の奥でくつくつと笑いながら肩を震わせていた。

「ハリー...!!」

お嬢様の声が聞こえた。ハリーが起きたようだ。

「行っていいよ、僕はもう大丈夫だ」

そういったセドの肩をポンと一つ叩き、俺は椅子から立ち上がる。皆に囲まれているハリーに近寄り、名前を呼べば彼は俺の名前を呼んで、笑顔を見せた。

「気分は?」
「そこそこ」
「そうか」

途中で吸魂鬼が入ってきたから心配だった、案外普通らしい。それでも、乗っていた箒が暴れ柳に当たって粉々にされたとロンに教えられてからは、笑顔は消えてしまったけれど。そんなハリーを慰めるように、ハーマイオニーとロンがハリーの肩を叩いたり背中をさすっている。そんな後輩たちを優しく見守るお嬢様に、俺たち上級生組。
その時、不意にお嬢様がアンジーとアリシアの腕に自分の腕を組んだ。

「アンジー、アリシア。今日、監督生用のお風呂入っていいよ。雨に打たれて寒いでしょ」
「え、いいの?」
「もちろん。一緒にはいろ」
「ありがとうヒヨリ...!!さすがに風邪ひくと思ってたのよ...」

ハリーたちに手を振り(お嬢様は首を伸ばしてセドにも手を振っていた)、三人は医務室を出て行く。その後ろ姿を眺めていたフレッドが俺の肩に腕を回した。

「...なんだフレッド」
「タイリー君も俺たちに言うことあるんじゃないのか?」
「お前らが風邪をひくたまか?」
「おいおいひどいぜママ!!」
「誰がママだ...!!」

漫才にも似たその会話を見て、ハリーがクスリと笑い声をあげる。少しは元気になっただろうか。俺は口角を上げて、ハリーの頭をそっと撫でる。

「あまり思い詰めるなよ」
「うん、ありがとうタイリー」

そう笑って俺の顔を見上げたハリーに、もう一度笑顔を見せてれはフレッドの腕をパシリと叩いて医務室を出る。俺を追いかけるように「「タイリー!!」」と名前を叫び医務室を出た双子を振り返らずに、俺はグリフィンドール寮に続く廊下を歩いた。



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