17
「...いつから、気づいていたの?」
ヒヨリの胸元で泣いて、少し時間が経ってやっと我に戻って私は、彼女からそっと離れてローブの袖を引っ張って目元を拭いた。
そんな私を見てクスクス笑っていたヒヨリを、したから少し睨めば、ヒヨリは私の頭を撫でながら口を開いた。
「いつからかなー...気づいたら?」
そう言うヒヨリはニコニコと笑っていて。膝の上に置いている教科書をパラパラめくりながら、ヒヨリは髪を耳にかけていた。
「ねぇヒヨリ...」
「んー?」
いつものほほんとしているヒヨリは、私たちの間では良き姉と言った存在だ。アンジーたちの間では妹のように扱われているけれど、それでも彼女の意外にしっかりしたところとか、一緒に居ると優しい雰囲気に包まれる感覚が、私は大好きだった。
「...タイリーとは、その...どうなの?」
まだ14歳の私の恋の話なんてしたって面白くないだろう。私は、誰にも聞こえないように(特に周りに人はいなかったけれど)そっと小さい声でそう聞いた。
ヒヨリは一度手を止めて、ちらりと視線だけをこっちに寄せると、にこりと笑みを浮かべた。
そして、教科書をパタンと閉じて、腕を空に向かって伸ばす。
「陸奥村家のことを、教えてあげる」
そう言って、ヒヨリが続けた言葉に、私は驚きで目を見開く事になった。
タイリーと、ヒヨリは小さい頃に親を亡くしたという事。障害孤独の身になったタイリーは、陸奥村家の人間に拾われて、ヒヨリ付きの使用人となった事。
純血主義のひどい陸奥村家に生まれたヒヨリは、本当は、マグルと駆け落ちをした陸奥村家当主となるはずだったお母さんから生まれた、混血の魔女だという事。
「...私は、純血の血を少しでも守らないといけないの。混血として生まれてしまった、純血名家の華族の次期当主として、その血を絶やしてはいけない。乱れた血を正すのは、私の役目なんだよ」
そう、笑いながら言ったヒヨリの顔には、流れていないのに私には涙が流れているように見えた。
「そんなのって...」
いつも。いつも、ふわふわとしている人だった。たまに、純血の家の人なんだなと再確認される時があったけれど。それでも、ヒヨリはいつもニコニコとアンジーたちと話したり、フレッドたちに怒ったり。
タイリーと、幸せそうに笑っていたんだ。
そんなヒヨリの、未来を聞いて。将来を聞いて。人生を聞いて。私は思わず涙がこぼれた。
「...ハーマイオニーが泣いちゃうの?」
「...ヒヨリが...泣かないからじゃない...」
泣きたくてもきっと泣けないヒヨリの分も、私が泣いて何になるのかわからないけれど。
それでも私は、彼女の手を握りしめた。どんな道に進んでも、私はヒヨリの味方だし、ずっとずっと応援していると。そう伝えたくて。
ずっとずっと大好きだ、と。
そう、伝えたくて。
「...ありがとうね、ハーマイオニー」
そう笑うヒヨリに、私はただただ首を横に振るしかできなかった。
prev next
ALICE+