22
長かったふくろう試験はあともうすこしで終わる。
明日の午前の筆記の魔法史、そして午後の変身術が終われば、晴れてふくろう試験とはおさらばだ。
約1年に渡る試験勉強とも一旦離れて、パーっと打ち上げでもしたら、早くバックビークの再審理に向けてまた動き出す。
2週間は短いようで長くて、でも終わりに近づけば近づくほど、やっぱりあっという間だったなと思うのだ。
刻一刻と時計は進み。最後の一人が実技試験を終えたその瞬間(きっとこの光景は一生忘れないだろう)、マクゴナガル先生の声が響いた。
「変身術の実技試験を終わります」
その声を聞いた生徒は皆、一様に杖を上に放り投げたりその場で大きくジャンプをして、喜びを体全体で表現した。
ふくろう試験が、終わったのだ。2週間の長い長い戦いが、今ここに終わった。
「終わったあああああ!!」
「自由だあああああ!!!!」
今この瞬間にでもタイリーから減点でもされそうな勢いで、フレッドとジョージは花火爆弾をそこら中に撒き散らしていた。けど、長い試験の終わりにそんな無粋なことをする監督生はどの寮にもいなくて、あのマクゴナガル先生でさえ見て見ぬ振りを決め込んでいた。
「さて、何をするよ、相棒!!」
「リー!!どうする!!」
「まずはバタービールの拝借だああああ!!」
「「最高だぜ相棒!!」」
リーとフレッドとジョージの三人が大声をあげて廊下を走り抜ける。それを囃し立てるように黄色い声をかけるグリフィンドール生に他の寮生。私はそれを苦笑しながら見つめて、アンジーとアリシアの隣に立った。
「元気ね」
「まぁ元気になるのもわかるけどね」
「私たちはどうする?」
アンジーとアリシアはニコニコと話しながら廊下を歩く。その隣をついていきながら廊下を出ると、ふと中庭の方から梟が私の元に一羽やってきた。
「...ハリーの梟だ」
真っ白な羽根を持つ綺麗なその梟は、ハリーのヘドウィグだった。ヘドウィグは手紙を一枚加えて、器用に私の足元に降り立つとその手紙を一枚差し出してまた空へと飛びだった。
手紙を確認すると、そこにはハーマイオニー、ハリー、ロンと三人の後輩の名前が書かれていた。
「私たち先に行ってるわよ」
「わかった〜」
アンジーとアリシアが手をひらひらと振りながら消えていく。心なしかスキップしてるように見えた。
「お嬢様?」
「あ、タイリー」
手紙をジーッと眺めていると、後ろにいたタイリーにトントンと肩を叩かれた。振り向けば、タイリーと、セドリックが仲良く並んで私を覗き込んでいた。
「お疲れ様、タイリー、セドリック」
「お疲れ様です」
「お疲れ、ヒヨリ。どうかしたのかい?」
「ううん、大丈夫。試験はどう?」
手紙を一旦後ろに隠して、私はセドリックと話しをする。セドリックはいつものように笑顔を浮かべながら「まぁまぁかな」と答えた。
「流石だね」
「二人に比べたら大したことないさ」
肩を少し上げながらそうおどけていうセドリックに、私とタイリーは笑みをこぼすと、セドリックは「それじゃあ」と言って、自身の寮の友達をつれだって廊下の奥へと消えた。
「...どうかしたのですか?お嬢様」
セドリックたちも消えて、廊下はもはや人っ子一人いない。皆試験に解放されたのだから、そりゃそうだ。いつまでも試験会場にいたりなんてしないだろう。
「ハーマイオニー達から手紙が来たの」
「あの三人からですか?」
「うん...」
私とタイリーは中庭に続く窓の方に立ち、持っていた教科書などを傍らにおいて、手紙の中身を見る。そこには、ハーマイオニーの綺麗な字でこう書かれていた。
『O.W.L試験お疲れ様、ヒヨリ、タイリー。本当は昨日伝えて起きたかったんだけれど、二人の試験を邪魔してはいけないからやめたの。
今日、バックビークが処刑されることになったわ。私たちはハグリッドの小屋にいます』
その手紙を読み終わった瞬間、私とタイリーは何も言わずに走り出した。教科書?そんな存在、今はどうでもいい。
「ハーマイオニー達...何してんの?」
大慌てでハグリットの小屋に行こうとしたのもつかの間。小屋の近くにある暴れ柳に振り回されている、ハーマイオニーとハリーを私たちは発見した。
「...遊んでるわけではなさそうですね」
タイリーも呆然とその姿を見ている。
「助けなきゃ」
「そうですね」
ずっとそれを見ているわけにもいかない。私は慌ててローブの中に手を突っ込み、式神を取り出した。人の形を模したペラペラの紙。これは日本に古来から伝わる魔法で、ホグワーツに通い始めてからも私とタイリーはちょくちょく使っていたりする。
私はそれを人差し指と中指で挟み、ブーメランを飛ばすようにその紙を空中に投げる。式神は命を吹き込まれたかのように空中を舞い、暴れ柳に振り回されているハーマイオニーの近くへと飛ぶと、うまい具合に彼女の背中にぴったりとくっついた。
そのまま彼女とハリーを囲んで暴れ柳から離そうとすれば、ハーマイオニーはその手につかんでいたハリーを暴れ柳の根元部分に放り投げて、自身もその中へと入り込んでいった。
それを呆然と見ていた私とタイリーは、お互いに顔を見つめあうこと数秒。
そのあと大慌てで暴れ柳の近くへと走りよった。
それでも文字通り暴れているその木にやすやすと近づけれるわけもなく、私とタイリーは近くの木陰に身を休み、手元にある式神から漏れるハーマイオニーとハリーの言葉に耳をすませて、彼女たちが再び出てくることを待つことにしたのだ。
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