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先に医務室にハリーを寝かせて、スネイプ先生とともに、シリウスさんをとりあえず塔の上にある牢の中に入れた後、私とタイリーは猛ダッシュで医務室へ戻った。

ロンとハーマイオニー、そしてハリーのためにもいかないといけない。

「お嬢様!!足元にお気をつけください!!」

階段を全速力で駆け下りて、後ろにいるタイリーの言葉に返しも出来ずに走り抜ける。こういう時、運動神経の良いアンジーとかアリシアなら笑顔なのだろうとふと思った。そして同時に、あぁ、ふくろう試験の打ち上げ...きっと怒ってるだろうな...なんていう本当に今この事態とは全く関係ないことを思って、思わず苦笑をこぼした。

「じゃが、未成年の魔法使い三人と、人狼の言葉じゃ皆を説得できんのじゃ」

医務室の扉をガタンと大きく鳴らして開いた。
中には、三人以外にダンブルドア先生もいて。

「ヒヨリ...!!」

肩で大きく息をしている私を驚いたように見るハーマイオニーたちに、そしてダンブルドア先生。先生が少し眉を顰めながら、私とタイリーをちらりと見た。

私は彼の目に自分の目を合わせて、扉につけていた手をゆっくり話して深呼吸をする。

私は、陸奥村ヒヨリ。日本の由緒正しい純血名家の、一人娘。

そう心の中で念じて、そして、大きく息を吸って吐いた後に、私は声を出した。

「なら、純血名家の次期当主の話は、信じてもらえますか?」

私は、ローブの中にしまっていた一つの紙を見せる。ダンブルドア先生はそれを見ると、髭の奥底にある口元をゆるりと緩めて、言った。

「日本古来の魔法、式神じゃな?」
「ご存知ですか?先生」
「君の祖母とは古い知り合いじゃ」

初耳のその言葉に、思わず目を見開いたが、今はそこについて話している場合ではない。
未だに不思議そうに私たちを見ているハーマイオニーの近くに行き、私は彼女の背中にくっつけていたもう一つの式神を引き剥がして見せた。

「それ...!!」

ロンは知っているのか、ベッドに寝ながら目を開きながら指をさして、こっちを見ていた。

「実は、ずっとハーマイオニーの背中にこれをくっつけて、一部始終を聞いていました。証拠なら、ここに」

自分の手の中にあるものと、ハーマイオニーの背中にあったものを見せる。そして、自分のもっていたものを人差し指と中指で挟んで、ダンブルドア先生めがけて空中に放てば、その式神は空に浮いた状態で音声を再生した。

『それは違う、シリウスじゃない!!君の両親を裏切ったのは別の男だ!!そいつは死んだと思われていた、つい最近まで...!!』
『じゃぁ、誰なんだ!!』
『ピーター・ペティグリューさ!!』

さっきまでの自分たちの声が聞こえて驚いているのか、ハリーが震える声で「ヒヨリ...これって」と、言った。私は彼をちらりと見て、小さく頷く。

『お前がジェームズとリリーをヴォルデモートに売ったんだろう!?』
『そんなつもりじゃなかったんだよ...!!』

ピーター・ペティグリュー本人の肉声もある。これで物的証拠は確保できただろう。すべての音声を流し終えた式神は、またふわりと舞いながら私の手元に戻ってきた。私はそれを優しく握ってローブの中にしまいこむ。

「ダンブルドア先生が式神についてご存知なら話は早いです。日本に古来から伝わるこの魔法は、絶対に嘘は伝えない」

扉の方で、静かに私たちを見ていたタイリーが口を開く。ダンブルドア先生はちらりとタイリーを見た後に、もう一度私の方を振り向いて、数回首を縦に振った。

「...まず、質問をしては構わないかのぅ?」

人差し指を一本あげて、ダンブルドア先生は言った。

「Ms.陸奥村、Mr.シェバン、何故君たちはこのことを?」

そう聞いたダンブルドア先生にすぐに同意するように頷いたのはハーマイオニーたちだった。

「ふくろう試験が終わって、彼女たちから手紙を受け取りました。ハグリッドの飼っているバックビークが処刑されると。だから、私とタイリーは慌ててハグリッドの小屋の方に行きました。その時に、なぜか暴れ柳に振り回されてるハリーとハーマイオニーが見えて。助けようと式神を飛ばしたら、二人はその中に入っていったので」

だから、とりあえず音を聞きながら状況を判断していたと?そう言ったダンブルドア先生にコクリと、私は頷く。

「Mr.シェバンもかのぅ?」
「はい」

タイリーはちらりと私を見た後、同じように頷いた。

「...しばらくしていたらルーピン先生とスネイプ先生も入っていって、どんどん状況がややこしくなっていきました。多分、部外者である私たちが入っていけば余計複雑になると思ったので、終わるまで待つことにしたんです」

そうしたら、ピーター・ペティグリューが現れるわ、ルーピン先生は人狼になるわ、シリウス・ブラックが犬になるわ、傷だらけで倒れてるわ、でなかなかに大変なことがぶっ続けて起きた。よくよく考えれば、そりゃアンジーたちのことを考えて現実逃避もしたくなるな、と思いもする。

「それでもやっぱり、私とタイリーは監督生だし、ハーマイオニーたちの寮の先輩でもあるし、何より個人的に、彼女たちの無茶は1年生の頃から知っていたので、その場を離れるべきではないと思いました」

でも一番は、ハーマイオニーたちが心配だったからだ。無茶ばっかりするこの子達はやっぱり今年も最後にやらかしてくれたし。内心私もタイリーも呆れてはいるんだけど、それでも目を離すなんてこと出来っこなくて。

「...つまり、先輩として、後輩の心配をしていたと?」

一言でまとめるなら、きっとダンブルドア先生の言うその言葉通りだ。私とタイリーは同時にコクリと首を縦に振る。

それを見たダンブルドア先生は、サンタクロースのように「ふぉっふぉっ」と朗らかに笑った後、私を見て後ろのタイリーを見て、そして、ハリーを見て口を開いた。

「お主達は、良い先輩を持ったようじゃ」

その言葉は、私とタイリーの心の中にじんわりと温かみを持って広がっていった。もしも、彼女達が本当にそう思ってくれていたら、どれだけ嬉しいことか。

ハーマイオニーをちらりと見れば、彼女は少し照れ臭そうに笑っていたので、きっと、そう思ってくれているんだろうなと思った。

「では話を戻そうかのぅ...」

ダンブルドア先生は、メガネの奥の瞳を光らせて、口を開いた。その顔はまるで、いつもの先生のようではなくて。今、迫り来ている何か大事な局面に、私は居合わせているのだと思った。


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