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そのあとは問題なくホグワーツへと着き、馬車に乗って学校へといった。毎年恒例の組み分けも終わり、最後に校長先生からのお話があった。

「今年はホグワーツで三大魔法学校対抗試合を行うことが決定した」
「「まじかよ...!!」」

ダンブルドア先生のその言葉に、前に座っているフレッドとジョージが同時に恍惚とした表情でいった。

この試合がいかに過酷なものなのかについて、こと細かく説明した後、先生は今回の試合に参加するボーバトン校とダームストラング校の人たちを呼び出し、広間に迎え入れた。中にはクィディッチ選手のクラムもいて、盛り上がりは最高潮を迎えていた。

その後、いつも以上に豪華なディナーが現れて、ご飯を食べている最中。ダンブルドア先生が前に立ち、この試合の歴史についてや魔法省がたくさん関わってくれていることなどを説明した後に、現在の国際魔法協力部のバーデミウス・クラウチ氏を紹介した。

途中、天井から雷や雨が降り注ぎ大広間は喧騒となったが、不意に現れた義眼、義足の人物が杖を振りその喧騒を止めた。そばに座っているロンが「マッド・アイ・ムーディーだ」といい、全員が彼に一旦注目をする。

その注目と途切らせる様に、バーデミウス氏が広間の前に立ち、口を開いた。

「検討を重ねた結果、魔法省は安全性を優先し、17歳に満たない生徒が対抗試合に立候補することを禁ずるという最終決定を下すに至った」

その瞬間に、大広間は大ブーイングの嵐となった。

「マジでかよ!!」
「ふざけんな!!」

もっとうるさくしていたのはやはり、勇猛果敢なグリフィンドール。特に前に座る双子たちはうるさかった。俺は呆れたようにその声を聞いて、隣に座るお嬢様と苦笑を浮かべる。

その喧騒を止めるようにダンブルドア先生は大きい声で静粛に!!と怒鳴り、生徒は一旦静かになる。

そして、目の前に置かれていた置物の中からゴブレットが現れて、青い炎が飛び出した。




「Mr.シェバン、Ms.陸奥村。12科目をパスした貴方たちの時間割は文句一つもつけようがありません。NEWT試験も、気を緩めずに」

ついに授業が開始されるその日の朝、お嬢様の前の席でゆで卵の殻をむいている時、不意にマクゴナガル先生が後ろに現れて、俺の肩をトントンと叩くと、羊皮紙を渡した。

もう一つの紙はお嬢様に渡す。そこには、今年度の時間割が書かれていて、マクゴナガル先生は口角を少し上げながら、俺とお嬢様を交互に見て、そして激励の言葉を投げると次の人たちに時間割を渡すべく歩き出した。

「さすがね、ヒヨリ」
「タイリーもね」

お嬢様の隣に座ってゴブレットを傾けていたアンジーとアリシアがニヤリと笑いながらそう言う。隣に座っているお嬢様は少し恥ずかしそうにしながらもアンジーたちと話していた。

「おいおいタイリーまじかよ!?」
「...全部Oじゃねーか!!」
「そんなことってアリなのか?」

俺を挟むように座っていたフレッドとジョージが、手の中にあった羊皮紙を覗き込んで、目を大きく見開きながらそう言う。
ジョージの隣に座っていてよく見えないリーは、フレッドの全部Oと言う言葉に驚いたのかゴブレットを大きい音を立てて机に置き、そう聞いてきた。

「取れているからありだろうな」

俺は羊皮紙を丸めてローブの中にしまいこむ。殻をむいてツルツルになった茹でたまごをお嬢様に渡せばお嬢様はにこりと笑いながら「ありがとう」といった。それに対して笑顔で首を横に振っていれば、トントンとまた肩を叩かれた。
後ろを振り向くと、そこには黄色のネクタイを締めたセドが立っていた。

「おやおや、ハッフルパフの王子様だ」
「王子様が王様に用なのかい?」

俺の肩に腕を回しながら茶化す様にそういう二人をジロリと睨んで、俺はセドを見上げる。

「いや、ジョージの声が大きくて。全部Oって本当かい、タイリー」
「それを言ったのは俺だ」
「あぁ、フレッドだ」
「それはごめん、フレッド」

律儀に笑顔でそう謝るセドにフレッドたちは気を良くしたのか立ち上がると、「よきにはからえ」となんとも偉そうに言ってリーを連れて広間を出た。どこに行くんだと言えば、先に授業に行っていると。

「気使わせちゃったかな」
「あいつらはそんなに空気の読める奴じゃないさ」

そういえば、セドは声をあげて笑うと、机の下に足を入れず、通路の方に足を投げ出す形で、フレッドの座っていた場所に腰を落ち着かせた。
前に座るお嬢様に手をあげて「やぁヒヨリ」と挨拶をすると、セドは俺の耳元に口を寄せた。

「O.W.Lの事は本当は口実で...タイリーはゴブレットに名前入れるかい?」
「予定はない。...セドは入れるのか?」
「いれようかなって。たまにはハッフルパフも目立っていいだろう?」

小さい声でそういうセドに、お前ならきっと選ばれるさと言えば、彼は少し目を見開いた後に笑い声をあげた。

「タイリーにそう言われたらお墨付きだ。自信がついたよ、誕生日が来たら入れてみようかな...」

俺とセドは同じ10月生まれだ。ゴブレットに名前を入れる締め切りである10月31日までに17歳となる。セドはハッフルパフの王子様と言われるぐらいだ。きっと、ゴブレットは彼を選ぶだろう。

なぜそのことを俺に聞いたのかと質問をすれば、セドは一瞬目を伏せて、そしてもう一度顔をあげてこう言った。




「君がいれたら、きっと僕は選ばれないと思ったからさ」




そういった彼の目は、どこか闘争心に溢れていて、少しだけ戸惑ってしまったのは、仕方ないだろう。



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