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ムーディ先生は意外にも、その見た目からは感じられないほどに優しい人であった。体調が悪くなった私とタイリーを教室で休ませてくれるだけではなく、紅茶まで用意してくれたのだ。しかも禁じられた呪文を見て具合が悪くなった私たちのために秘密の課外授業までしてくれたのだ。「他の生徒には内緒だぞ」ウインク付きでそういった先生は実にキュートだった。
次の授業はマクゴナガル先生の変身術だったのだけど、私とタイリーはここに通ってから初めての"サボり"というものをした。内心ドキドキではあったけれど、アンジーたちがきちんと体調が悪いということを伝えてくれているだろうし、大丈夫だろう。
私とタイリーは二人で歩きながら、中庭に行った。授業中の人も多いのだろう、中庭には人はそこまでいなくて、余裕でベンチに座ることができた。急遽授業を休むことになったために暇を持て余した私とタイリーは、とりあえず座って、ぼーっと、周りの風景を眺めていた。
青い鳥がチュンチュン鳴きながら飛んで、綺麗なオレンジ色の蝶々が周りをふわふわと遊ぶように舞っていた。
「ホグワーツにはたくさんの生物がいるね...」
「そうですね...日本ではなかなかいない魔法生物もたくさんいます」
「見て、あの蝶すごい綺麗...!!」
教科書をベンチの端に置き、私は立ち上がる。指をさした方には、虹色に光る小さな蝶が何匹も飛んでいた。太陽の光に当たるたびに、キラキラと輝くように光るそれは、遠くの方にいる私の目にも入った。
未だに座っているタイリーの肩をトントンと叩いて、「見てみて」といえば、タイリーはクスクスと笑いながら私を見上げていた。
「...なんで笑うのさ」
頬を膨らませてそういえば、なおさらタイリーは笑い声を大きくして私の隣に立った。首を横に振りながら、私の膨らんだほっぺを人差し指でツンとつつくと、タイリーは遠くの方にいる蝶を眺めた。
「本当だ...」
青い空に、白い雲、そしてひらひら舞う色鮮やかな蝶。なんて綺麗な光景だろうか。風が舞って、ひらりとタイリーの黒い髪がそよいだ。
ふと隣を見上げれば、タイリーの横顔が近くに見えた。綺麗な笑顔だ。鼻筋の通った横顔、キリッとした切れ長な目に、凛々しい顔付き。グリフィンドールの王様は、今、私の隣にいた。
「...お嬢様?」
「ん?」
ふと、タイリーが私の視線に気づいてこっちを向いた。カチリと合う視線に、私もタイリーも驚いて少し目を見開く。
あまりにも近い距離に、私もタイリーも少し身じろぎをして後ずさりすると、お互いに合図もせずに笑って、ベンチに座りなおした。
意味もなく教科書を手にしてパラパラとめくる。狭いベンチに二人で座っているから、腕が当たった。それでもお互いにずれることなく、そのままの格好で私たちは、授業の合間のふとした時間を楽しんだ。
「ヒヨリ!!」
2人で黙って教科書を読むこと数十分。不意にハーマイオニーの声が聞こえて私達は顔を上げた。いつもの3人が廊下から、私達のいる中庭を眺めていて、そして手を振っていた。
私は彼女達に手を振り返すと、ハーマイオニー達はその足を中庭に向けて、私達の前に立った。
「授業はいいの?」
「貴方達こそ」
そう言うハーマイオニーに、ちょっとね、と一言笑いながら返す。3人は顔を見合わせて不思議そうな顔をしていた。
その時、ハリーが何かに気づいたような顔をすると私とタイリーの前に出てきて、そして急に深く頭を下げたのだ。
突然の出来事に私もタイリーも驚いて、そして教科書をベンチの上に置いて立ち上がる。
「どうした、ハリー…」
「何で急に頭下げたの…!?」
オロオロとしながらそう聴けば、ハリーはちらりと顔を上げて、目を何度か瞬きながら口を開いた。
「本当に…ありがとう。2人のおかげだよ…何をしたらお返しができるのかわからないけど…でも本当に、本当に感謝してるんだ…!!」
ハリーの隣で、ハーマイオニーとロンまでもが頭を下げた。
「私からも言わせて…本当にありがとう」
「僕からも…!!」
そう言う3人に、いいから頭を上げてとお願いする。3人はゆっくりと顔を上げて、私とタイリーをじっと見つめていた。
「…そこまでお礼言われる筋合いないよ…ね、タイリー」
「はい。…俺たちはただ、出来る事をしただけだ」
本当に。タイリーの言葉通りだ。私達は私達に出来る事しかやっていない。
大事な後輩3人のために、先輩として出来る事をしただけなのだ。
「…ハリー。シリウスさんとは一緒に住めるようになった?」
「あ…うん。裁判の後、10日ぐらいして迎えにきてくれたよ…」
そう、嬉しそうにはにかみながら言うハリーの姿が観れただけで、彼らの言うお礼の100%以上は返してもらえている。
だから私とタイリーは、ハリーの頭をそっと撫でた。
いつの間にか大きくなったハリーにハーマイオニーにロン。綺麗になって、徐々に格好良くなってきた。
それでも、私達の手を優しく受け入れてくれるハリー。それを何だか羨ましそうに眺めてるロン。そして微笑ましそうに見てるハーマイオニーが、大事だから。
だから私もタイリーも、守っていきたいと思ってるのだ。
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