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10月になり、ホグワーツ内では誰が代表選手に選ばれるか、その話題で持ちきりだった。来年の4月までは16歳のフレッド達は、こんな大事なイベントに参加できないことに憤慨して、何やらコソコソと部屋にこもっていた。それを呆れながらも手伝いみたいな事をしてるタイリーとリーを、私達は微笑ましく思っていた。

「それじゃ、行ってくるわね」

私、アンジー、アリシアの3人の中で唯一既に成人してる人がいる。今年の9月に誕生日を迎えたアンジーだ。
彼女は、椅子の上に羊皮紙を置き羽ペンを走らせて、名前を書く。そして床から立ち上がり、その羊皮紙を四つ折りにして笑顔を見せた。私とアリシアも、アンジーの手を握って、彼女が年齢線を越えるのを見守る。

アンジーがゆっくりと歩いて、中へ入る。その瞬間、大広間にいた女子生徒が全員声を上げてアンジーに拍手を送った。
そしてアンジーは、その羊皮紙をゴブレットの中に入れると、またこっちに戻ってくる。

「選ばれるといいわね…!!」
「アンジーなら選ばれるよ!!」

勇猛果敢なグリフィンドール。その名をしっかりと引き継いでいる勇気のある行動は、流石アンジェリーナ・ジョンソンというところだ。

「アンジェリーナ…凄いわ…同じ女として尊敬しちゃう…」

隅の方にいたハーマイオニーが、興奮しながらアンジーに詰め寄る。アンジーはそんなハーマイオニーに笑顔を見せながら「大袈裟よ」と、少し満更でもない様にそう答えた。

「グリフィンドールから選ばれたらいいなって思ってたけど…アンジェリーナなら誰も文句言わないよ…!」

同じ様に興奮してるハリーに、同意するように激しく首を縦に振るロンを、私とアリシアは面白いものでも見たかの様に笑ってアンジーをつつく。

「アンジーはこう見えて照れ屋さんだから、それぐらいにしてあげて3人とも」
「ちょっとヒヨリ、デタラメ言わないで頂戴…!」
「あら〜?恋する乙女のアンジェリーナちゃん、何言ってるの〜?」
「アリシアまで!」

怒ってる口調でも顔は真っ赤。そんな可愛いアンジーを私とアリシアは笑いながら、歩き出す。そして慌てて追いかける様に近づいてきたアンジーにもう一度笑いかけて、後ろを振り向いてハーマイオニーに「それじゃあ」と一言告げて、私達は広間を出た。










今日は、タイリーの17歳の誕生日だ。ついにタイリーは魔法界では成人となる。

朝から騒がしいグリフィンドールの談話室は、グリフィンドールの王様の誕生日を祝うべく皆で手作りの飾りを作っていた。紙を切ってリング状に繋げていく作業をしていれば、ジョージが私の隣に座った。

「よ、オジョー。はかどってるかい?」
「もちろん。あとはこれで…」

そこで言葉を一旦止めて、私は杖を振る。リングはたちまちキラキラと輝き出して、まるでマグルのランプの様になった。

「完成!」

そう言ってジョージに見せれば、ジョージは目を大きく見開きながら「いつの間に無言呪文を…?」と聞いてきた。

「気づいたらできる様になってたの。タイリーもできるよ」
「俺らの学年2トップは意味がわからない」

まずいものでも食べたかの様に舌を出してそう言うジョージをひっ叩いて、私は飾りを持って壁に寄る。背の高いフレッドに渡して、壁の上の方に飾って貰えば、なんとなく談話室が鮮やかになった感じがした。

「おい、皆!もうそろそろくるぞ…!」

リーが談話室の中に入って静かな声でそう言った。私達は慌てて机の上に置いてある紙屑を呪文で消して、ウィーズリーズが考えたというクラッカーを持つ。隣に立つジョージに、これ本当に安全なんだよねと再度確認すれば、ジョージはウィンクをしながら「当たり前だろ」と言った。

そして、コツコツと靴を鳴らして中に入ってくる音に耳をすませて。皆の前に現れたその人物に向かってクラッカーを思いっきり引っ張る。

パンパンパン!と大きく鳴って、部屋中に綺麗な白い花びらが舞い降りた。

「「「「ハッピーバースデー!タイリー!!!」」」」

そして皆で声を揃えてそういえば、目の前にいる人物、タイリーが、大きく目を見開いて呆然とそこに立ち尽くしていた。

「おいおい相棒、折角の成人だっていうのになんだいその反応は」
「盛大に喜びを現してくれよ、相棒」
「そうだぜ、タイリー!」

ニコニコと、いつもの様に悪巧みを考えてる時の顔じゃない素直な笑顔でそう言ったフレッドとジョージ、リー。その3人が前に進んで、タイリーをもみくちゃに抱きしめると、それが合図だったかの様に周りの人たちも皆走り出してタイリーを抱きしめに行った。

「おめでとうタイリー!」
「タイリー!誕生日おめでとう!」

ハリーとロンも、周りに負けない様に大きい声を上げてタイリーに抱きつく。
タイリーは余りの人の多さに床に尻餅をついて、そして驚いた様に、彼らの顔を見上げていた。

「これは…一体…」
「俺たちの」
「王様の」
「「成人だぜ?」」
「盛大に祝って差し上げないと!」

そう言ったのは、フレッド、ジョージ、リー。そして、床に座り込んだタイリーに手を差し伸べて無理やり立たせると背中を押して、私の前に立たせた。

「ほらほら、早くお姫様とお話を!」
「どうだい?談話室がまるで結婚式場みたいだろ?」

真っ白な花びらがひらひらと空中を舞って、床に落ちる瞬間にまるで雪の様に溶けるそれ。緻密な魔法の組み合わせに、ハーマイオニーが感嘆の溜め息をついていた。

「誕生日おめでとう、タイリー。そして成人おめでとう」

白い箱に赤いリボンをつけた包みを差し出す。タイリーはそれをゆっくりと受け取って、私の大好きな笑みを浮かべながら「ありがとうございます」と言って頭を下げた。

それを優しく見守っていたフレッド達が、両手をパンっと、大きく鳴らすと、机の上に沢山の料理が現れた。

「パーティーだ!食べようぜ!」

その掛け声とともに、次は机に群がる後輩達を見て、声を出して笑えば、タイリーも呆れながら息を一つ吐いた。そんなタイリーの近くに来て、彼の肩に腕を回すフレッドとジョージ。そしてタイリーの前でニコニコと笑いながらタイリーを見上げるリー。

その4人の姿が、一年の頃から変わらずにいる事が、なんだか私の涙を誘った。



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