13
ハグリットに呼ばれているとハーマイオニー(パーバティー、ディーン、シェーマス、ロンという流れの伝言だけど)から伝えられて、彼のところに行けば、ドラゴンを見せられた。どうやら、第一の課題はドラゴンが相手のようで。
僕は次の日、すぐさまセドリックを探した。クラムとデラクールにはもう既に、各校の校長が伝えているから、今現時点で知らないのはセドリックだけなのだ。
廊下を歩いて黄色のローブを探す。歩いていればいろんな人ににやにやと下世話な笑みを向けられた。ロンだけじゃなく僕は色んな寮の人からコソコソと陰口を言われていた。
僕がやったわけじゃないのに、どうしてそんな事を言われないといけないのかもわからない。
そうやって僕を馬鹿にしてる人達の胸元には、"セドリックを応援しよう。ポッターは卑怯者"と変貌を繰り返すバッチが輝いていた。
あまりそれらを目線にいれないように下を向いて歩いていれば、誰かにぶつかった。
「す、すみませ...」
「おいポッター、きちんと前を向けよ」
謝ろうと慌てて顔をあげれば、そこにいたのは、マルフォイだった。
思わず眉を潜めてマルフォイを睨むと、マルフォイはいつものような性格の悪い笑みを浮かべて、僕を見下ろす。
だけど、気づいた。彼の胸元には、バッチがなかったのだ。いつもならきっと喜んでこういったものに進んで参加するくせに。
「...なんだ?」
僕がマルフォイの胸元をじっと見ているのが気持ち悪かったのか、マルフォイは少し身じろぎをしてそう言った。
「...いや...」
何をいえばいいのかわからなくて、視線をキョロキョロとして、口を開いたり閉じたりしていれば、マルフォイは目を細めて、何か分かったかのように首を何度か縦に振った。
「あぁ...僕があんな低俗なものをつけるとでも?」
「え?」
マルフォイは顎をくいっとあげて、周りの生徒の胸元につけているバッチを指す。彼の言う方を見れば、にやにやと笑いながら僕を見ている生徒が遠巻きにこっちを見ていた。居心地が悪くて、思わず視線をそらす。
「僕はマルフォイ家の人間だ。純血名家に生まれた身として、立場は弁えてる。冷静に考えて、四人目なんてものは、服従の呪文などの高度な呪文を掛けないと出てくるわけがないだろ?」
今、僕の目の前にいるのはマルフォイなのか?僕は、目を丸くして彼を見上げた。それを、変なものでも見るかのように口を下げて僕を見下ろすマルフォイ。彼は、何度か咳払いをするとポケットに手を突っ込んでまた口を開く。
「まぁ、君が10分も持つわけがないと僕は思ってるけどね」
そして、いつもの様ににやりと笑ったマルフォイ。僕は口角をあげる。
「なんだか、君らしくないと思ったけど、今の君は感じがいいよ」
「はっ、寝言は寝て言ってくれるかい」
マルフォイはそう言うと、ふんっと鼻を鳴らして歩いていく。後ろを振り向いて、彼の背中を見届ける。
ヒヨリが前に、マルフォイに啖呵を切っていた。それも1度だけじゃなく2度も。そして思った。もしかして、急にルシウス・マルフォイがヒッポグリフの処刑を取り下げてくれたのは、彼のおかげなんじゃないのだろうか、と。
少し頼もしく見えるその背中に、あとできちんとお礼を言おうと思うぐらいには、僕とマルフォイの間には今、わだかまりというものが少しずつ減っていた。
途中でハーマイオニーを見つけてさっきのマルフォイの話を教えた。ハーマイオニーは目を見開いて、「きっとヒヨリのおかげだわ」と言っていた。確かに、そうかもしれない。僕らの姉のような存在であるヒヨリは、マルフォイの家にも劣らない純血名家の後継だし、マルフォイに諭すように教育的なものもしていたから。
僕たちを説教する時と同じように、彼女はマルフォイにも怒ってくれたのだと思う。
ハーマイオニーと一緒にセドリックを探す事数十分、彼は中庭にいた。同じ寮の友達数人に困ったような笑みを浮かべて話しかけている。
「だから、そのバッチ付けるのやめてくれないか...?」
どうやら、バッチの事を言っているらしかった。セドリック自身は、僕の味方をしてくれているんだということに気づけて、少しだけ嬉しくなった。ハーマイオニーも、まるで良かったねと言わんばかりに僕の腕を肘で小突いた。
「セドリック、今、いい?」
「あ、あぁ、ハリー、いいよ」
セドリックを集団の中から連れ出して茂みの近くに行く。小さい声で第一課題について話せば、不意にタイリーの声が聞こえた。セドリックも不思議そうな顔をして僕から目を離して、声の聞こえる方に顔を向ける。
僕も後ろを振り向くと、スリザリンの集団の近くに、タイリーと、フレッド、ジョージ、リーの四人がいた。フレッド達はまだしも、タイリーがスリザリンの人とごたついているのは珍しい。タイリーはフレッドたちの制止を無視してスリザリンの集団に詰め寄る。
「やぁシェバン。君もいるかい?」
「君も辟易としてるんだろう?グリフィンドールの王様」
そう下品に笑う彼らに僕は思わず眉をしかめる。どうやらセドリックも同じようで、足を動かしかけていた。
「君たちの頭は本当に卑劣だな。年下の男の子を貶して何が楽しい」
険しい顔をしながら睨みつけているタイリー。遠くから見ていても怖いと感じるほどだった(そりゃあの悪戯仕掛人たちの保護者だから怒ると怖い)。
「じゃあ君はどう考えてるのさ?」
「目立ちたがり屋なポッターが入れたのじゃないなら?」
「誰かが入れたに決まってるだろ?」
当たり前のように、そう言い切ってくれるタイリー。僕は思わず、目を見開いた。
「そんなことが通用するとでも思ってるのかい!?」
「あぁ」
気づけば、周りの人達も、タイリー達を遠目に見ていた。タイリーは監督生だからか、胸元にはつけていたバッチを取り外す人達もちらほら見かけた。
「ハリーは目立ちたがり屋なんかじゃない。大人しくも正義感に溢れた、とても謙虚な子さ。それに、君達もそのバッチでセドを応援してるつもりか?...あいつの事を、馬鹿にするな」
怒気を帯びたその言葉に、中庭は一瞬にして静かになる。タイリーはもう一度、彼らを睨み付けると、フレッド達を連れて中庭を出て行った。僕とセドリックがいることに気づいていなかったのか、タイリーは一瞬でも僕たちの方は向かずに、消えて行った。
「君は随分と、やさしい先輩を持ったんだね」
ハーマイオニーが笑顔で僕のほうを見ている。ハーマイオニーに笑顔を返して入れば、セドリックがタイリーの消えた方を向きながらそう言った。僕は、セドリックの顔を見上げる。
「そういうセドリックこそ。タイリーと君は、親友だったんだね」
そういえば、セドリックは少しだけ目を見開いて僕を見下ろす。そして、太陽のように明るい笑顔を見せて「あぁ」と、一言言った。
そのあと、セドリックは友達のいる方に戻っていった。なんとなくそれを見送って入れば、セドリックの友達は皆胸元からバッチを取り外して、セドリックに謝っているようだった。
「流石タイリーね...」
「うん。また、助けてもらっちゃったよ」
ハーマイオニーが僕の近くにやってくる。マルフォイだけじゃない。タイリーだって。
味方は意外にもたくさんいる事に、僕は驚いた。
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