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ついに第一の課題が始まる前日、俺はセドリックの腕にあるブレスレットに手をかざしていた。明日のためにも早く寝るべきであることは重々承知の上で。それでも俺は、夕食を食べ終えて大広間を出ようとするセドの名前を呼んだ。

セドへの誕生日プレゼントであげたブレスレットは、いつも彼の手首に巻き付いていた。きっとセドが選ばれると俺は信じていたから、早すぎる事は分かっていたけど、彼の今後の課題のためにも守護魔法をかけておきたかったのだ。

セドは、俺の事を尊敬していると言う。俺に言わせれば、セドの方が尊敬されるべき人間に値するし、セドが思ってる以上に俺はセドを、大切に思っていた。

ハッフルパフの王子様と呼ばれるセドが気にならなかったわけではなかった。俺と同じように呼ばれている不遇な人。そんなイメージがあった事も認める。だけどセドは、俺の思ってる以上に王子様とは違くて、そしてどこまでも王子様のようなそんな人間だった。誰とでも隔てなく話せる能力も、何かの目標を立てて努力が出来る所も、俺にはない。そんなモノを持ってるセドが、心底羨ましかった。

「...これが、日本の守護魔法...僕、初めて見たよ」

広間の隅の方で、集中をしながらセドの腕に魔法をかける。じんわりと、暖かい物が俺の手から彼の体全体へと回っていった。セドは何度か手を開いたり閉じたりしながら、不思議な感覚を楽しんでいるようだった。

「明日、頑張れよ。無理はするな」
「あぁ、分かってる。ありがとう、タイリー」

セドの目を見る。俺は魔法を止めて、彼の手首を掴んだ。セドはじっと俺の目を見返して、そして笑顔を見せた。

「頑張って一番目指してくるよ...親友」

王子様とはかけ離れた、悪戯っ子のように笑うセドに、俺も思わず吹き出して笑う。

「あぁ、観客席で応援しているよ、親友」

なんだかこの時、初めて俺とセドは分かち合えた気がした。












ついに、第一の課題が始まる。フレッドとジョージが箱を持ちながら誰に賭けるかと大声で叫びながら観客席を練り歩いていた。俺は、後ろからお嬢様の肩に毛布を掛けて、いつ始まるのかわからないフィールドを上から見下ろした。

「昨日ハリーに守護魔法かけたからいいけど...ああああ心配...」

前に立つお嬢様はそう言いながら、手すりに肘をつけて両手で顔を覆った。そんなお嬢様と同じようにうなだれているハーマイオニーに、彼女の隣で心配そうな顔をしているロン。ロンとハリーは喧嘩中だったはずだが、と疑問に思ったが、ロンのことだ。まだ素直になれていないのだろう。

「さぁて、誰が一番のりかな〜」
「これでたんまりだぜ」

フレッドとジョージが戻ってくる。大事そうにしまった箱の中にはジャラジャラとお金の鳴る音が聞こえた。

「そんなにお金欲しがって何に使うんだよ?」
「俺たちの将来の店にさ」
「卒業したら起業する予定なんでね」

リーの質問に、二人はウィンクをしながら言う。
確か、昔言っていたなと思い出す。いつか、皆で夢の話をしていた時に、フレッド達は自分達の店を持ちたいと言っていたはずだ。

「もう動き出してるんだな」
「あぁ!!まずは通販から始めようと思ってるんだ」
「名前はWWW、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズさ」
「君達にはおまけをしてあげるよ」
「良きに計らいたまへ」

と、ルンルンで話す二人にリーは声をあげて笑った。「じゃあ買いに行くからよろしくな」と、リーが言えば、フレッドとジョージがリーに肩を回す。

「タイリーも来いよな」
「悪戯グッズは特に必要ない」
「おいおい、堅いこと言うなよな」

肩をすくませて笑いながらいう二人に、俺は呆れながら息を一つ吐き、笑った。
横に向けていた顔を前に戻せば、いよいよ課題が始まるようで。急に、大砲が大きく鳴った。
そして、セドリックのファミリーネームであるディゴリーというコールが響き渡る。

手すりを掴んで、セドを確認する。セドはゆっくりとフィールドの中に入ると杖を握り、ドラゴンを見つめていた。
俺は息を大きく吸い込み、会場ではち切れんばかりに聞こえるディゴリーコールに負けないように、彼の名前を叫んだ。


「セドーーーーーー!!!!!!」


俺の声が聞こえたのか、セドは少しだけ笑みを浮かべると、杖を回して魔法を掛ける。上がっていた肩はもう下がっていて、いつもの、(案外)飄々としているセドの姿が見えた気がした。











第一課題が無事に終わった。今、グリフィンドール寮の談話室はかなり騒がしくなっている。金色に輝く大きめの卵を持ったハリーをフレッドとジョージが持ち上げていた。




ハリーは、最年少にして一番の好成績で課題を終わらせた。




天才的とも言われる箒の技術で、彼はあっという間に卵を取ったのだ。あの時の盛り上がり方は半端なかった。半端ないというか、興奮が冷めなかった。今も興奮しているからこんなにも騒がしいのだけど。

「お前が死ぬわけない」
「足を折っても」
「腕を折っても」
「死ぬなんてことは」
「「なーーい!!」」

フレッドとジョージがハリーをお神輿のように何度も揺らしながら持ち上げる。壁に飾ってある絵画の中の人物たちも、同じように盛り上がっていて。俺もお嬢様と一緒にハリーに拍手を贈っていた。

「静かにー!!開けろよハリー、中のヒントは!!」

全員の手に渡った卵を、シェーマスが受け取ってハリーに投げる。ハリーはそれを受け止めると、皆を煽るように「開けて欲しい人!!」と声を出す。それを見ていたお嬢様が「ハリーいつの間にあんな煽りを...」と謎の感動をしていて、思わず笑ってしまった。

ハリーの言葉に「いえーい!!」とライブ会場のように声を上げる皆を見て、ハリーは笑顔をでその卵に手をかけて開けた。途端に、談話室に響き渡る謎の奇声の様な音に、全員が耳を抑える(フレッド達も耳を塞いだせいでハリーが落ちた)。ハリーが慌てて卵を閉じれば、静かになった談話室にロンの声が聞こえる。

「今の一体なんなんだ」

耳を抑えながら談話室に入ってくるロンを、皆が注目する。

「ほらほら皆、おしゃべり続けろよ」
「興味津々に聞かれたらかわいそうだろ」

フレッドとジョージにしては気が利くなと、リーが隣でぼそりと言ったのに同意の意で首を縦に振っていれば、お嬢様が手を伸ばしてハリーの背中を押し出し、ロンの近くに行かせた。
何を話しているかは分からないが、ハリーがうっすらと笑顔を浮かべていた。

「男の子って...」

彼らの近くで座っていたハーマイオニーがそう呟きながら、首を横に振る。それをちらりと見たお嬢様が、隣に立っていた俺の顔を見上げて笑顔を見せた。

「仲直りしたみたい」

その言葉に、俺も笑顔で頷く。ハリーとロンは久しぶりに一緒にいる事の幸せでも噛み締めてるのか終始ニコニコと笑いながら、お互いの顔を見合わせていた。



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