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試合の第一課題が終わったのも束の間、何故か俺たちグリフィンドールの生徒達は4年生以上の学年がマクゴナガル先生に呼び出されて、先生の教室に来ていた。いつもなら罰点にびくつきながら受ける変身術のこの教室には、机がきれいに取り払われていて、椅子が壁際にぎっしりと綺麗に並べられていた。

「先生、終わりました」
「ご苦労様です、ではみなさん静粛に」

移動してる間に、オジョーとタイリーの姿を見かけないとフレッド達と話していたけど、なるほど。そういうことか。
どうやらこの机や椅子の整理は監督生達がやってくれたらしい。六人の監督生の中に、きっちりと俺たちの学年の監督生である二人がいた。

オジョーとタイリーはマクゴナガル先生にそう言われると、その場を離れて壁際に寄る。先生に言われた通り俺たちは男と女で別れて、向かいあっていた。オジョーはアンジーとアリシアのいる所に近づいて、間に入る。背の高い二人に挟まれてるオジョーはなんだか誘拐された子供みたいで少し面白かった。

「よぉ監督生様、おつかれさん」
「これ何の会か君知ってるかい?」
「いや...」

タイリーがゆっくりと俺たちが寄りかかっている窓際に近づく。フレッドとジョージがタイリーの肩をぽんと叩いて、マクゴナガル先生をちらちら見ながら聞いた。
俺よりもうんと背の高い三人を見上げるのは少し辛いが、俺もタイリーの顔を見上げて口を開いた。

「タイリーも知らねーの?」
「あぁ、ただ机を出せとしか」

肩をすくませながらそう答えるタイリーに、これ以上聞くことはなさそうだったので、俺もフレッドもジョージもとりあえず大人しく先生の言葉に耳を傾けた。

「かねてより、三代魔法学校対抗試合に伴い舞踏会を行うのが、伝統とされています。クリスマスイブの夜、お客様と共に、大広間で一晩楽しみさわいで結構。ただし!!」

先生はそこで一度大きい声を出して、俺たち(特に隣にいる双子達)を睨んだ。

「お行儀よく」

その言葉に、にやにやと更に笑みを深くするフレッド達をタイリーが呆れたように睨んだ。やれやれ、保護者も大変だ。

「皆さんはトーナメント開催校の代表として一人一人が自覚を持ち、最高のリードをしてあげてください。これは文字通りの意味です。舞踏会ですから、何よりも肝心なのは、ダンスです」

あんなに静かにしてた生徒達が一斉にさわぐ。女子はざわざわと、男子は「最悪だ」なんだと文句を垂れながら。そんな中でも笑ったままの双子は流石モテるやんちゃな奴らなだけあるし、タイリーも動じない所は流石王様といった感じだった。え?俺はって?俺はほら、彼女いるから。

「静かに!!」

マクゴナガル先生の怒号が響く。

「グリフィンドールの寮は千年もの間、魔法使いの尊敬を集めて来ました。たった一夜でグリフィンドールの名を汚すことのないようにはしたなくはしゃいで羽目を外したり・・・・・・・・・・・・・・・・・はしないこと」

じろりといつものような厳しい視線で生徒を見渡す先生なんかガン無視なのか、フレッドとジョージはやけに高いテンションだった。

「今の早口言葉で言ってみな」
「はしたなくはしゃいで羽目を外すはしたなくはしゃいで羽目を外すはしたなくはしゃいで羽目を外す」
「うるせーよ」

小さい声で何度も同じ言葉を繰り返すフレッドに俺がそう言えば、タイリーが隣で顔も向けずに二人の頭を叩いた。

「ダンスでは、体をのびのびと解き放つのです。女の子の中には優雅な白鳥が眠っていて飛び立つ時を待っているのですよ」

女子には優しげな声でそう言う先生の後ろ姿を見れば、不意に振り返った先生が、Mr.ウィーズリーと名前を呼ぶ。前の椅子に座っているロンが、先生の手に導かれて立ち上がった。

「さぁ、右の手を私の腰に当ててください」
「どこに?」
「腰です」

皆の前に立って、マクゴナガル先生と流れる曲に合わせて踊るロンをフレッド達がそれはそれは下品な笑みを浮かべながら踊るふりをする。自分の弟が先生と踊ってたらそりゃ兄だったらからかいの対象にばっちりだろう。そんな俺も笑いながら二人を見ていれば、ロンの隣に座っていたハリーがフレッド達の名前を呼ぶ。

「ねぇ、これで当分からかえるね」
「「任せろ!!」」

どうやら、当分の双子の悪戯の対象はロンで決定みたいだ。俺は心の中で御愁傷様と呟いて、顔には満面の笑みを浮かべた。

「さぁみなさん一緒に!!男子もさぁ立って!!」

先生の言葉に女子は一斉に立ち上がり前に出るものの、男子は誰一人として立とうとも前に行こうともしない。こう言う時、男子と女子のテンションの差って激しいよなって俺は思った。

「おいリー、タイリー」

先生に言われて渋々立ち上がる後輩達を尻目に、俺はのんきに壁に寄りかかって傍観していれば、ジョージが俺とタイリーの名前を呼びながら口を耳に寄せて来た。
俺はタイリーのローブの端を握って、くいくいと引っ張る。気づいたタイリーが一瞬俺を見下ろして(絶対いつか抜かしてやる)、そしてジョージを見た。

「なんだ?」
「このタイミングだ」
「は?」
「主語がないんだよ主語が」

何をいってるんだと俺とタイリーは同時に眉をひそめれば、ジョージは「馬鹿野郎」となぜか俺の頭だけを叩いて(解せない)、未だにロンのことを笑って見ているフレッドをちらりとみた。

「アンジーとフレッドだ」

その瞬間、あぁ...と俺は首を縦に振った。そしてすぐに、女子のいる軍団を見て、オジョー達を探す。オジョー達はだれとも踊らずに、仲良し三人姉妹よろしく、壁に背中を預けてなにやらアンジーをからかって遊んでいるようだ。
オジョーとアリシアも同じ事を考えていたのだろう、不意にこっちを向いたオジョーと目があって、俺がフレッドに指をさせば、あっちも同じようにアンジーを指差してにこりと笑った。

こうとなれば、善は急げだ。俺とジョージでフレッドの背中を無理やり押して皆が踊っている場所へと送り出す。

「なんだよ、おい」
「いいからいいから」
「そうそう、いいからいいから」

「はぁ?」と不思議そうな顔をして、俺たちを振り返りながらずるずると進んでいくフレッドに付き添うように、タイリーもついてくる。タイリーはフレッドの肩を叩いて、顎でくいっと、前を指す。そこには、やっぱり俺たちと同じように無理やり前に連れ出されたアンジー(俺達と違うのは、手を引っ張っている所か)。

「お前ら...!!」

怒っているような声だけど、耳は赤い。ここまでな、と俺は最後にフレッドの背中をとんと叩いて、離れる。ジョージも同じようにフレッドの肩をばんっと大きい音立てて叩き、「男になれ兄弟」と伝えて、フレッドのそばを離れた。

アンジーの前に立ったフレッドが、いつものプレイボーイはどこにいったのか少しソワソワとしながらアンジーに話しかけ、そしてゆっくりと手を差し伸ばした。アンジーのそばを離れたオジョーとアリシアも二人で手を繋ぎながらフレッド達を見守っていた。

そしてアンジーは恥ずかしそうににこりと笑って、フレッドの手に自分の手を重ね、二人はぎこちなく曲に合わせて踊り出す。その瞬間、オジョーとアリシアが小さい声で「キャー!!」と叫びながら控えめにジャンプをして盛り上がっていた。

「第一歩か?」
「じゃねーの?」
「いいねー甘酸っぱいねー」

俺とタイリーとジョージも、笑いながら二人を見る。近しい人間のこういうところは見てて、若干恥ずかしいけれど、やっとなにかのきっかけを掴めたんじゃないだろうかと思って少し幸せな気分になった。


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