懐かしむ人狼
初めてあの子達を見た時、あまりにも顔がそっくりでびっくりしたのを覚えている。
吸魂鬼に襲われそうになって列車の廊下で倒れていた、Ms.陸奥村にMr.シェバン。青ざめた顔で震えるようにそこに座り込んでる二人を見て、心の底がどこか冷え込むのが分かってしまった。
ここの教授として勤めることになった前に、校長からリストをもらった。生徒の名前が書かれたものだ。最も重要だとされていたのは、O.W.L生とNEWT生(もちろん例のあの子も注視するようにとは言われていたけど)。そのなかに、今年のO.W.L生の中の現段階で優秀な生徒には赤線が引かれていた。
トップ1位から3位の、タイリアナ・シェバン、ヒヨリ・陸奥村、セドリック・ディゴリー。
シェバンという苗字と、陸奥村という苗字を目にした時のあの感覚はきっと忘れそうにない。
彼と彼女の子供が、ホグワーツに来ていただなんて。そして親と全く同じように頭の出来も引き継いでいるこの二人の生徒を見て、またさらに懐かしさを覚えてしまった。
「...ふぅ」
OWLのテスト結果を採点し終えて、肩を回す。コリに凝ってしまった肩はどうやらすぐに治すことはできそうにない。
乱雑に重ね合わせてた羊皮紙を杖を振ることで綺麗に学年順、名前順に並び替える。そこに赤い紐をつければ完成だ。あとでダンブルドア先生に渡しておこう。
ハリーから没収した忍びの地図が机の上で広がっている。せわしなく動いている足跡の中に、確実にこっちに向かって来ている足跡が2つあった。授業を見る限りでも、OWLの回答用紙をみるかぎりでも、そして昨夜の出来事を考える限りでも。
どこまでも優秀な二人の足跡。
彼らが来る前に、本当はここを出ようと思っていたのに。少しだけ苦笑をこぼして、私は椅子から立ち上がり教科書や物をトランクに仕舞い込んだ。
人狼になった時の記憶はない。だが恐らく、狼となった私が彼らを襲ったのだろう。旧友の、親友だったシリウスが無実だと分かったあの夜の出来事。何故かあの場に彼ら二人が来たということを、ダンブルドア先生に教えてもらった。
私が人狼だというコトも知らないし、シリウスのことも知らないのに、何故あの場所にいたのか。
せっかくのOWL終わりで羽目を外しているだろう時間帯に、わざわざあんな所に。
怪訝そうな私の顔を見た時のダンブルドア先生は、目を細めて何が面白いのか喉で笑いながら答えてくれたのだ。
『純粋に、ハリー達後輩が心配だったようじゃ』
あぁ、どこまでも血というのは継がれていくのだな。
人狼だと気付いたのは何もシリウス達だけではなかった。寮は違えど、よく図書室で一緒に勉強をしていたエドにはうっすらと気づかれていただろうし。同じ寮のあの女の先輩には、自分を大切にと笑顔で言われて、手を差し伸べられた事も覚えている。
『1つしかない身体なんだから、大事にしなさい』
彼女も優秀だった。いつも、同じ日本人の男の子と一緒にいた。彼も優秀で、よく僕達を見守っていたっけ。いつもうるさい悪戯仕掛け人は監督生に毎回のように目をつけられていたし。
彼女にそう言われて触れられた傷は、今はもうない。何か暖かいものが巡るように傷口に集中して、ゆっくりとその傷を消して行ったのだ。それが、日本固有の守護魔法だと知ったのはいつだったか。
エドが日本に留学したと知った時か。彼女が駆け落ちして純血主義の強い家から逃げたと知った時か。
日本の守護魔法を根絶やしにしようと、死喰い人達が日本に侵攻した時か。
立派な日本固有の伝統の魔法を受け継ぎ、さらには人柄も頭脳も何もかもを引き継いだ彼らの子供を見て、思う事がないわけがない。
「...あぁ、君達か」
分かってはいたが、知らなかったふりをして言葉をかける。
瓜二つのようにそっくりな、記憶の中に残っている顔が、前にいた。
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