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あれから、僕たちはたまに図書室で一緒に勉強をするようになった。レイブンクローとグリフィンドールは合同授業がない分、やっぱ時間がかぶるということもなかったから、不規則に、だけれど。
「魔法薬学のレポートのテーマはそっちも、短い時間で作る傷薬の作り方?」
「うん、同じだよ」
いつものように図書室で、一人レポートを書いていれば、最近はよく聞き慣れた声が頭上に降りかかった。顔を上げて答えれば、案の定アオバがこっちを笑顔で見ながら本を抱えていて、僕の答えに満足したのか前の席に座りだした。
「よかった。リーマスもう書き終わった?」
「今書き終わるところだよ。アオバは?」
「私もあと少しなんだけど、終わらせ方に迷ってて」
アオバはそう言うと羊皮紙を広げて、羽ペンを握る。僕はそっちをちらりと見て、自分もどうやってレポートのまとめを書くか考えた。
どのくらい時間が経っただろうか、二人して無言で集中しながらレポートを書いていたようで、ふと前を向けばアオバが羊皮紙の上に腕を置いて、その上に顔を乗せて眠っていた。
レポートは書き終えたのだろうか?そんな危惧は杞憂に終わった。さすがはレイブンクロー、しっかりと最後まで書き終えて眠っていたようだ。
息苦しいのか顔を横にして、規則正しく肩を上下させているアオバ。僕はそっと立ち上がり、彼女の隣の席に座る。自分の着ているローブを脱いで、起こさないように静かに彼女の背中にかけた。
黒い髪がアオバの顔にかかっていて、僕はそれを指で払って耳に髪をかけてあげる。
僕たちの学年では珍しい少しあどけなさの残った幼い顔。東洋人は童顔だと聞いてはいたけれど、寝顔はもっとそうだった。
なんだか面白くてじっと眺める。彼女がいつも見せる顔は友達に笑っている顔や、拗ねてる顔、そして僕にたまに見せるからかっているような顔だ。
近くに男がいるにもかかわらず、何て無防備な顔をみせるのだか。僕は思わず苦笑をこぼして、アオバの頭をそっと撫でた。
「...ん」
「...起きた?」
「...ん?...リーマス...?」
少し身じろぎしたアオバは腕の中に顔を隠して、猫のように背中を伸ばすと勢いよく顔を上げた。
「よく寝たー」
「おはよう、アオバ」
「うん、おはよう、リーマス」
ニコニコと笑いながら顔をこっちに向けて、肩からずりおちたローブを見て慌ててそれを僕に返す。
「ごめん、ありがとうね」
「寒くなかったかい?」
「うん、バッチリだったよ」
「それはよかった」
アオバに返してもらったローブをもう一度着なおす。フードが逆さまになっていたようで、アオバが腕を伸ばしてそれを直してくれた。ありがとうと言えば、アオバは笑いながら首を横に振る。
「広間いく?お腹すいたね」
「そうだね。もう夕食の時間だし、行こうか」
本を閉じて、羊皮紙を丸める。一緒に廊下を歩きながら僕たちは何気ない会話をした。
いつも一緒に過ごしてる友達の話や、今日の授業の話、そして僕も悪戯仕掛け人と呼ばれるジェームズとシリウスの話をしたりして、気づけば広間に着いていたのだ。
「それじゃあまたね」
「うん、次はいつかわからないけれど」
「じゃあ曜日でも決める?」
「そうだね、あとでフクロウ送るよ」
「わかった。じゃあね、リーマス」
アオバは小さく手を振ると、レイブンクローの机に向かっていった。その背中を見送って、僕もグリフィンドールの机で待っているジェームズたちの方へと歩く。ジェームズは僕を見つけると途端にニヤリと笑いだした。
「なんだいリーマス、彼女が君の探し人って訳かい?」
「東洋人じゃねーか。意外だな」
「何の話だい?」
「とぼけんなよ、おい」
アオバは決して、ジェームズたちが思うような人物ではないから、僕は首をかしげながらかぼちゃジュースの入っているゴブレットに口をつけた。
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