いつだって私達は一緒でいたいと思う

「さぁ、これで...正式に私の娘となったわけですね」

羽ペンをさらりと最後に揺らし終えて、自分の親指の腹を少しだけナイフで削ぎ落として血を1つぽたりと落とす。少しだけ古びた羊皮紙が、じわりじわりと金色に輝く紙に変わると、ミネルバはゆっくりとその紙を持ち上げて私を見て笑った。

母 ミネルバ・マクゴナガル
養子 リン・マクゴナガル

本当にこれで、私とミネルバは母娘となった。
顔も違う。生まれた国も肌の色も何もかも違う。それでも、彼女は私を娘として扱ってくれた。この一年、ずっと優しく私を見守ってくれていた。

「本当に...お母さんに...」

家族がどんなものなのか、私はずっと知らなかった。過ごしてきた場所はとても素敵なところだったし、お姉ちゃんや院長の皆も全員いい人達だったけれど、それでもそれは見せかけの家族という形だった。

「えぇ、リン」

ミネルバの優しい笑顔が私に向く。大好きな彼女の笑顔が、私にだけ向いていた。たとえ血が繋がっていなくても、これで正式に私とミネルバは家族となった。それがどれだけ嬉しいことか。どれだけ幸せなことなのか。腕を伸ばして触れた温もりが、全てを包み込んでくれていた。












夏休みが終わり、またホグワーツに戻る事になった。去年一度経験してるからそんなに緊張しないかなと思ったけれど、やっぱりアジア人の少ない中一人ぽつんといるのは居心地が悪かった。同じ寮の友達を探そうかなとコンパートメントを覗き込みながら歩いていれば、一人の男の子に名前を呼ばれた。

サラサラとした黒髪を耳にかけた、緑のネクタイがよく似合うレギュだった。

「レギュ...久しぶり」
「あぁ。席を探してるならここに座ればいい」
「本当?」
「断る理由もない」
「じゃぁ、お言葉に甘えるね」

荷物を椅子に置いて、彼の前にゆっくりと腰をかける。流石はブラック家なのだろうか、レギュの座ってるここにだけ人が誰もいなくて、皆恐れ多いのだろうなーと思った。

「夏休みはどうだった?レギュ」
「あぁ...パーティーに呼ばれていた」
「貴族は大変だなー...」
「そうでもない」

肩をすくみあげてそう答えるレギュに笑って、目を細めれば、レギュが不意に「あ」と声をあげた。それに不思議そうな顔で「何?」と聞き返せば。レギュは優しく目を細めて私に笑いかけた。

「誕生日プレゼント、どうもありがとう」
「ううん。お口にあったかな?」
「あぁ。ジャパニーズティーは初めて飲んだのが、とても美味しかった。いくつか残ってるからホグワーツにも持ってきたぐらいだ」

レギュの誕生日が近い事はわかっていたから、夏休みの間にホグズミードに連れていってもらってプレゼントを贈ったのだ。レギュにたくさんのココアをもらったから、私も何か飲み物を贈りたいなと思って日本のお茶をプレゼントした。イギリス人は紅茶とか苦いものが好きだから飲めるだろうと勝手に予測したのだけど、案外彼の舌には合っていたらしい。よかった。

「よかった、レギュの舌に合うか不安だったんだ」
「リンから貰ったものなら、なんでも合うさ」
「そうなの?」
「あぁ。それだけの時間は共に過ごしただろう?」

なんとなく。レギュにそう言われたことが、とても嬉しかった。

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