「本当に歌が好きなんだな」

初めてモナカに会ったのは、1年生の時だ。
フレッド達と探検しようとしてたんだけど、気づけばあいつらだけいなくて、一人で学校探検をしていた時。あいつは何かありそうなワクワクする所しか通ろうとしないから、ずっと通ったことのない、まっすぐ歩けば図書館に続く人気のない廊下をとぼとぼと歩いていた。
その時、不意に歌が聞こえたんだ。

気になった俺は、その音のありかを見つけて、小さくばれないようにと教室の扉を開いた。中にいたのは、背の小さい女の子。教壇の上に立って、窓に向かって、知らない曲を歌っていた。

夕日に照らされた真っ黒な髪が、キラキラ輝いていて。
時折揺れるその髪に、綺麗な歌声が部屋中に響き渡っていた。

輝いて見えたんだ。夕陽に向かって歌うその背中も、心地のいいその声も、必死に歌っているその姿も。彼女の周りにだけキラキラ光る真珠が散りばめられたかのように見えた。

気づけば俺は、教室の中に入って扉近くにある椅子に座って、彼女の歌声に耳を傾けていた。いつも家で聞こえるママお気に入りの歌とは違う。聞いてて眠くならない、そんな歌声だった。

歌い終わった彼女に向けて拍手をすれば、彼女は驚いたようにこっちを振り向いた。その顔は見覚えがあって。よくフレッドと話してるアンジェリーナの同室の子、確か名前は、モナカだ。

この出来事をきっかけに、俺はちょくちょく彼女の歌を聴きに行くようになったんだ。


「モナカは本当に歌が好きなんだな...」
「イギリスに来た時、歌のおかげで、寂しい気持ちをのりこえたから...」

モナカは恥ずかしそうに頬を染めてそう言った。
彼女は日本人で、小さい時に親の仕事の都合でイギリスに移り住むようになったらしかった。そんな彼女の心を安らげていたのは、歌だった、らしい。

俺はモナカの頭に手を乗せてポンポンと叩く。

「来年はコーラス部に入るんだろ?」
「もちろん..!!すごく歌がうまい人がいて、私憧れてるんだ...!!」

目をキラキラと輝かせてそういうモナカが面白くて、頑張れよと俺は言うと、モナカはキョトンとした目をしながら俺を見つめる。

「どうかしたか?」
「ううん、ジョージも、クィディッチの入部試験受けるんでしょ?」
「おう、アンジーから聞いた?」
「うん。ジョージは箒乗るの上手だったもんね...絶対大丈夫だよ、頑張ってね」

そう笑顔を浮かべながら言うモナカに、俺も笑顔を浮かべてコクリと首を縦に振った。


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