「最後まで楽しみましょう?」
本番前はいつだって緊張はする。それは確かにその通りだ。
自分たちのグループの中で一番の年下であるモナカが、恋人に包まれながら何度か深呼吸しているのを、私含む他の三人が見守っていた。
いつだってモナカの恋人は、彼女の味方でいた。彼女の歌声のファンだった。
それは、彼だけではなく、彼女の周りにいる友達や後輩もそうだろうし、彼女の親もだろうし、もちろん他のファンの皆もそうだ。
だけどそれだけじゃない。私たちだって、彼女の歌声のファンなのだ。
今だって、忘れない。モナカの歌声を初めて聞いたあの瞬間を。きっと、彼女がいるおかげで今の私はいる。純血主義なんて古臭い家から離れることができたのも、この子がいれば、という希望が見えたから。
恋人たちに手を振って扉を閉めて中に戻ってきたモナカを、レイニーがからかうように突っかかっていく。それをアンナが苦笑を浮かべながら止めていて。
私はフゥと一息ついて、椅子から立ち上がる。
「モナカ、衣装に着替えなさい」
一人だけ簡易服のままのモナカにそう声をかける。
私たちは全員、ホグワーツ出身だ。そのため、出身寮の色に合わせて、衣装を作ってもらっている。モナカならグリフィンドールだから赤。レイニーならハッフルパフ出身のために黄色。アンナはレイブンクローだから、青。
そして私なら、スリザリン出身だから、緑。
モナカがレイニーに服を預けて衣装に着替える。極度の恥ずかしがり屋なモナカは私たちの中でも一番露出の低い衣装だ。片方の足を大胆にほとんどすべて見せているレイニーとは反対に、モナカは足も腕も隠してる。腰と胸元を見せるところだけは、お揃いだ。
「着替えたわね?」
「はい」
着替え終えて、髪を手櫛で梳きながらこっちに来るモナカに見習って、レイニーとアンナも立ち上がって私の近くに来る。本番前は、必ずと言っていいほどやっている恒例の行事だ。
ただ、お互いにお互いの顔を見つめあうだけ。
出会えたことに感謝を。そして、互いがお互いの仲間で、味方で、最大のファンであることを忘れないようにと。
「忘れてないわね?」
「もっちろ〜ん」
「えぇ」
「はい」
腰をクネクネと動かしながら言うレイニーに、しっかりと私を見据えて頷くアンナとモナカ。
「今回も、最後まで楽しみましょう?」
私がウィンクをしながらそういえば、三人は口元をあげて、そして口を開く。
部屋に響き渡る私たちの歌声。
レイニーは、心地のいい安心するような重い声。
アンナは、力強い、そして繊細な綺麗な歌声。
モナカは、この中で一番高く高く響き渡る、癒される高い声。
一人一人の個性をしっかり合わせて、私たち『ハーモニカル』のライブは、出来上がっているのだ。
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