「俺みたいに皆がファンになるよ」
「明日の学年末パーティーでね、先輩と四人で歌うの」
「マジで?」
いつものようにモナカの歌を聞いていた時だった。長期休暇まで後1日となった時。
モナカが不意にそう言った。俺はびっくりして、真顔で彼女の目を見つめてしまったが、モナカは特に驚いた様子もなくコクリと首を縦に振った。
「だけど、秘密なんだ」
「秘密?」
「うん。あまり私たちはよく思われてないから」
コーラス部の中には、純血主義を気取ってるスリザリンの女の生徒がいるらしくて、今はその人たちが牛耳ってるせいで、歌の上手い人でもマグルなら歌わせない、とか言うクソなことが起こっているらしかった。モナカが去年試験に落ちたのも、東洋人だから、という理由だったらしくて。俺は怒りで気が狂いそうになったのを覚えている。
「明日コーラス部の合唱が終わったら、私と三人の先輩がその場に残るんだけど...」
机の上に座りながら、足をぶらんぶらんと揺らすモナカを、彼女の座る机の近くにある椅子に座って眺める。なんだか元気のないように見えるモナカの姿に、俺は不思議に思って声をかけた。
「なんか元気ないな?嫌なのかい?」
「いやっていうか...」
モナカの顔を覗き込む。モナカは、頬を少し膨らませて、目を何度かパチパチとしていた。
「...緊張?」
「...うん」
モナカは恥ずかしがり屋で、消極的な子だ。だけど、彼女の歌声が皆に聞いてもらえれば、彼女含む歌が大好きなコーラス部のマグル出身の子たちも、きっと楽しめる。モナカも、楽しめれるようになる。だって、モナカの歌声は、素敵だから。綺麗だから。癒されるから。
きっと、彼女はスターになる。
俺はモナカの膝の上にある彼女の手に自分の手を重ねる。来年はついに14歳になる。もうすでに男と女の差はできていて。出会った当初は同じだった身長も、同じサイズだった手も、俺の方が大きくなっていて。
ぎゅっと強く握る。モナカがピクリと肩を動かした。
「大丈夫、俺が保証してやる。きっと俺みたいに皆がファンになるよ」
そういえば、モナカは俺の目に目を合わせて、不器用な笑顔を見せて首を縦に振った。
モナカの歌声が大広間に響き渡る。綺麗な澄み渡る高い声。だけど、頭に響くような声じゃない。じわりと身に染み渡るような、優しい声。彼女の歌声は、癒しだ。
胸元の服を握りながら、三人と顔を見合わせながら歌うモナカ。俺は一つ目を閉じる。
やっぱり何回聞いたって、すごいと思う。こんなにいい声を、皆に聞いてもらえないままなんて、俺が嫌だ。ファン第一号の、俺が嫌だ。
ゆっくり目を開ける。
四人の歌ってる姿が、キラキラ輝いて見えた。吸う息一つにも、漏れる声の一音にも、すべてに感情が込められていて。
最後の最後まで、綺麗に混ざり合ったハーモニーが聞こえなくなると、大広間は一瞬静かになり、そしてはち切れんばかりの大拍手が、響き渡った。
アンジーもアリシアも、モナカの名前を叫びながら拍手をしていて。相棒のフレッド、リーも口笛を吹きながら「ブラボー」と繰り返し叫んでいて。いたるところから、そんな言葉がたくさん聞こえた。
俺はこの時に確信したね。これでここにいる人たち全員が、モナカの、モナカたちの歌に惚れた。ってね。
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