11.


今日は久しぶりに3Eの男子達と会う。クラス会ではなくて、男子会。俺が企画したから強制的に全員参加だ。岡島とかもくるから、つまりはそういうこと。

ゲスい話し放題!!

「よーっす、久しぶりじゃん!」

集合場所に行けば、粗方全員集まっていた。中学の制服も、超体操着も脱ぎ捨てた俺たちは、今じゃ普通の男子高校生。まぁ、あの時に培った体力や能力ってのはまだまだ健全。多分俺だけじゃなくて他の奴らもたまにパルクールしながら帰ったりしてると思う。

「おー、前原、久しぶり!」

磯貝が俺に話しかけてきた。変わらない爽やかフェイス。服装も相変わらず爽やかなまま。春になって少し肌寒いとはいえ、太陽の日照りも暑くなってきた。ストールを首に巻きつけて、磯貝はにこりと笑っている。

「おせーぞ〜」
「わりーわりー、もしかして全員いる?」
「いや、カルマと渚がまだだな。…あ、きた」
「ごめん!皆!遅れちゃった…!」

カルマを引っ張りながら走ってきた渚が、肩を上下に揺らして息をした。後ろにいるカルマは余裕そうな笑みを浮かべていて、相変わらずこの2人のコンビも健在なんだなと思った。

「んじゃ行きますか〜」

3E男子会、いざ出陣!








「寺坂達ってまだ続いてんの?」

男子会とはいえ、やるのは特にない。酒も飲める歳じゃないし、きっと二十歳越えれば飲み会とかになるんだろうけど、こういうのはカラオケと相場が決まっている。

木村が歌っているのを聞きながら、菅谷とかそこら辺が盛り上げているのを見て、俺はなんとなしに前に座ってる寺坂にそう聞いてみた。

「あ?」

寺坂はジュースを飲みながら、木村の歌を聴いていた。真面目かよ。
俺にそう凄ずんだ顔を見せた寺坂の肩に腕を回して、わざとらしくニヤリと笑ったカルマに、寺坂がめんどくさそうな顔をした。

「ずーっと仲良しですよこいつらは」
「なんでお前が言ってんだよ」
「サチって呼んでるもんね?竜馬くん」

語尾にハートがつかそうな程のニヤニヤ顔。苦笑をこぼしながら、村松達が助け舟を出した。寺坂と新稲は名前で呼び合うようになったらしい。
去年の冬に、この2人がキスをしたとかで一度グループラインが活発になったことがある。結局その写真を見ることは出来なかったけどさ。

「ほぉ〜やる事はやってんだな、寺坂」

俺の言葉に次に反応したのが岡島。木村が歌い終わりマイクを置いた。その瞬間、全員の視線が寺坂に集中する。まるであの時に戻ったかのような反応の鋭さだ。

「…で、寺坂。新稲とはどこまで行ったんだ」

やけに真面目そうな岡島のその言葉に、全員が無音を貫いた。無言じゃない、無音。この場で音を先に出すのは寺坂だけに許された。

今すぐにでも殺せんせーに襲いかかりそうな程の構え方で、全員が寺坂に集中した。

「…いや、どこまでもいってねーよ」

呆れたようにそうぼやいた寺坂に、全員が息をつく。なんだよどこまでも行ってねーって。旅行じゃねーんだぞ。

「キス止まりか?それともその先はいったのか?」

めんどくせぇ、俺が思い切ってそう聞けば、聞かれた本人だけではなくて他の男子まで顔を赤くした。三村や木村に渚。うぶな男子達は今もなおうぶらしい。渚に至ってはあんなキスを全員に見せつけたくせにそこで赤面するか?と突っ込みたい。

「なっ!んで、お前らにいわねぇといけねーんだよ!」

おーおー、照れてます。寺坂選手、照れてます。
カルマじゃないけど俺まで悪魔のようににやけてしまう。まぁ自分のクラスメイトカップルのそんな所を考えるのは申し訳ない気持ちもあるけれど、あ、いや、岡島辺りなら余裕で考えてそうだな。

「したのか、ついに!?」

岡島の言葉に、またもや全員が押し黙る。寺坂がそんな俺たちを驚愕の表情で眺めた。元クラスメイト達に自分達の進退を聞かれる状況とか嫌だよな俺も嫌だわ。
寺坂は、はぁとため息をついたあと、頭をガシガシと掻きむしりながら言った。



「まだ高校生だぞ…責任とれる立場じゃねぇからしねーよ」



こいつ、男子高校生の鑑か!?

寺坂の菩薩のような言葉に次は俺たちが驚愕した。あのカルマでさえ、豆鉄砲でも喰らったかのような顔。目を丸くして、寺坂を一歩引いた形で見ていた。

誰も口を開かなかった。俺達がゲスい考えで話していい領域にこいつらいないんじゃねーの、なんて思ってしまったからだ。

「…まじか、寺坂…お前…」
「いや、さすがというべきか…?」
「いやここまでくるともう…」

渚でさえ顔を赤くしてあたふたしている。ここまで菩薩ぶりを見せられるとこっちが照れるよな。磯貝が俺の隣で笑いながら「寺坂、大事にしてるんだな」と言った。

大事に。大事に、ねぇ。中学の時のこいつと新稲の距離は見ていて本当にうざったかった。さっさとくっつけよ!とさえ思いながらいつも見ていた。俺からしたらあんなに近づくために時間を費やして、ゆっくりゆっくり2人だけの世界を作っていく事に煩わしささえ覚えると言うのに(多分俺の悪いところはそこだろう自覚してる皆まで言うな)。

この二人は、それを乗り越えていた。二人だけの、二人にしか通じない何かを持っていた。寺坂がいれば大丈夫、新稲がいれば大丈夫。そんなものを、お互いに持っていた気がする。

「まぁ…大事にしねーとダメだろ」

はああああ!?何!?寺坂様なのこいつ!?

寺坂のその言葉を聞いた瞬間、俺だけじゃなく岡島も杉野もカルマでさえも天を仰いだ。カラオケ内にいるから天井か。蛍光灯が眩しい。眩しすぎて涙が出るぜ。

「寺坂君…達観してるね」
「達観っつーか、あいつが独特な考えしてるからうつった」

それは言えてる。新稲と言えば、数学。理論的に何事も考えて話すように見せかけて、実は普通の女子。だけど肝っ玉の座り具合は誰よりも堂々としてる俺達の指揮官だ。

だから、クラスの暴走だった寺坂を大人しくさせてあまつさえ手懐けた新稲は、ある意味凄かった。

「結婚だなこれ」
「結婚だわ」
「寺坂結婚する時は言えよ」
「しねーよ何歳だよ今」

17歳。あと一年経ったら俺たちも結婚できるぞ。イトナが真顔でそう言うもんだから、あまりに面白くて俺達は全員大声で笑ってしまった。





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