7.


夏休みも終わり、秋一色となった。そんな季節も私たちはあいも変わらずマックでの定期会を行っている。秋独自の月見バーガーを手にして頬張れば、愛美と二人で「おいし〜」なんて同時に言って笑ってしまった。

「てか聞いてほしいんだけどさ」

いつもの座る位置。前に座る原ちゃんの隣で、莉桜がポテトを振りながらそう言った。何なに?と皆で真ん中に顔を寄せて、莉桜の言葉に耳を傾ける。

「実はさ...私」

ゴクリと唾を飲み込む。

「彼氏できましたー!!!」

その言葉に、私たち三人は目を開いて「「「ええええ!?」」」と答えた。
ちょっとうるさすぎたかな。周りの人たちの視線が少し痛かったから私たちは声を潜めて話した。

「いつできたの?」
「ふふ、1週間前にね!」
「同じ学校の人ですか?」
「そうそう!先輩なんだけどね〜」
「確かに莉桜ちゃん年上との方があいそうだもん」

あー莉桜確かに年上の方が合いそう。
原ちゃんの言葉に頷きながら私はバーガーを食べるのを進めた。

「でっさ〜これ言って良いかな?」
「何?」

莉桜がニヤニヤ笑いながら私のことをみた。え、何。めっちゃいらっとする笑顔だなと思って、莉桜の足を蹴ってやった。ごめんごめんと笑いながらまた顔を真ん中に引き寄せて、莉桜は口を開いた。私たちも近づいて、聞いてみる。





「実は〜〜〜キスしちゃった」





はああああ???その言葉に思わず私だけがそんなことを言えば、原ちゃんと愛美が肩を震わせて笑い出す。

「早くない?まだ付き合って1週間でしょ?早すぎじゃない?」
「えー高校生なんてそんなもんでしょ。てかサチたちが遅すぎ!」
「まぁ人それぞれだしね...」

どうどうと私をなだめながら原ちゃんがいう。
いや早すぎるでしょ、え、普通そんなものなの?私たちが遅いって何?むしろゆっくりと慎重に進めてるだけだわ!

「早くキスしたら良いのに。結局夏休みでキスしなかったんでしょ?」
「な、名前で呼び合うようになったし!」
「子供か」

いや普通に考えてみてほしい。あの寺坂君のことを竜馬って呼んでるんだよ?しかも彼も、私のことをサチって呼んでる。すごくない?中学の頃想像してみ?すごくね?

「まぁでもあの寺坂君がサチのことを名前で呼んでるの、ちょっと想像できないよね」
「でしょ原ちゃん!?」
「そうですね...少し意外だなと思いました」
「寺坂なりの進歩だよね〜」

それは認めるんだ。

莉桜のトレイにあるポテトから一つ拝借して口に放り投げる。もぐもぐと口を動かして食べていれば、莉桜がにやりと笑って頬杖をついた。

「まぁ、少しずつね」

うっさいわ。そのドヤ顔腹立つわ〜なんて言いながら、私たちは四人で顔を合わせて笑い合った。








そんなことがあった先日の出来事から、何日か経った。学校が終わって、いつものように交差点まで歩けば、携帯をいじりながら私を待っていた竜馬がちらりと私をみて、携帯をポケットに突っ込んだ。

「お待たせ」
「どっか行きてぇんだっけ?」
「うん、折角だし」

今日、私と竜馬は無事に付き合って1年が経った。どっか食べに行くか、それかどっちかの家でまた課題でもやるか悩んだけどせっかくだし、お出かけをしたかった。

クリスマスも近いから、駅前には大きなツリーが飾られているらしい。莉桜から聞いた。まじでムカつくわ。

「駅前いこ」
「わかった」

季節も巡って寒くなる。マフラーをつけた竜馬が、ゆっくりと手を伸ばして私の手を掴んだ。それを竜馬のポケットに入れられて、私は暖かいその中でギュッと彼の手を握りしめた。

一年経ったからと言って何かがあるわけじゃない。特別なことでもなんでもないし、まぁちょっと嬉しいけど、そこまで盛り上がることじゃないかもしれない。

だけど、もうそろそろ1年経つぞ、って教えてくれたのは竜馬だったりする。

それがなんだかとても嬉しくて、気恥ずかしくて。
そういう見えない優しさってやつが、昔から変わらない彼の良いところ、なんだよね。





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