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殺せんせーの暗殺に反対な人が沢山いると安心していたけれど、助ける事に反対な人もいた。
「中村...さん...」
「助けるって言うけどよ、具体的にどーすんだ?あのタコを1から作れるレベルの知識が俺らにあれば別だがよ。奥田や竹林の科学知識でさえせいぜい大学レベル。新稲の数学の知識があっても、それだけでどうにかなるモノでもねーだろ」
寺坂君の言葉に、奥田さん、竹林君が俯く。新稲さんはじっ...と、僕を見つめていた。
「渚よ、テメーの言いたいこと俺らだって考えなかったわけじゃねぇ」
「けどな、今から助ける方法探して、もし見つからずに時間切れしたらどーするよ?」
そんな事、考えなかったわけじゃなかった。吉田くんと村松くんの言葉に、僕は拳を握りしめる。
「暗殺の力を一番つけた今の時期によ、それを使わず無駄に過ごして、タイムリミットを迎える事になるんだぜ。あのタコが、そんな半端な結末で、半端な生徒で、喜ぶと思うか?」
寺坂くんの言葉に、僕だけじゃなく他の皆も目を見張った。正当な意見だ。殺せんせーに認めてもらえる事が、僕たちの一番の目標。それは、暗殺で答えるものだからだ。
「でも、考えるのは無駄じゃない...「才能あるやつってさ。なんでも自分の思い通りになるって勘違いするよね」
僕の言葉を遮ったのはカルマ君だった。
「ねぇ、渚くん。随分調子乗ってない?」
彼は木に寄りかかっていたのをやめて、一歩ずつ僕に近づく。
「E組で一番暗殺力あるの渚くんだよ?その自分が暗殺やめようとか言い出すの?才能が無いなりに...必死に殺そうと考えてきた奴らの事も考えず。それって例えるなら、モテる女がブス達に向かって、たかが男探しに必死になるのやめようよ〜〜とか、そんな感じ?」
「そ、そんなつもりじゃ!第一、暗殺力なら僕なんかよりカルマくんの方が...」
「そういう事いうからなおさらイラつくんだよ。実は自分が一番、力が弱い人間の感情理解できてないんじゃないの?」
呆れたように、首元をかきながら言うカルマくんに、僕は思わず怒鳴りつけた。
「カルマくんは殺せんせーのこときらいなの!?映画一緒に見にいったり楽しかったじゃん!!」
「だぁかぁらぁ!そのタコが頑張って渚くんみたいなヘタレ出さないために、楽しい教室にしてきたんだろ!?殺意が鈍ったらこの教室成り立たないからさぁ!その努力もわかんねーのかよ!体だけじゃなく頭まで小学生か!?」
その言葉にいらついたわけじゃない。カルマ君の言ってることだってわかるんだ。僕だってわかってる。わかってるんだよ!
「え、なにその目。小動物のメスの分際で人間様に逆らうの?」
カルマ君は僕にそういうと手を伸ばして僕の身体をどつく。
「文句あるなら一度でも喧嘩に勝ってから言えば?ほら受けてやるから来いって」
ほら、ほらと言いながら僕を何度もどついてくるカルマ君に、僕はイラつきながらも冷静に足をあげてカルマ君の首に足を絡めた。
「僕だって半端な気持ちで言ってない!!!」
ピクピクしているカルマ君の腕に、確かな感触を感じる。無理矢理にでも言うことを聞かせてやる。僕はそんな思いで、彼の首を締め上げた。
「こいつ...!!」
「やめろって!」
「二人とも喧嘩してどうすんだ!教室の状況が激変したから苛立つ気持ちはわかるけど!」
前原君達が僕たちを止めるため間に入ってきた。僕は杉原君に持ち上げられたけど、カルマ君も僕もまだジタバタしている。
「中学生の喧嘩大いに結構!でも暗殺で始まったクラスです。武器で決めてはどうでしょう?」
その時、ことの張本人が仲裁案を出すために間に入って来た。殺せんせーは最高司令官の格好をして、ライフルやBB弾を持っている。
「二色に分けたペイント弾、インクを仕込んだ対先生ナイフ。チーム分けの旗と紋章を用意しました。先生を殺すべき派は赤。殺すべきでない派は青。まずしっかり全員が自分の意見を述べて、どちらかの武器を手にとってください」
相手チームのインクをつけられた人は死亡退場。相手チームを全滅させるか、敵陣の旗を取ったほうが勝ち。シンプルだ。力技みたいなところもあるけれど。
「先生はね、大事な生徒たちが全力できめた意見であればそれを尊重します。最も嫌なのは、クラスが分裂したまま終わること。先生のことを思ってくれるなら、それだけはしないと約束してください」
殺せんせーの言葉に全員が決意を固めた。磯貝君の「どうする?」という言葉に、僕たちは黙ったままくびを縦に振る。
「よし、戦争で決めよう。殺すか殺さないか」
その言葉に真っ先に動いたのは千葉君と速水さんだった。
「必殺を目指して必死に頑張ったから、俺らは成長できたと思う。誰が、なにが、俺らを育ててくれたのか、そこから目をそらしたくない。だから、暗殺を続けたい」
二人は赤色のBB弾と銃を持った。殺せんせーを殺す派だ。
殺す派も、決して殺せんせーの事を安易に考えてるわけじゃない。自分の気持ちだけでいっぱいになっていたことが、少しだけ恥ずかしくなってきた。
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