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「...父さん、ただいま」
「サチか、おかえり」


家に帰れば、珍しく父さんがそこにはいた。

久しぶりに会話をした。
実に何週間ぶりに見た父さんの顔はやつれていて、きちんとご飯を食べていないことがうかがえた。


「...ご飯、ちゃんと食べてるの?」
「父さんはいいんだよ...サチはしっかり...食べなさい」


そう言ってお金を私の手の中に入れると、玄関の方へと向かう父さん。
その背中に、もう19時になるのにどこに行くんだと聞けば大学だと答える。


「帰ってきたんじゃないの?」
「まだやることがあるからね...サチの今月の生活費を、渡しに来たんだよ」


靴を履くために玄関に座る父さん。
その背中は、いつからこんなに小さくなってしまったのだろう。
私は胸元を握っていた手をだらりと落とす。きつく握りしめたお金の入った封筒。



私は、お金が欲しいわけじゃないんだと、どうしても父さんはわかってくれない。



「もうすぐわかりそうなんだ...もう少しだけ...待っていてくれ、サチ」


目を細めて笑いかける父さん。
生気の感じられない目元のシワが、余計それを助長している。

私は一体何を待てばいいというのだ。父さんは私に何をしたいんだ。




「父さんは...何がしたいの...?」




静かに言ったつもりだった。
ドアを開けようとしている父さんが一瞬動きを止めた。そしてゆっくりこっちを振り返ると、何かを考えるそぶりを見せて一言だけ言って。


そして家を出て行った。





『また...三人で過ごそう』







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