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「太刀川さんと赤坂さん、まじで付き合ってねーの?」
出水君の言葉に、太刀川がふと顔を上げた。よそ見をするな、せっかくお前のために時間を削ってこっちはテストの内容を教えてるのに。おい、と太刀川の肩を叩いて、机に広げてる過去問を読ませた。
太刀川隊はさすがA級1位なのか、広い。B級の私達よりは明らかに広いそこに、出水君だけがソファに座っていた。他の人は皆いないらしい。ずぞーっとストローを鳴らしながら、出水君が笑う。
「カレカノみたい」
「こいつと俺が?」
「それかセフレっぽい」
「最低出水君、もう勉強教えないから」
「待って赤坂さん今の無しにするから!」
セフレみたいは流石に酷いだろ、失礼か。こいつとセックスしてるところなんて絶対に想像できない。ありえない、と眉を顰めて太刀川の足を踏めば、太刀川がいてぇと声を上げた。
「俺が赤坂と付き合ってるってよく聞くけど、お前らそう言うことしか考えてねーのな」
ゲラゲラ笑いながら言う割には太刀川もだいたい同じことをしてる。二宮君と私に対して元カレ元カノとか言うのは、全く同じ。付き合ってねーし付き合ってた事実もねーよ。
「えーでも本当は?昔付き合ってたとかありません?」
「ないない、気持ち悪いからほんとやめて」
「言い過ぎだろおい」
「じゃあなに、私とキスできるとでも?セックスしてるところも想像つくんだ?」
私は無理。だからこの話はやめて、手をひらひら振りながらそういえば、太刀川は何か怒ってる様子でペンを机に置いた。
「処女のくせに」
「は?童貞のくせに」
「あ?俺が?んなわけねーだろ」
「じゃあ私も、んなわけねーだろ!」
やめろよ、くそ!
肩に手を置いてソファーの背もたれに押しつけられる。出水君なんて目を丸くしてこっちを見てる。元はと言えば君が悪いのに。
「ゃめろっ…」
「ん…っ…」
キスをしてんじゃねーよ。
力を入れられて何もできない口の中に、太刀川の舌が入り込む。最低。出水君いるのに。何でこんなところで。
出水君こっち見てるよガン見してるししかも顔を赤くしてる。赤くすんな助けろ、目の前で自分の先輩が男に襲われてんだぞ。
「ん…っん…」
「は…っ……」
やめてやめてやめて。足をバタバタして太刀川の股間に向けて足を動かそうとしたら、太刀川の手が私の太ももを触って、それを押さえつけた。いや待て本気でこいつ待て。その手で太ももをやんわりと揉むな。上にあげるな。スカートの中に手を入れようとするな。
「やめ…」
「ちょ、太刀川さんストップ!!」
出水くん流石にこれはやばいと思ったのか立ち上がってくれた。太刀川の肩に手をやって、私から無理やり剥がそうとするけどヒョロイ出水くんと太刀川じゃ体格差がある。頑張って私も手で押し出そうとするのになかなかいかない。
「二宮くん…っ」
か細い声で、二宮くんの名前を呼んだ。
同じ学校だった彼は、事あるごとによく助けてくれたから。きっと今回も助けてくれるのではなんて甘い期待を抱いて彼の名前を呼ぶ。
「おい、太刀川なにしてんだ」
本当にきたよ二宮くん。
何かがあると必ず現れる二宮くんのせいでこいつに元彼元カノって言われてるんだよな本当は。きっとそう。だとしても助けてくれるんなら助けてもらおうじゃないか。
ヘルプ、ヘルプ、と太刀川の背中を叩いて二宮くんに訴えれば、二宮くんがため息を吐きながら立川をベリッと私から剥がしてくれた。
「二宮さん!!!ありがとうございます〜!!」
「出水、止めてやれ」
「無理無理!急だったもん太刀川さん」
「顔赤くしてたくせに出水くん」
「こっからだったのに邪魔すんな二宮」
太刀川の頭を二宮君の二人ではっ叩いた。ふざけんなこいつもう一生レポートとか教えないし忍田さんにもチクってやる。ソファーから立ち上がって、二宮君の後ろに隠れた。最低、めっちゃ低い声で中指を立てて、ついでに出水君にも最低、とこぼしてやる。
「え!俺も!?」
「忍田さんは無しだろ!」
二宮君の手首を引っ張って隊室を出る。あいつらA級1位とか言う割には頭はC級だ。ただのクソ。
ギャーギャー言ってる二人を無視して、二宮君と廊下を歩く。あれ、そう言えば出水君に用があったんじゃ?と聞けば、彼はチラリと私を見下ろして、もういいと言った。
「出水には後でいい。さっきのは明らかに襲われてただろ、お前太刀川の隣の部屋で大丈夫か」
呆れた様にそう言う彼に、にこりと笑う。ほんとだよな、私もそう思うよ。
二宮君はため息を吐いて、次のランク戦よりもお前の方が心配だ、なんて随分と甘い事を言ってくれた。この人意外にこう言うところあるもんな。のんが嫌いだと言う理由も分かるけど、まぁなんだかんだで彼女ができる理由もわからんでも無い、みたいな。
「じゃ、私は隊室に戻ります。ありがとね二宮君」
「あぁ……次のランク戦」
「ん?」
あと、三日後に迫ったB級上位のランク戦。初めて戦う三雲君のところと、よく戦う二宮君達、東さん達の四巴。あぁ楽しみ。そんなことを思ってる私とは別に、二宮君は顔を険しくて、私のことを睨んだ。
手を離して、彼の前に立つ。高校生の時からこの人は変わんない。
「お前の点を貰いに行く」
勝手なライバル発言。こう言うところ見ても、あいつらこの人を元彼と言うのか?私としては、明らかに敵だろって思うんだけどな。
苦笑を溢して、首を縦に振る。そんな簡単に取らせはしないけど、二宮君は怖いので。笑いながら、赤坂了解と答えるのだ。
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