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言っちゃった。
言っちゃった。
頭の中はただそれだけだった。私は言ってはいけないことを口にしてしまった。
朝、目がさめて起きる。いつも通りの朝だ。
いつも朝練で早くからいなくなる姉。今日もその姿はない。まぁ目を合わせるのも今はいやだけれど。
「おはよう、馨」
「おはよう、お母さん」
「昨日お姉ちゃんと喧嘩したの?」
「...え?」
「お姉ちゃん目が真っ赤に腫れててね。今日は休んだら?って言っても行くって聞かなくて。あんたなんか言ったんじゃないの?」
そうか、お姉ちゃんは泣いたのか。
そして私を攻め立てるお母さん。泣きたいのはこっちだ、といえない自分に腹が立つ。私は悪くない。そうでしょ?
「...知らないよ」
「そう」
「ごちそうさま」
朝ごはんを全部食べて、食器をシンクに置く。さっさと学校に行こう。今のこの空気がいやだ。私ではなく姉ばかりを庇う親のこの雰囲気が。
身支度を終えて鞄を背負う。いってらっしゃいという母親の言葉にきちんと言葉を返し、私はできるだけ前を向かないように歩いた。
きっと、姉が泣いたのは私のせいだと母親の中では確定されたことであろう。
だけれど、私がこんな思いをしたのは一体だれのせいなのだ。
姉のせいだろう?
そんな自問自答を繰り返して、結局落ち着く答えは、どっちもどっち。
可愛い喧嘩だ。それこそ、姉が羨ましいと自分で認めてしまえばいいのにできないこのもどかしさ。
私はまだまだ子供だ。そりゃそうだ。まだ中学生なのだから。
「おはよう、馨」
「おはようー」
友達に挨拶を返した頃には、私はまた前を向いていた。
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