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あの不思議な夜に出会ったあの日から、俺と一堂ちゃんはともに勉強する仲にまでなった。
話していてとても楽しい子で、もしも俺達二人が秀徳にうかったら、おそらく一生モンの友達になれるだろうと思えるくらい、本当に気が合う子だ。

そんな彼女は、随分と昔からそれこそ生まれる前からの悩みがあった。それは、双子の姉へのコンプレックス。
話を聞いてる限り、写真を見る限り、どうも一方的に一堂ちゃんはそのお姉ちゃんに嫉妬というものをしているみたいだ。
それを本人が認めていなかったら話はややこしくなっていくのだけれど、彼女もそれはきちんと理解しているみたいだ。



「なんで実の姉に嫉妬なんかしなきゃいけないのかとか、思うんだよ...」



そんなに気にしなきゃいいのに、なんて安い言葉言えるわけがない。
そのおかげで彼女は一番仲のいい女子と高校で別れることになり、さらには親ともすこし険悪なムードなのだから。

別に一堂ちゃんが格別ぶさいくってわけでもない。お姉ちゃんがとてつもない美少女ってわけでもない。でも、確かに顔は整ってる。
一堂ちゃんだって普通に可愛いと俺は思うんだけれど。
こんなハイスペックすぎるお姉ちゃんいたらだれでもネガティブになるか、と俺は思った。




「こんな風に思いたくないし、本当はね、そんなこと微塵も思ってなんてなかったの」





つい昨日、その渦中のお姉ちゃんと喧嘩をしてしまったそうだ。
本当にそう思ってるわけではない言葉を、つい昨日はかっとなって言ってしまったと。
彼女は涙を流さずに静かに泣きながらそう言う。



「大嫌いって、言っちゃった」



本当に後悔しているようだ。
じゃないと、そんなに肩が震えるわけがない。


「一堂ちゃん、俺、妹いるんだけどね」

「うん」




そうか、だからこの子は以前、歳の離れた兄弟がほしいと言っていたのか。
そうか、だからこの子はこんなにもコミュ力が高いのか。
そうか、だからこの子はとても努力家なのか。


今まで感じていた彼女に対しての疑問がどんどん浮かんでは解決して消えていく。
よく、こんなに我慢してきたな。俺は素直に感嘆の息をもらした。



「よく妹は俺に大嫌いだって泣きながら言ってくるんだけど、でも次の日に俺が部活から帰ってくる頃には、俺の大好きなハンバーグをお母さんと作ってごめんなさいって言ってくるよ」

「...うん」

「それとこれとは違う話に聞こえるかもしれないけれど、同じ兄弟喧嘩の話なんだから」

「うん..」

「同じお腹からうまれてきた家族なんだから。しかも一堂ちゃんの場合は双子でしょ?ほかの兄弟よりもよくわかってるんじゃないの?」

「うん、そうだね..」



俺の場合は小さい妹との話。
それでも、彼女は妹側で、大嫌いだと言ってしまった張本人。謝るのは自分からだというのも、きちんと理解できてる年頃だ。
(年齢関係なしに彼女は頭がいいからわかっているだろうけど)


「頑張ってみなよ」

「..うん」

「で、そのお姉ちゃんとも、絶対受験終わる頃には解決してるって」

「そ、かな?」

「うん。俺が保証してやるよ」

「ほんと?」

「ほんと」





俺お得意のスマイルを見せれば、さっきまでの泣きそうな顔が嘘のようにいつもの笑顔を見せる一堂ちゃん。
解決、とまではいかないにしても少しは軽くなれただろうか。

俺はその思いを口にせず、目の前にあるコーラーで飲み干した。




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