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誰かを好きになったことは今までも何回かはあった。
小学生らしい、スポーツのできる子、とか、誰とでも仲良くなれるクラスのムードメーカー的存在の子、とかに恋していたわけではなくて。
私はなぜか昔から、大人びた考えをもっている子供だったらしい。私が好きになる子は必ず、クラスの隅っこで一人ぽつんと読書しているような子だったり、無理して笑顔を見せているような子だったり。
そんな子ばかり私は好きになっていた。
「すまないのだよ」
「ううん、こちらこそ。私のももってもらっちゃって」
「いや、俺のせいなのだから、当たり前だ」
「そっか、いや、ありがとね」
放課後、担任の先生にたのまれた仕事。進路の資料を職員室までクラス全員分コピーしてもってきてくれと言われた。
そんなの自分でやれといったが、今から会議でできない、と言われてしまい、仕方なしに私は友達を先に帰らせて英単語を覚えながらコピーしていた。
その時、告白をされている男子をわずかにあいてるコピー室の扉の隙間から見つけた。いつ誰がくるかわからない廊下でよく告白できるな。
告白してる子は学年でもかわいい子ランキングなるものの上位にはいる女子で、告白されてる男子はあの男子バスケ部のレギュラーの緑間真太郎だった。
その女子の告白があまりにもすさまじいくらいの積極ぶりだったので、緑間君もたじたじになりつつも断っていた。
見てるこっちもたじたじだった。
「悪いが、今は恋愛には興味がないのだよ」
「...じゃあ、キス、して。そしたら、あきらめるから」
なんて、中学生がいうことか?むしろ中学生だからいうのかもしれないな、と私は思った。
そんなことを言われてしまった緑間君はどう断ろうか考えているようだった。黙ったら、キスしてくれるんだと女子は思っちゃうものなのに。
仕方ない。こうやって自分から突っ込んでいく癖はどうにかしないとな、と私は心の隅っこで思いながら、コピー室のドアを全開にした。
「....!!」
私がコピー室を全開にしたことにびっくりしたのか、その女子はそそくさと去っていった。
何も言わないで去っていくとは、礼儀のなっていない子だ。
そして、私が助けたのだということに気付いた緑間君は素直に私に礼を言い、コピーした資料を一緒に職員室まで持ってきてくれた。そして、冒頭に戻る。
「それじゃ、部活頑張ってね」
「あぁ。そういえば、お前の名前は?」
体育館へと続くところまできたところで、私は玄関へ行こうと足を緑間君とは別の方へと向けた。
「一堂馨だよ。まぁ卒業まであと半年くらいだけど、よろしくね、緑間君」
「あぁ。よろしく、一堂。俺の名前は知っていたのだな」
「まぁね。バスケ部レギュラーでしょ?有名人じゃん。これからも頑張って」
「ありがとうなのだよ」
そういって、緑間君はメガネをくいっと指で押し上げると体育館へと歩いていった。
私はそんな彼の後姿を見つめて、鞄を背負いなおしてから玄関の方へと歩き出した。
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