06
相葉夏生という女子生徒がいる。
そいつとは一年の頃からの関係で、赤司と三人でよく一緒にいた。
見た目に反してとても賢い女で、一緒にいて退屈をしない。
最初こそ、軽蔑の意さえ感じていた。
化粧をしているわけではないが、スカートを短く折り(決してギャルのような出で立ちではないが)、真夏日にはブラウスを第二ボタンまで開ける始末。そしてよく青峰と下品な話しで盛り上がったりなど。
今でこそそれがあいつなのだと受け入れることはできるが、最初は品のないヤツだ、と思っていた。
だが、実際はどうだ。
努力を怠らずに常に学年上位にいる。赤司は不動の一位だが、二位と三位は毎回俺たちで争っている。
将棋も、赤司は不動だが、俺と相葉でやると、勝ったり負けたりの繰り返しで、未だ50勝50敗の引き分けだ。
1年の頃から推薦で生徒会に入り、三年の今は生徒会長を担っている。人望も厚い。自慢の友人だ。
「緑間?」
「相葉か」
生徒の代表である地位である生徒会長という名に恥じない、常に生徒の事をかんがえている姿は、どんなに時間が経っても尊敬できる部分だ。
「もう8時過ぎだが?」
「生徒会だよ、生徒会。最近ある女子生徒の行動が目に余ってね」
いつもの様に部活を終え、忘れ物に気付いた俺は教室にきた。
真っ暗な廊下には一つの部屋だけあかりがついていて、そこが生徒会室なのだと分かった。
そこから、膝掛けを肩に掛けて欠伸をしながら相葉が出て来た。
「愛川か...」
「ま、そんな感じ。でも、その子については私だけで、生徒会としては違う仕事してるんだけどね」
中から鞄を背負った生徒が数人出て来た。
「先輩、本当に先に帰っていいんですか..?」
「いいって。生徒は8時に帰んなきゃダメだって言ってんでしょ」
「それを言うならお前もだが?」
「私はいいの、生徒会長だから」
「なんだその屁理屈は」
困った笑みを浮かべながら下の学年であろう女子生徒、男子生徒が言う。
同じ学年の副会長も困ったように口を開いた。
「でも、まだ俺達残れるぜ?」
「いいって。早く帰りな」
「じゃぁ、仕事、持ってかえります」
「私も」
そう言って全員が手にしていたのは何十枚もの資料。
それでも、ちらりと見えた生徒会室の中にはまだまだ紙が大量に積み重なっていた。
「..じゃぁ、任せたよ」
「お前もできるだけ早く帰れよ」
「はいはい」
「それじゃあな。緑間も」
「あぁ」
全員が生徒会長である相葉に頭を下げて帰っていったのを未計り、相葉は腕をのばす。
静かな廊下に彼女の首をならす音が聞こえた。
「じゃあ、あともうちょいやってくから。緑間も早く帰りなよー」
「お前もな」
「はいはい。じゃあ、また明日」
「あぁ」
俺は鞄を持ち直し、生徒会室に入って行く相葉を見送る。
完全にドアがしまったのを見て、俺は階段の方へと足を向けた。
全校生徒から慕われていて、教師からも慕われている。俺達バスケ部もいつも彼女には助けられて来た。
今回の愛川の件だって、不思議な事がたくさんで、俺達でどうにかしなきゃいけないという事も分かっているのだが。
明日、もう一度赤司に相談しよう、と心の中で決め、俺は帰路についた。
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