「…」
「ちょ、ちょっと、話は最後まで聞いて!」
言い方を間違えた自覚はある。また個室に戻って扉を閉めようとしたハーマイオニーを慌てて引き止めて続けた。
「でもハーマイオニーは毎朝わたしのこと起こしてくれるし、大広間まで一緒に行ってくれる。まだ知り合ってそんなに長い間一緒にいるわけじゃないけど、ハーマイオニーの優しいところ、わたしはちゃんと知ってるよ」
「それは…あなたのせいで寮が減点されない為よ」
そっぽを向いて反論するハーマイオニー。そう言うと思ったよ。わたしは苦笑して続けた。
「でもわたしは感謝してるんだよ。あなたが浮遊呪文を成功させたのもそうするって自信があったのも、ちゃんと予習して、努力したからでしょ? わたし、ハーマイオニーのこと尊敬してるの。呪文がすぐできるからじゃなくて、そのための努力をちゃんとするから。それに…」
わたしはもうあなたと友達だと思ってたんだけどな。
そう言うと、ハーマイオニーは今度はしっかりとわたしを見た。驚いた顔は少し赤くなっていて、「でも、」とか「だって、」を繰り返している。めっちゃ照れてる。
そもそもわたしが今ここにいるのはハリー達を助けるためじゃない。純粋にハーマイオニーの事が心配だったからだ。大丈夫って知ってても、やっぱり気になる。わたしになにか出来ることがあるならしてあげたいし、声をかけたい。そういうことを思うのって、友達だからだと思うんだよね。
「わたし達、友達じゃなかった? わたし自意識過剰だった?」
「そんなことないわ! その…ありがとう、ナマエ。わたしたちは友達よ」
「良かったあー。それじゃ、戻る前に目を冷やそう。ローブで擦ったでしょ、腫れちゃうよ」
「え、ええ…」
ローブからハンカチを取り出して水に浸す。ハーマイオニーの目に当てようとしたところで、なんだかとっても嫌な臭いがした。
中二病じゃないから、比喩じゃなくて本当に嫌な臭いがしたんだよ!
「うわ…」
臭いの元を辿ると、扉の前に汚い緑色をした巨大な生き物(生き物だよね、生きてるよね?)が立っていた。手には大きな棍棒のようなものを握っている。トロール、ですよね。どうもこんにちは。
「あの、ここ、女子トイレですよ。男性用は向かいの扉です」
なんて言ってみたけど、これが用を足しにここに来たわけじゃないことくらい馬鹿でもわかる。な、なんとかしなきゃ。必死に考えるわたしの向こうから、ガチャンという音がした。…なんだって?
すばやく扉を見ると、扉は何故かしっかり閉まっていた。今の音はきっと鍵をかけた音だろう。なんてこった! わたしは魔法族じゃないけどあえて言わせてもらうよ、『マーリンの髭!』
「…ハーマイオニー」
声をかけると、ハーマイオニーはあわてて個室へ逃げ込んだ。トロールは大きな棍棒を振りかぶる。わたしは咄嗟にしゃがんで避けたけど、棍棒は個室の壁をなぎ倒していった。
「キャー!」
「ハーマイオニー!」
ハーマイオニーに駆け寄って手を握ると、ぎゅっと握り返された。どうしよう、どうにかして逃げ出さなきゃ。焦ってなんの考えも浮かんでこないわたしたちに、声が聞こえた。
「ハーマイオニー!」
「ハリー! ロン!」
「ナマエ!? どうして…」
「いいから、とにかくこっちに引き付けるんだ!」
ああすごい、今わたし、ハリーとロンが救世主に見える。
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