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トロールはまだわたし達を狙っているらしかった。右腕を大きく振りかぶる。わたしは咄嗟に杖を取り出した。

「プロテゴ!」

ハーマイオニーを背中に庇いながら、トロールの棍棒をなんとか盾で受け止めた。先輩が最初に教えてくれた呪文が盾の呪文で、本当に良かった…。

「ハーマイオニー、立って、扉へ走るの!」

ハリーとロンがトロールの気を引いてくれるうちに早くここから脱出しなくては。ハーマイオニーに呼びかけるけど、彼女は壁にぴったりとくっついたまま動かない。

「ダメだわナマエ、私…」
「ダメでもなんでもいいから立って、走って!」

トロールはハリーとロンの声に逆上したようだった。ロンに向かって棍棒を振るおうとする。咄嗟にハリーがトロールにとびかかり、自分の杖をトロールの鼻に突き刺した。痛みに驚いたトロールは頭をブンブン振って、ハリーを振り下ろそうとしている。

「ハリー! ロン、ハリーを助けて!」
「わかってるよ!」

ロンは杖を取り出した。ぴったりとトロールに狙いを定めて、呪文を唱えた。

「ウィンガーディアム レビオーサ!」

ロンの浮遊呪文は成功して、トロールの棍棒はふわりと浮いた後、空中を一回転してトロールの頭にすさまじい音を立てて落下した。トロールは気を失ったのか、うつ伏せで倒れている。す、すごい…。

「これ…死んだの?」
「まさか。気を失ってるだけだと思うよ」

トロールの鼻につっこまれたハリーの杖は、ねばねばした液体がべったりとくっついている。汚い…。ハリーはそれをトロールのズボンで拭って(それも綺麗とは思えないんだけど)ローブにしまった。
さて、この惨状をどうしたものか。個室の壁はなぎ倒され、洗面台はバラバラにされ、あちこちに瓦礫が落ちている。おまけに入り口にはトロール。これはわたし達でどうにかできるものじゃない。先生を呼びに行くべきかな…なんて考えていたら、扉から音がして、先生達が入ってきた。

「いったい全体、あなた方はどういうつもりなんですか」

マクゴナガル先生の声は怒りで震えている。わたし達は途端に縮こまった。ロンはまだ杖を構えたままだ。これはどんな言い訳も思いつきそうもない。わたしはそっと目を閉じた。きっとなるようになるでしょ。

「殺されなかったのは運が良かった。寮にいるべきあなた方がどうしてここにいるんですか?」

マクゴナガル先生の言うことは尤もである。まあわたしとしては、ハーマイオニーと大広間に戻ろうとしたらトロールがやってきたんだから不可抗力なんだけどさ。そんなこと説明したところで、じゃあハリーとロンは? ってなっちゃうし。黙ってよう。そう思って口を閉じている私の隣で、ハーマイオニーの小さな声が響いた。

「マクゴナガル先生。聞いてください――2人とも、私達を探しに来たんです」

2人? 私達?
ハーマイオニーが何を言ってるのか良くわからなくて、わたしはぽかんと口をあけてしまった。

「私がトロールを探しに来たんです。私、一人でやっつけれると思いました。…本で読んで、トロールについてはいろんなことを知っていたので。ナマエは私を止めたんですけど、私がどうしてもって連れてきてしまって…」

ロンが杖を落とす音が聞こえた。あのハーマイオニーが先生に嘘を吐いているのだ、驚かないわけがない。特にロンは、彼女の真面目すぎる性格とぶつかってケンカしてしまったばかりなわけだし。
その後、ハーマイオニーは最後まで嘘を突き通した結果グリフィンドールから5点減点されてしまった。がっくりと項垂れるハーマイオニーの肩に手を置く。何て言葉をかけて良いのか、さっぱりわかんないや。

「ミス・ミョウジ。友達を思うなら最初にすべきことが何なのかわかっていたでしょう」
「…はい、ハーマイオニーの手を振りほどいてでも先生を呼びに行くべきでした」
「その通りです。しかし今回、貴女の存在がミス・グレンジャーを助けたのでしょう。その優しさに、グリフィンドールに5点あげます。さあ、怪我がないなら寮へお戻りなさい」

まさか点数が貰えると思ってなかったわたしはびっくりして、あわててマクゴナガル先生にお礼を言ってからハーマイオニーの手を引いて寮へ戻った。ハーマイオニーは今にも泣き出しそうな顔をしている。無理もないよね、せっかくさっき泣き止んだのになあ…。

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