スリザリンとの合同授業なんて、ロクなことが起こるわけがない。わたしは呪文の練習に付き合ってもらっているハウンド先輩に零した。というかそもそも、わたしって箒に乗れるの?
杖から盾が出ても、自分が箒に乗って空を飛んでいるところはちっとも想像できなかった。
「ミョウジだって魔法使いの端くれなら空ぐらい飛べるさ。箒に乗れない魔法使いなんて居ない」
「でももしかしたらわたしがその第一人者になるかも…」
先輩は馬鹿にしたように笑いながら言った。たしかに箒に乗れない魔法使いなんて居なさそうだけど、今まで居ないからってこれからも居ないとは限らない。わたしがその最初の人になる可能性だって、ないわけじゃない。
「飛ぶと思えば飛ぶ。箒は飛ぶものだ」
いや、掃除をするためのものです。…なんて口が裂けても言えないので、わたしは「わかりました」と少し適当に返事をした。飛ぶと思えば飛ぶ、ねえ…。
「そんなに心配なら、今から練習すればいい」
「へっ」
先輩が言うと、目の前に箒が現れた。ぽかんとするわたしに、先輩は「アホ面を晒すな」と言って箒を手渡す。練習って、ここでするの?
「最初の授業なんて大して飛ばない。この中で十分だ」
「なるほど…」
「まず箒をそばに置くんだ。手をかざして『上がれ』と言って、箒を上げてみろ」
「はい!」
それから先輩による箒の特訓は続いた。先輩って、なんだかんだで面倒見がいいよね。呪文の練習だけじゃなくて、こうして箒の練習にも付き合ってくれる。
何とか箒に跨って少し浮くことができるようになったわたしは、飛行訓練の授業に対する不安はなくなっていた。…まあ、スリザリンと合同授業って言う点では不安しかないんだけどね。
「上がれ! ったい、何すんの!」
「ナマエ、すごいじゃないか。…箒に怒るなよ、君がちゃんとキャッチしないのがいけないんだろ」
隣でロンが箒に手をかざしながら言う。わたしの箒はわたしの言葉に反応して上がってきたけど、思いっきりおでこにぶつかってきたのだ。痛い。
とにかく一発で上がってきてくれた箒に感謝だ。まだ箒が地面に転がったままの生徒は何人かいる。
「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、二メートルぐらい浮上して、それから少し前かがみになって直ぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ。一、二の――」
箒に跨ってマダム・フーチの笛の合図を待っていたら、周りがざわめき出した。ネビルが合図を待たずに、箒を高く浮かべてしまったのだ。
「ネビルー!」
そしてネビルは箒から落ちてしまった。おそらく5,6メートルはあった。ネビルが地面に落ちた瞬間、ボキリと嫌な音がした。ネビルの箒はそのままどこかへ飛んでいってしまった。
「手首が折れているわ」
「ひえーっ」
わたしは慌てて手首を押さえた。隣でロンが「ナマエの手首じゃないだろ」と呆れたように言ったけど、そういうことじゃない。ネビル、大丈夫かなあ…。
初めての飛行訓練の授業はその後、マルフォイとハリーが箒で対決してハリーがマクゴナガル先生に連れて行かれて終わった。あんなに練習したのに、無駄になっちゃった…。
← →