ハウンド先輩は読んでいた本から目を逸らさずに言った。出来るようにとは、つまり『とりあえず呪文を唱えてマトモな盾を出すこと』なんだけど、彼に教わり始めてからまだ1週間しか経ってない。しかも一昨日ようやくちゃんとした大きさの盾っぽい何かが(もちろん呪文を唱えて)出せるようになったところだっていうのに、この人は気が早すぎるんじゃないかな。
「まだです…」
「もう1週間も経つのに?」
ようやく本から視線をこちらに向けた先輩が言う。この人今、「もう1週間」とか言った?
もしかしなくてもこの先輩は自分が優秀だからって、他人も同じくらいだとか思ってるんじゃない?
そもそもわたしは(多分きっとおそらく)マグル出身で、正直自分の杖からなんか白いものがもやっと出てきただけでも感動もんなのに!
じとりと先輩を見つめると、彼は杖を一振した。彼を守るように、盾が現れる。
「僕はこれに1週間もかからなかった」
「はいはい左様でございますか、大変優秀でいらっしまいますね」
フン、と満足そうに鼻を鳴らした先輩は杖をしまって再び本を読み出した。まあでも確かにあれから1週間、毎日暇な時間をこうやってわたしの呪文の練習に付き合ってくれてる先輩のためにも早いところちゃんとした、盾くらい出せるようになりたい。
「……プロテゴ!」
意識を集中させて杖を振ると、ちょうど自分と同じくらいの大きさの半透明の盾のようなものが現れた。つ、ついに!
感動すると直ぐに盾は消えちゃったけど、出来たことに変わりない。本当に無言で魔法って使えるんだ、すごい…。
「できた、できました! ちゃんとした盾、出るようになりましたよ!」
「そう。じゃあこれ防いでみて」
「えっ」
ぴょんぴょん飛び跳ねてると、こちらを見たハウンド先輩が意地悪そうに笑いながら杖を振った。上から降ってくる水。呆然とするわたし。びしょ濡れになるわたし。カラン、と音を立てて床に落ちる杖。殊更楽しそうに笑うハウンド先輩。
「い、いきなり何するんですか!」
「盾くらい咄嗟に出せなくてどうするんだ。決闘の時だって、相手は『今から水を降らせます』なんて言わないだろう。いきなりのことに対応できるようにならなきゃ、無言で盾が出せるようになったとしたって意味はない」
「ぐぬぬ…」
確かにハウンド先輩の言う通りなんだけどさ。でもだからって、もう少し呪文が成功した喜びに浸らせてくれたっていいのに。
笑いながら杖を一振りした先輩はわたしの身体の水分を飛ばしてくれた。
「明日からは実戦形式にしようか」
「が、がんばります…」
わたしの答えに、ハウンド先輩は満足そうに頷いた。
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