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この世界は、平和ボケした現代社会に生きる日本人には厳しすぎる。
まず日本じゃない。文化が違う。時代が違う。さらに言うと世界まで違う。ありえない…。

とにかくわたしが平穏無事に生き延びて、家族に見守られながら老衰で眠るように死ぬためには極力『死亡フラグを回避すること』が大切なのである。
ようするに、『かかわらない』こと。
モブAどころじゃない、エキストラにもならない、テレビや小説なんかに描かれることのない存在。そういうものになるしかない。
同じ寮のハリーたちやウィーズリー先輩たちはもちろんのこと、スネイプ先生やマクゴナガル先生などもあんまり関わらないように。校長なんてもってのほかだ、平和万歳。
わたしはこれからの学生生活を平和に生き抜くため、そう心に固く誓った。




「ここisどこ…」

一番最初の授業はマクゴナガル先生の変身術だった。あの先生は時間に厳しいし、遅れないように朝食を一瞬で終わらせて大広間を出たまではよかった。ただ途中でトイレに行きたくなったのがいけない。トイレを探してウロウロした結果、完璧に、道に迷ったのである。この学校広すぎ! いや、城なんだから当たり前なんだけどさあ。
まだ皆朝食を摂っている時間だからか、とにかく人がいない。ゴーストだって見当たらないし、この辺は絵画もかかってない。つ、詰んだ…。

「そもそも変身術の教室って何処だろう…」

焦って冷や汗が出てきた。やばい、本当に。こんなことなら1年生の子たちの波に乗っていくんだった。やる気なんて出すんじゃなかった…。

「どうしたの?」

教科書を片手にがっくり項垂れていると、声がかけられた。顔を上げると、男の人が立っている。ネクタイは黄色、ハッフルパフの生徒だ。

「あの、その、お恥ずかしい話なんですが…」
「もしかして道に迷ったとか」
「そ、その通りです…」

男の人はわたしの手にある教科書を見て「そうだろうと思ったよ。変身術の教室はこの辺じゃないからね」と笑った。実に爽やかな笑顔だ、マイナスイオンを感じる。

「案内してあげるよ。着いてきて」
「ありがとうございます!!!」

どうやら彼は先輩らしい。さっき通った道や素通りした角をすいすいと歩き、階段を降り、ひとつの教室の前で立ち止まった。ここが変身術の教室らしい。

「はい、ここだよ」
「ありがとうございます! あのままだったらわたし、絶対授業に間に合いませんでした。あ、わたし1年生のナマエです。ナマエ・ミョウジ。本当にありがとうございました!」
「1年生のうちはみんなそうだよ。僕はセドリック・ディゴリー。また困ったことがあったら言ってね」
「はい!」

セドリック先輩は「それじゃあ、授業がんばってね」と言い残して颯爽と歩いていった。かっこいい…。


名前のあるキャラクターたちには極力関わらないで、原作を壊さない。
そう決意したのが昨日の夕飯のとき。その決意は、早くもぐしゃぐしゃにしてゴミ箱にポイしたあとゴミ箱ごと燃やされてしまったのである。

あんな優しくてかっこいい先輩が死んじゃう未来なんて、許せないからね!

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