03


どうして僕がそんなことをする必要があるのかと散々渋る先輩をなんとか説得して(先輩が卒業するまでの間、何でも言うこと聞きますから!)、わたしは先輩に魔法を教えてもらうことを約束してもらった。

「わたしはナマエ・ミョウジといいます。知っての通りグリフィンドールの1年生で、日本からやってきたマグル出身(仮)です!」
「…僕はレグルス・ハウンド。スリザリンの3年生だ」
「ハウンド先輩ですね。よろしくお願いします!」

にっこり笑って手を差し出すと、ハウンド先輩はかなり嫌そうな顔をしたけどちゃんと握手してくれた。なんだ、結構いい人じゃんか。ところでレグルスって何だっけ、どっかで聞いたことあるような気がするんだけど。こんなときスマホが手元にあったらすぐに検索するのになあ。

「それで、ミョウジは何を覚えたいんだ」
「何って…えーっと、闇の魔術、」
「は?」

言いかけただけなのにすごい顔で睨まれたし『お前はバカなのか』って顔に書いてある! すごい! まだセリフの途中なのに! 慌てて顔の前で両手をパタパタさせて、誤解を解く。

「どんな闇の魔術にも対抗できるようになりたいです。防御も、攻撃も。できればあと2年か3年のうちに」
「…2年か3年で?」

前半を聞いたハウンド先輩はなるほど、と頷いたけど、後半を聞いた途端グレーの瞳が細められた。な、なんか怒ってる、ような? どうしてって聞かれても、3年のうちに吸魂鬼がホグワーツに配属されるし、それまでに守護霊くらい作れるようになりたいし。
2年生だって、マグル出身のわたしが無事にいられるとは到底思えない。だからあと2年か3年のうちにわたしは闇の魔術に十分対抗できるようにならなくちゃいけない。
けどそんなこと言えないしなあ〜…どうしようかなあ〜…。って思ってるうちに、ハウンド先輩の顔はみるみる険しくなっていく。辛い。

「わたしが3年生になる前に…どうしても守護霊が作りたくて…?」
「どうして?」

どうして!? こんなに詳しく聞かれたら正直困る。けど、まあ確かに不思議だよね。卒業じゃなくて、3年生になるまでになんて。えー、でも正直なこと言ったところできっと信じてもらえないどころか、『やっぱりグリフィンドール生は頭がおかしい』とか思われる可能性が大きい。うんうん唸ってみたけど、結局いい案なんて出て気やしなかった。

「…ナイショです」

誤魔化すように手を振ると、ハウンド先輩は呆れたような顔をした。

「いつか、話せるときが来たらもしかしたらお話しするかもです!」
「別にいい」

冷たい。ハウンド先輩は直ぐに「そんなことより、最初の呪文だ」と話を切り替えた。

「最初は盾の呪文から練習するのがいいだろう」
「盾の呪文かー、なんだかそれっぽいですね!」
「無言で出せるようになるんだ」
「へっ!?」

この人今何言った? 無言呪文って、そんなの簡単にできるもんじゃないでしょ?
おいおい冗談だろ、って思って見てみたけど彼は立ち上がって杖を持っている。なんだろう、「冗談だよ」とか言いそうな雰囲気じゃないぞ?

「早く立って」
「は、はい!」

そのままハウンド先輩に促されて、わたしはひたすら盾を作り出す練習をした。

それからわかったことだけど、このヒョロヒョロのもやしみたいな見た目をしたハウンド先輩は実は結構スパルタだった。(発音が違う)(振りが大きい)(君には学習能力がないのか?)

← →