02
「なんだ、やっぱりなまえちゃんの勘違いじゃん!」
「いや、あれはもう勘違いしても仕方ないと思うんですよ」
ぶつぶついいながらニンジンを切る。隣で友達は笑いながらジャガイモの芽をとっている。結局今住んでるところは追い出されずに済みそうだって話したらこの反応である。なんか解せぬ。
「でも良かったよ、なまえちゃんが家なき子にならなくて」
「ホントですよ〜。そしたら養ってって言おうとしてたのに」
「ゴメン、オレにはダーリンがいるから…」
「はいはい」
冗談を言いつつ、2人で作業をするのは楽しい。泊まりにくるのは久々だし、尚更。
鍋にふたをして、火が通るまで座って待つことにした。
「なまえちゃんは彼氏いないの?」
「居たらこんなとこに来てません」
「こんなとこってひどい!」
彼氏なんて居たら、寮を追い出されるってなったらまずそっちを頼るでしょ。そう言う意味で言ったのに、まあわざとだろうけど違う意味で捉えた彼は大袈裟に泣きまねをした。「はいはいすみませんでした」と言うと、「デザートはプリンじゃなきゃ許さない」と返ってきたので「お好きにどうぞ」と答える。彼は「やったね!」と両手を挙げた。
「なまえちゃん、彼氏作らないの?」
「何、今日はグイグイきますね。作らないんじゃなくてできないんですよ!」
わたしだって紡ちゃんみたいに可愛かったら彼氏の1人や2人できたかもしれないけど。生憎そういうこととはほぼ無縁な生活(ほぼ家から出ないし、出会いなんかあるわけないよね)をしていたので、彼氏? 何それおいしいの? 状態である。ちなみに友達の彼はなんかそういう対象として見たことがないからノーカンで。
そう考えると今日から寮にきた7人は新しい出会いってことになるんだろうけど…ないなー。
ひとりでうんうん頷いていると、何を思ったのか顔を覗きこまれた。
「うわっ!」
突然目の前に顔のどアップがあったら、たとえそれがイケメンのものだとしてもときめいたりできない。純粋にびっくりする。わたしは慌てて顔を引いた。
「なまえちゃんは確かに、出会いの問題だよね」
「え、ああ、そうですか…?」
「うん。なまえちゃんなら大丈夫だよ、オレが保障する!」
「はあ…どうも?」
そんなこと保障されても。別に今すぐほしいと思ってるわけじゃないしいいんだけどなあ。ちらりと時計を見て、そろそろ出来上がる頃だなあと思って立ち上がった。
「オレもいるしね」
「えっ…いってえ!」
言葉の意味がわからなくて振り返ろうとしたら、足が滑ってよろけた。踏ん張ろうとして思いっきり踏み出した右足の小指がテーブルの角にぶつかってメチャクチャ痛い。涙目になるわたしを、その元凶たる爆弾発言をかました彼はめちゃくちゃ面白そうに見ていた。
「あはは、痛そ〜」
「笑わないでくださいよ、百さん!」
睨んでみても効果はナシ。ゲラゲラ笑う彼は、テレビで見るトップアイドルの雰囲気とはまた違っていた。
…だから、笑いすぎ!