07
わたしは今、TRIGGERのライブ会場に向かって走っていた。その理由は、今から数時間前に遡る。
* * *
「おじゃましまーす。あれ、二階堂くんだけ?」
「おー、いらっしゃい」
早めに支度をして寮に足を運ぶと、リビングには寛ぐ二階堂くんしかいなかった。他の子はまだ来ていないらしい。
「ナギとタマが早く行きたいんだと。お兄さんはそれの付き添いってわけ」
「あーなるほどね、お疲れ様です」
わたしも早めに出たらタオルくらい買えるかな?
ここ数日七瀬からの猛プッシュにより、わたしはすっかりTRIGGERのファンになっていたりする。いや、さすが超人気アイドルだよ、顔だけじゃないよ、すごいよ。
「わたしもグッズ欲しいから早く行きたいし、ついてってもいいかな?」
「おーおー、来い来い。お守りすんのが1人増えても変わんねえよ」
「…」
なんでわたしがお守りされることになってんだ。二階堂くんとわたしは同い年のはずなんだけど?
そう思いつつ二階堂くんをじとりと見ていると、六弥と四葉がやって来た。
「お待たせしました。Oh、なまえも行くのですね!」
「やっほーあだな」
「はろー、今日はよろしくね」
じゃあ行くかー、と立ち上がった二階堂くんに続いて立ち上がり、玄関へ向かう。チケットは紡ちゃんが持ってるから忘れ物の心配はない。
他愛ない話をしながら会場に向かっている最中、ごはんを食べるかーという話になり、どこで食べるか話し合った結果、六弥と四葉の強い要望によりソライロタワーの中のカフェに寄ることになった。
「おー、これがソライロタワー」
「あだな来たことなかったんだな」
「そうだねー、わざわざ来ようと思ったことなかったし…って六弥?」
タワーの中に入ると、六弥は真っ直ぐお土産売り場へ向かった。慌てて追いかけると、六弥の目の前にはまじこなのグッズ。ああー、なるほどね。
じゃあ六弥は置いといて先に3人で食べに……て、四葉?
四葉はご土地王様プリンの前で嬉しそうにグッズを物色していた。王様プリン好きだもんね、なんとなく予想はついてたよ……。
「じゃあ俺となまえは先に店入ってるから」
「ごゆっくり〜」
声をかけると、2人は「おう!」「ラジャー」とそれぞれ返事をしたので、わたしたちは店へ向かった。
「それにしても、何でお前さんはあの寮に住んでるんだ?」
「んー?」
出されたおお絞りで手を拭いていると、お冷を飲んだ二階堂くんが尋ねてきた。
「そういう二階堂くんは、どうしてアイドルしようと思ったの?」
「……俺は復讐」
「復讐?」
普通に生きてたらおよそ聞くことはないだろう単語に反応が遅れた。きょとんとするわたしに、二階堂くんは「冗談だよ」と笑う。
いやー、なんか、冗談には聞こえなかったんですけど……。
「で、そっちはどうなんだよ」
「んー…わたしはね、」
「お待たせしました!」
「あ、おかえりー」
話始めようとしたら六弥が手を振ってやって来た。手にはお土産コーナーの袋。隣の四葉も満足気な顔だ。
2人が来たことで先ほどの話題は流れた。別に聞かれて困る内容でもないけど、人に話すほど面白い内容でもないし。
席についた2人と一緒にメニューを眺めながら、やっぱりさっきの二階堂くんの言葉は嘘じゃないよなあって、あのときの二階堂くんの目が頭から離れなかった。