「うみ??」
「そう!お兄ちゃんがライフセイバーやってる先輩のお手伝いに行くから、じゃぁ私たちは泳ぎに行こうかなって!」
「他校のお友達も誘ってるんだけど、良かったら香夏子ちゃんも一緒に行かない?」という誘いを京子から受けたのがつい先日の話。
家に帰り剛に「行って来てもいいですか?」と聞いたところ「せっかくだから楽しんでおいで!」と海へ遊びに行くことを快く承諾してもらえた。
スクール水着しか持っていなかったものの、「じゃぁ今度のお休みにみんなで買いに行こう!」という京子の提案により真新しい水着を購入できた。
買い物の際に他校の友達だという三浦ハルとも仲良くなり、友達になれた証として三人でお揃いのブレスレットを購入するなどをして海に行く日を楽しみにしていたのだが――。
「……――や、やっぱり私上に何か羽織ろうかな」
「えー!?なんでですか!?せっかくビキニ着てるのに!」
「いやでも私ぜんぜん似合ってないし……!」
「そんなことないよ!香夏子ちゃんすごくスタイルいいもん!」
「京子ちゃんの言う通りです!」
海水浴場に設置された女子更衣室にて。
いざ着替えてみたのは良かったが人生で初めてビキニというものを着た香夏子にとってその着心地と想像以上の露出度の高さに羞恥がこみ上げてきた。
京子もハルもすでに着替え終えているようで、雑誌のモデル並に可愛くてスタイル抜群な二人と並んで歩ける自信はなく。
友人と行く初めての海水浴にテンションが上がってしまい、その場のノリでビキニを選んでしまったことを今さらながら心底後悔するが二人はそうは思っていないようで。
「ビキニなんだから見せてなんぼだよ香夏子ちゃん!」
「そうです!男子連中に見せるのがもったいないくらいです!」
「え、どっち?」
「とにかくです!隠すのはハルが許しません!」
「さぁ行きましょう!」とハルに手を引かれ、半ば強引に更衣室を出ることとなった。
シーズンともあって更衣室も混んでいたがビーチはさらに人で溢れている。
ハルと京子に挟まれる状態で歩いていれば男性のからの視線が集まってきていることに気づく。
それはやはり二人が可愛いからなんだろうと思うと急激に居たたまれなくなり出来るだけ顔を俯かせて歩いていると。
「あ、いたいた。ツナさ〜ん!」
ハルがツナの名を呼んだ瞬間、周りにいた男性たちが面白くなさそうな顔をして去って行った。
おそらくハルと京子をナンパするつもりだったが男子の知り合いがいるとわかって諦めたのだろう。
「着替えてきましたー」とハルから話しかけられているツナの後ろでレンタルしたパラソルを立てている山本と目が合いそのまま離せなくなってしまう。
互いにジーッと見つめ合う形になっており、夏の気温のせいではない別の理由で体温が上昇していくのがわかった。
「あ、あんまり見られるとひ、非常に恥ずかしいです……」
「なんか、いつもと雰囲気違うと思ってさ」
「み、水着だからでは……?」
「それもそっか!普段水着なんて着てねぇもんな!」
「う、うん……?」
香夏子を置いてけぼりにして一人納得している山本。
何故見つめられていたのかわからないままだが、山本の視線が離れていってくれただけで良しとしよう。
「笹川のアニキ泊まり込みで来てんだって?」
「うん……。ライフセイバーやってるセンパイの手伝いで来てるんだよ」
「へぇ。ライフセイバーなんて凄いね……」
「よく来たなお前達!」
監視用の高い椅子に座りながらやたらと大きい声で喋っているのが京子の兄で、横文字だらけのよくわからないことを言ってはいたが
ようはライフセイバーの見習いとして一夏を過ごすらしい。
「京子ちゃんとぜんぜん似てないんだな……」など失礼なことを考えていると了平がライフセイバー仲間を紹介してくれると言い、
真っ先に紹介されたパオパオ老子というのがどう見てもゾウの被り物をしたリボーンでしかも夏バテ気味らしく椅子の上でダレている。
「――――困るんだよね。ゴミ捨てられっと」
聞こえてきた声に視線を向ければ色黒でガラの悪い連中が「オレらの仕事ふえるっつーの?」と小さい子供相手に凄んでいて、その様子はどう見ても注意しているようには見えない。
むしろ脅しているかのような態度に山本や獄寺の目つきが変わる。
しかし了平はこのガラの悪い連中がライフセイバーの先輩なのだと言う。
その中のリーダーらしき男が京子に目をつけ「なかなかオレ好みかもしんない」と嫌らしい笑いを浮かべている。
香夏子が気味の悪い視線から逃れようと一歩下がったところ、スキンヘッドの先輩から肩を抱かれ悲鳴をあげそうになる。
どうやら京子やハルたちも同じ目にあっているようで、そのままどこかへ連れていかれそうになっていた。
「んじゃ――、女の子は一緒にあそんべ!」
「おまえらはしばらく海の平和を守ってくれや」
「ちょっ、まっ」
「待てよ」
「てめーらの仕事するスジはねぇぞ」
ガラの悪い連中――しかも年上だと言うのにも関わらず相手を睨みつける山本と獄寺。
ツナの「二人とも!」という制止も聞こえていないようだ。
「その通りだセンパイ!こいつらを呼んだのは遊ばせるためであって手伝わせるためではない!」
「わかんねーのか了平?」
「オレたちは可愛い後輩にライフセイバーの素晴らしさを知ってもらいたいんだ」
「なるほど」
「なるほどじゃねーだろ!」
「(お兄さん先輩たちに利用されてる――!)」
先輩たちに旨いこと丸め込まれ、ライフセイバーの仕事を押し付けれてしまいそうになるツナたち。
「だったら兄を手伝います!」「そーです!ハルたちはツナさんたちと泳ぎにきたんですから!」と京子とハルが言ったところ、先輩の矛先がツナへと向けられた。
ツナをバカにし始めた先輩相手に獄寺がキレてしまうが自分たちはライフセイバーだからケンカはパスだが三対三の泳ぎの勝負をしようと言われる。
その上負けた方は勝った方の下僕にならなければいけないという条件つき。
もちろんそんな勝負受けられるわけもなく香夏子を含めた皆が文句を言おうとするのだが。
「面白そーだな」
ダレていたはずのパオパオ老子――もといリボーンが物理的に全員黙らせてしまい勝負を受けなければいけなくなったのだった。
「何してくれてんだよお前!」
「勝ちゃぁいいだけのことだろ」
「そりゃそーだな。まぁいっか」
ルールは簡単で、向こうに見えている岩山の周りをぐるりと泳いで帰ってくるというもの。
第一泳者の山本とドレッドヘアの先輩が波打ち際に並び、いよいよ勝負が始まる。
「あの――、頑張ってね!」
「おう!」
咄嗟に声をかけてしまったが、振り返りグーサインを見せてくれた山本はスタートの合図が鳴らされたのと同時に海に向かって走っていく。
さすが野球部のエース。日々体を鍛えているだけあって海を知り尽くしているライフセイバーに負けを劣らずの泳ぎを見せている。
「おお!山本の方が早い!」
「よし!」
「すっごーい!」
「ファイトですー!」
「武君頑張れ――――!」
これなら勝てる。誰もがそう思っていたが岩山の影から泳いで出てきたのはドレッドヘアの先輩だけだった。
「あれ!?山本が帰って来ない!」
「どうしたんだろう……」
負けているというわけでもないようで、中々岩陰から姿を見せない山本を心配する声に対し「足でも攣って岩陰で休んでるんだろ?」と言う先輩。
それにしたって帰ってくるのが遅すぎる。山本であれば足が攣るくらいで長々と休憩するような体の鍛え方はしていないはずなのだ。
心臓がざわりとした嫌な感覚に襲われ、思わず両手を固く握りしめる。
ドレッドヘアの先輩が浜に帰ってきたことによって第二泳者がスタートする。
獄寺も岩山まではリードして泳いでいたが、やはり岩陰から出てきたのはスキンヘッドの先輩のみ。
「第二泳者も足攣ったか?」と白々しく言ってはいるが、おそらく先輩たちが何か悪だくみをしているに違いない。
三本勝負のうち二本先取で勝負が決まると言っていたのに次の勝負にツナが勝てばこっちの勝ちにしてくれるというのも怪しすぎる。
「奴らが心配だ!岩へ行ってくる!」
「そうだよお兄ちゃん!」
「わかんねー奴だな了平。今奴らは自然と語り合ってるんだ。邪魔すんな」
「なるほど」
「(洗脳されてんの――!?)」
一番先輩たちと話をつけられそうな了平がまったく役に立たず、結局ツナの番が来てしまう。
金髪のリーダー各の先輩とツナが半分ほど泳いだところで香夏子たちから離れたところから「誰か――!うちの子を助けて――!」と悲鳴にも近い声が聞こえてきた。
見れば沖合の方に小さな女の子が流されていっているようで、それをツナが助けに行く姿が見える。
見事女の子の下へたどり着いたツナがものすごい勢いで戻って来る姿に浜にいる誰もが歓喜の声をあげている。
思わず香夏子も京子やハルと「やったぁ!」と抱き合っていると。
「へっ。そーはいくか」
「岩の陰には後輩がたんまりいるんだ。ボコボコにしてやれ」
「後輩ってこいつらのことスか?」
残った先輩二人が気味の悪い笑いをしていたが、岩陰でボコボコにされていたはずの山本と獄寺が無傷で戻ってきた上に
岩陰で待ち構えていたらしい後輩を返り討ちにしていたようで、ボロボロになったガラの悪い連中が砂浜に転がされている。
もちろん、先輩たちへの報復も忘れていない二人だった。
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