「僕の態度が気に入らないのだろうね」

自身にこびりついた泥を手際よく洗い流し、名前が逃げるようとする度に飽きずに腰を引き寄せる。しつこい、と叫ぶ口はアーサーが身を清め終わった時点で負け惜しみと化した。名前が唯一身につけているショートパンツが邪魔なのか、了承も得ずいきなり引き摺り下ろそうとする動きを咄嗟に食い止める。

「君が理想とする男に当てはまらないのは申し訳なく思うよ」
「まッ、...すとっぷ...!」

しかし遅い。あれよあれよという間に太ももを滑り膝小僧から真下、地面へポトリと落ちたショートパンツが湯水を吸い色味を変えていく。それにしたって強引すぎるだろう、容赦のない所業に名前は羞恥心以上の驚愕に襲われた。

「だけど僕は、心の底から君に気持ちよくなってもらいたい」
「あん、た...。よくも、」
「セックスは優劣を競うものではない。互いに愛を確かめ合う大切な営みなんだ」

それはアーサーの価値観だ。そうでない人間だっている。押し付けるな、主張を込めて睨みつければ彼はやれ困ったように眉の端を下げる。聞き分けのない子供をどうやって説き伏せようか、苦心する親のようで腹立たしい。名前の保護者にでもなったつもりか。たった二回、出会っただけの男に彼女の何が分かるというのだろう。

「別にいいじゃない...。喜んでる奴だっているんだから」
「それは君のお客様のことかい」
「向こうは気持ちよくなって、私はお金がもらえて...それじゃ、いけないの?」

無意識の呟きは、名前の本心を如実に表しておりアーサーは追い討ちのために用意していた言葉をつぐむ。拗ねた口調の向こう側に揺らめく不安を見通して、彼は返事の代わりに、名前の頭を優しく撫で、俯き肩を震えさせる小さな背中を抱き込んだ。それからーーー

「名前、嘘はいけないよ」
「チッ...」

虎視眈々と浴室の扉を狙う手を咎める。この狭い空間では腕を伸ばすだけで簡単に取手口に届いてしまうのだから油断も隙も無い。作戦が失敗し、つまらなさそうな名前であったが、ふてぶてしい態度とは裏腹に自身が窮地に追い込まれているのは把握していた。胸や股を隠そうとする度にアーサーの手に阻まれるので面倒になって両手は大人しく脇に下げたものの、羞恥心は残っている。そのせいで派手な身動きが取れない。
 名前が壁側にいるのは決定事項なのか、アーサーにとって見えやすくなったであろう裸体は互いに等しい条件下にあるにも関わらず、自分だけが視姦されているようで落ち着かない。耳の裏に熱が集まっていきつつも顔にだけは出さないよう、注意を払っていた矢先のことだ。

 ガチャン、浴室にはそぐわない軽めの金属音が轟いて名前は首を傾げる。次に自身の左手首へ走る違和感に気づいて顔を向けた。なんだろうか、これは。黒い海苔のようなものがまとわりついている。明暗分かれた光沢感は紛れもない人工物の証であり、軽く手首を引っ張ってみると一定の距離から先自由に動かすことができない。名前からして左手、収納棚の隙間に彼女の手首と同じ形の黒物が巻かれており、両者を繋ぐこの銀のくさりは、

「(鎖!?)」

突然の展開に目を剥くのも仕方あるまい。なにせ手枷と呼ばれる類のアダルトグッズが知らぬ間に装着されていたのだから。このマニアックな流れはどこからやってきたのか動揺一色にガチャガチャと何度も腕を引いてみる。しかし対象者を自由にさせないのが拘束具の役目。名前は混乱のあまり、黒い輪の中から抜け出すことに躍起になって何故このような羽目に陥っているのか考えるのを忘れていた。

「...これは流石に、居た堪れないな」

余計なものを名前に仕掛けた張本にであるアーサーは、しみじみと背徳的な絵面に対する感想を述べながらそれでも手枷を外す気はない。名前の逃亡防止のためか、だとしてもこんな道具を使う必要はないだろう。

「もしかしてそういう趣味?」
「そこの浴槽に落ちていたよ。どうして風呂場にこんなものがあるのか、後で教えてくれるね」

質問に質問で返すのはマナー違反、彼くらいの男なら知っているだろう。のらりくらり名前の追従を避けたつもりだろうが、否定しない以上、アーサーの罪と性癖は確定となった。

「その"こんなもの"を使ったのはあんたでしょ。さっさと外しなさいよ」
「逃げないと誓ってくれるかい?」
「もっ...ちろん!さぁ、早く鍵を渡して」
「......、」

一直線に解錠を要求してくる名前へ、男は僅かに思案してから小さな鍵を風呂場の奥へと追いやってしまう。渾身の愛想を振る舞ったつもりだったが、その割には即決の判断だった。予想外の運びに「あれ?」と冷や汗が垂れ、崖っぷち一歩手前の状況に丸い瞳を瞬かせる。

「あーさー?」

無言のまま被さる影が、湿り気を帯びた彼女の髪を梳き片側の首筋を見えるよう仕向けた。元の輝きを取り戻した金の髪が埋まり、先程は舐めてあげられなかった反対の場所へ、ちろりと濡れた感触を遣わす。

「んッ...!」
「息を吸うように嘘をつく。困った子だ」

手枷一つで驚くほど自由な行動を制限されてしまった名前は、己よりもずっと体格の良いアーサーのしかけに腕一本で抗わなければならない。不利な状況が圧倒的に不利となっては、されるがままになってしまうのも仕方がないのでは。相手のやりたい放題なんて、こんな自分が本来なら許せないはずなのに、彼に触れられると途端に力が抜けてしまう。なんと情けない体だろうか。

「縛りつけるつもりはなかったのだが、仕方がないね。痛みを感じたら教えてくれ」
「も、もう、痛い...から」
「例えばそう、...君から欲しいと強請ってくれるとか」
「そんな!...言うわけな、ぃッ」

ぴちゃり、飽きずに耳孔へと潜り込んできた舌がわざとなのか、生々しい音を立て始める。中の形をなぞりながら器用に這い回るおかげで嫌というほど聴覚を刺激してきた。泣きたくなるほど恥ずかしい。そんな場所は汚いから舐めるな、文句を言おうにもはしたない声を抑えるの精一杯で。アーサーの腕に抗うはずが、気がつけば彼の二の腕にしがみつくような姿勢をとっていることを名前は知らない。てっきりくすぐったいだけの部位は孔の縁を撫でられる度にゾクゾクと背筋をほとばしる痺れとなって返ってきた。

「あ、...は、ッ...ふ」
「気持ちいい?」

首を振る。たかが耳と首筋。舐められたところで、痒くなるだけだ。思い込んでしまえばいい。眉を寄せ合って険しい表情を崩そうとしない名前であったが、その頬にうっすら走る赤味を目にしてアーサーは、フッと薄い息を吐いた。自身の軌跡を辿り、静かに指先を下ろしていく。鎖骨の延長、胸の谷間を通り過ぎてから向きを変えて触れてはいけない膨らみの中心へ幾度も円を描き、耳責めにより興奮の兆しを見せる突起を爪先が軽く弾いた。

「は、ぅッ...っく!」

悪戯心の垣間見える動きとは裏腹に肌に触れる手はどこまでも優しくて名前にはアーサーが何を企んでいるのかさっぱりだ。背中から首筋と耳にかけてねちっこい責めを受けていたせいだろうか、指先の些細な動きに露骨な反応を返してしまう。

「我慢しなくともいいのに」
「や、ぁ...ッ、ひぅ!...うぁ、」

乳房を包み込むように抱き、長い指を使って揉みあげていく。自分のためではなく名前のために、アーサーはマッサージのプロにでもなりきったつもりで、どこまでも丁寧にときほぐす。胸の付け根を撫で上げてから次第に蕾の中心へ、きめ細かい肌を手の甲で擦り、次の瞬間やや強めの力で乳房全体を絞りあげる。ぎゅうっと指を食い込まされて潰れた胸に痛みなどない。乳首には決して触れないようにしている男の触り方がもどかしくなりつつあると、胸肉を柔らかく調理するように回して、寄せて、揺すって名前はその度に瞳を少しづつとろけさせていく。半開きになった口から我慢できずに短い嬌声が上がり始めるのも時間の問題であった。

「し、しつ、こぃ、ぁ…っ、」
「ではお許しをいただけますか、レディ?」

ふざけた言い回しに腹を立てる余裕もない。一見下手に出ているように映るアーサーの態度は、名前が限界と見越しているからこそ。その気がなかった彼女に自分から欲しいと言わせることがどれだけ重要なのか彼は知っている。二度目の触れ合いにして慣れたもので、名前の耳骨辺りをねぶりながら問いかける、嫌なやり口を発揮してみせた。

「ふ、う…はっ、あぁ、ンン」

アーサーの指先が乳輪周りを周回する。挑発するような動きであったが怒りはなく、代わりに物足りなさが名前を心へなだれこんできた。

「(おかしい、体が熱い…)」

苦しげな息を吐き出しながら名前は自身の体の変化を刻々と実感していた。いつもより昂っている。感じやすい、と言い換えるべきか。アーサーが触れてくる場所全てが、熱を灯して脳内を麻痺させていく。まだ一番大切なところを触らせてもいないのに、名前は疼きの止まらない体の奥、その入り口がじゅくりと香り立つのを認めつつあった。

「あー、さッ…、ねぇ、こ、れ...へん!」
「ふふ、ごめんよ。いじめ過ぎたね」

謝っている割に喜色の隠せていないアーサーの指がキュッと名前の両端を同時につまむ。酷く敏感なそこを無遠慮ひねられてガクンっと名前は思わず仰け反った。アーサーは彼女に心の準備をさせる隙を与えず、貪欲に体を開発させていく。理性を剥ぎ取るための材料は基本は優しく丁寧であること。それからほんの少しの意地悪。
 今度は徹底して名前の乳首をいじめる腹積もりなのか、これまでの緩やかな愛撫ではどこかへ飛んで行き、熱を帯びて苦しそうに張るそこを転がしてはつまんで、仕上げに弾く。名前はおびただしい快感の情報量に耐えきれず、動かせる範囲で腕や腰を必死にのたつかせるが、やはり片腕が自由にならないのと元々巧みな舌使いに翻弄されていた体ではどうにもならない。哀れな右手だけがアーサーの胸板を必死に押し返そうとするものの、彼も興奮してきたのか名前の手を軽く避けて真っ赤に熟れた果実に引き寄せられるように吸いつく。

「ひゃあッ?!はっ、ふぅ…ン、っひ」
「ん、…はッ…やっぱり敏感だな」

泣きそうに喘ぐ女の様子を伺いながらアーサーは一つだけ残念に思った。ここにもう一人自分がいたら同時に乳首を舐めあげて、もっと彼女を喜ばせてあげられたかもしれない。しかし現実には彼一人。今は遠い母国の地に自分と瓜二つと称される双子の弟がいるが、彼はアーサーが女子高校生の乳首を舐めてることは知らないし、アーサーだって名前のことを教えるつもりもない。

「...っ、ん、ぁ...はッ」

強い力で吸いついた後は必ず舌で優しくころころと揉んでやる。そうするだけで名前は口の端からたらんと涎をこぼしながら愛らしい鳴き声をアーサーに聞かせてくれた。散々緊張をほぐしてやったとは言え、乳への刺激だけで完全に決壊した顔を晒す名前へ、もしかしたらここだけでイける日も案外近いのかもしれない、とアーサーは遠いようで近い先のことを考えていた。片方の突起を存分に可愛がった後は、チュッと強く吸い上げてから隣の園へ、場所を変えたアーサーの手は一方で少しずつ下にも伸びていく。
 大事なそこを守るための密林。母国では馴染みのない存在もこうして目にすると、なるほど...エロティックだ。甘い快感を少しでも楽にしようと太ももをすり合わせたのか、明らかに湯水ではない粘性のある液体が茂みに絡みついている。やはりこの体は覚えているのだ。自身がされてきたことを、それがいかに心地よいのかを。

「名前、スローセックスの経験は...。まぁ、明らかか」
「ふ、う、あぁ...、なん、て...?」
「いや、大したことじゃないよ」

リップ音を奏でながら名前の乳先から口を離したアーサーは自身の下唇をペロリひと舐めしてから顔を真っ赤にして焦点の定まらない瞳を宙に預けている名前にはしたなくも興奮する半身の存在を認める。女体特有の水々しい肌の感触を彼自身もまた楽しみながらゆっくりと腰と視線を下ろしていく。やがて行き着くその場所はアーサーが降りてくるのを確かに待ち望んでいた。

「足、開いて」

ふるふると首を振る。その命令を聞いて余計に太ももを閉じる。ここで無理強いを働くつもりはないのか、アーサーはただいつもの如く穏やかに名前を見守るだけだった。本人だって分かっている。ここまでされた以上、もう終わりと風呂敷を畳むわけにはいかない。アーサーにはできるだろうが、少なくともこんなに発情させらた名前にはできっこない。それでも素直になれないのは、擦り切られたなけなしの理性が邪魔をするからだ。

「あ、あしっ、開いたら...」
「うん?」
「が、がに股みたいになっちゃうッ。変な格好、や、だぁッ...!」

ポカン、と目を瞬かせるアーサーの姿を見る余裕すらなく、名前は叫んだ。

「それいいね」
「きゃ、」
「君のみっともないところ、もっと見せて」

アーサーの声に艶が乗る。何が彼の心に火をつけたのか、元々力の入っていない両太ももの付け根を簡単に割り開かせて名前が言うところのがに股姿勢を取らせると、ぐしょぐしょにしたたる膣先から甘い蜜をすくい、皮の下ですでに大きくなったクリトリスを転がす。クルンと円を描いてから指の腹で小さく引っ掻けば名前は待ち望んだ快感に喘ぐ。陸に打ち上げられた魚のようにびくびくと太ももを揺らす名前の暴れ具合はなかなかのものであったがアーサーは手を休めない。ぬるぬるの粘膜に当てられ少しずつ顔を出し始めた花芽がピンポイントの刺激に耐えられなくなってぶるり身を引き締めた瞬間、アーサーの手の動きがピタリと止んだ。

「...ぅ、あ...?」
「あぁ、ごめんよ。もしかして絶頂を迎えられそうだったのかな」
「い、いや...そ、んなこと...」

ない、と言い切れない自分が恥ずかしい。今確かに度重なる快楽に圧されて達しそうになっていた。てっきりそのまま果てるとばかりに予想していた分、突然収まったアーサーの動きは安堵よりも違和感をもたらして名前の心にほんの少し影を落とした。

「気持ち良かったら教えてね。僕もなるべく頑張るよ」
「...い、言うわけッ...!」

名前の反論に聞く耳持たず、アーサーは宣言するだけして再び秘所へと手を伸ばす。敏感なクリトリスへ触れてくるのを覚悟していた名前は彼の手があっさりとそこを通り過ぎて、彼女の蜜壺へちょっぴり指を伸ばしたかと思えばあっさり抜けていく中途半端な動きに瞠目する。そのまま十分にぬめり気を帯びた膣の周り、微妙にずれた箇所へ指をなぞらせながら、それでもまた徐々に体をよじらせていった。

「はっ、ふ、...ん、ぁ...」
「......。」

止めることのできない愛液がアーサーの手にまとわりついて、指先だけの動きがいつの間にやら中指も使って名前の割れ目を悪趣味な音を立てながら往復する。速いストロークが時折陰核や膣のふちに掠れて名前は獣のように荒い息を吐き出す。高揚する頬に潤む瞳を上目遣いに確認したアーサーはあっさり緩んだ膣内へ今度は深く人差し指を侵入させた。

「あぁ!...へ、ひ、ぁ」

もどかしい刺激から濃厚な快楽へと移り変わり一気に階段を駆け上がっていく。前回で知った名前の好きな場所を指で叩くように揉むとアーサーの肩に乗せてあった手が猫のように丸まった。嬌声の感覚が短くなっていき、何かを噛みしめるようにぎゅっと目を閉じて、内腿が痙攣する。

「(あ、く、くる...、きちゃう...!)」

快楽につながる決定的な刺激を断続的に送られて、脳信号がチカチカ点滅を繰り返す。頭が真っ白になっていく衝撃を覚悟して名前は自分からアーサーの指を締め付けた。その途端、

「...ふぁ?」
「どうしたんだい?名前」

良いところを叩いていたアーサーの指が止まる。同時に名前の追い立てられるような快感もあと一歩のところで身を引いてしまう。彼女の痙攣が落ち着いたのを見計らってアーサーはゆっくりと指を引き抜いた。イッているようで実はイけていない中途半端な状態。名前は歯痒さ強く体を戒めた。あともう少しで、恐ろしいほどの悦楽が味わえていたかもしれないのに。

「...まさか」

名前の背に嫌な予感がチクチクと這い上がる。今自分は故意に絶頂を邪魔された?信じられない面持ちでアーサーへ視線を落とす。名前の秘唇に向けられていた視線がゆっくり彼女のものと合わさった。見惚れるような笑顔は彼女好みの王子様然とした潔白さを漂わせて、それで。

「君の言葉を借りると、どうやら僕は"ド下手くそ"な男らしい。上手く導いてあげることができそうにないんだ、ごめんよ」

こいつ、根に持っている。
唐突な目眩に襲われて名前は天を仰いだ。確かに調子に乗った自分は彼との一夜をコケにしようと適当な台詞を撒き散らした。が、それにしたって性格が悪い。彼はこんなにもニヒルに笑う男だったのか。



限界まで声を潰す。勝手に痙攣しそうになる腰を叱咤して、長さにして数ミリ、爪先が丸まった。一見すると穏やかに快楽を享受しているような女は、その瞬間を迎えるのを静かに待つ。一定のリズムで半剥きのクリトリスをずちゅんと強めに嬲っていた指が、僅かに角度を変えたタイミングを狙い強制的に感覚を研ぎ澄ます。

「(ーーーっく、る)」
「まだだよ」

あとほんの少しの刺激を待ち望んで、腰を揺らしそうになる名前の動きを読んだかのようにパッと手が離れていく。それでも甘い刺激だけで絶頂を目指したが、足りない。腰が甘く痺れる感触にもうイってるのでは?と可能性が過ぎるも、これではないのだ。名前が知る火花散る衝撃には程遠い。

「なん、で、…っ、ひッ」
「君はまだ、気持ちよくなっていない」

そうだろう?
何もかもを分かりきった瞳に射抜かれて、名前は暗い絶望の底に叩き落とされた。全てを解放して自分の口で言葉にしなければ永遠とこの地獄が続くだけだ。ならば打ち明ければいい。お前のが欲しいのだと、気持ちよくしてほしいと嘘で塗り固めてしまえば、この苦しみからも開放される。
 下手な演技よりもずっと建設的で簡単なアイディアのように思えた。しかし、それができないから彼女はこうしてアーサーの責め苦を受けているのだ。恥ずかしいのか負けたくないのか心当たりがありすぎる。

「だけど、その辛さは分かるよ」
「ひっ、ああ、…!もう、むり、ィ!」
「あとは言葉にするだけ、簡単さ」

名前の息が落ち着き始めたので、アーサーはもう数えるのもやめた責めを再開する。回数を重ねるほど、どんなに間を置いても彼女が絶頂を迎えそうになるまでの時間は短くなっていく。限界が近いのは明らかだった。




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