※モブおじさんが登場します。



"22時、いつもの場所で"

 簡潔なメッセージにスタンプを一つ返して名前は地元の駅に降り立った。辺りはすっかり闇色に染まり、改札の向かいに立つショーウィンドウのガラスが彼女のちぐはぐな格好を浮き彫りにする。
 女らしさの欠片もないニットにジーンズ。荷物の詰まった通学鞄が壊滅的なファッションに拍車をかけている。改めて見返すと酷い格好であった。俗に言う干物女と呼ばれる人種が深夜コンビニを徘徊する姿ではないか。今まで忌避していた格好をあんな美形達の前で堂々と披露していた、自身の勢いと思い込みの力に感激すら覚える。
 駅に併設されているファッションモールの明かりが暗くなっていることを確認し、名前はやりきれない息を吐く。アーサーとギャラハッドの目を欺くことに必死で、後々の展開を全く考えていなかった。
 本来であれば今日は昼食の後、適当な店で服を見繕うつもりだったのに。ぐずぐずに崩壊した一日の計画に、無性に頭を掻きむしりたくなる。こんなはずではなかった。後悔してももう遅い。

「(家に帰っている時間は…ない、か)」

仕方がない。洋服はどうにもならないので潔く諦めよう。幸いにも今夜の相手は装いにとやかくケチをつけるタイプではなく、彼女との出会いそのものを重視しているはずだから。言い訳はいくらでも思いつく。人気のない女性トイレに引きこもった名前はマスクを取り、下ろした前髪を元に戻す。それから常用のヘアアイロンやら化粧道具を広げて慣れた手つきでいつもの顔へと戻していく。
 無心になって手首を捻りながら、考えるのはどうしてもあの男の事だった。二度目の再会にして相も変わらず目の覚めるような美形ぶり。彼を取り巻くキリエライト家の人間も相当だがアーサーは、なんというか、美醜を通り越してさらに一歩抜きん出た存在であるのが彼自身の放つ魅力とマシュ達の対応からよく分かった。

「(おかしいでしょ。敬語が基本、その上様づけなんてさ)」

詮索好きな性分ではなかったはずだが、アーサーと彼を取り巻く環境は、平凡を基準とする人生のやや斜め下を走る名前には難しそうな世界だった。奴は絶対に成金のお坊ちゃんではない。
 カリスマの一言で称するにはあまりに言葉が足らず。人間社会のヒエラルキー頂点にいるであろう、男の姿を思い返しては同時に自らの痴態もぶり返し、即座に首を振る。

「(顔はいいのよ。顔、は)」

 あと体。良い筋肉のつき方だった。
 あれでもう少しオツムが弱くて、性行為が下手だったら、名前は彼を翻弄できただろうか。そう、もしもの夢を抱いては直後泡となって消えていく。

「(奇跡的な再会、よね。何も変装する必要はなかったかな)」

アイロンの電源を切り、道具を片付けながらもしかして惜しいことをしたのでは、と考えてしまうのは今更というもの。名前の変装に完璧に騙されていた男であったが、他人のふりして逃げるのではなく、堂々と顔を晒すことで焦る顔を笑う意趣返しもありだったかもしれない。
 掌の上で踊らされた屈辱の夜を名前は勝ち逃げされたと決めつけているらしい。なんの勝負をしていたのかは彼女にしか知り得ぬ。

「(子供扱いしてくるところは、ホントいけ好かないけど)」

きっと本当に好きだったのだ、あの顔が。

 だから余計に悔しい。同じマウントで、いやこの際別の方法でもいい一度でいいからでギャフンと言わせてやりたかった。最後に驚いた顔を見れたのがせめてもの満足か。
 


 すっかり化粧と髪型だけ決め込んだ名前は公共トイレを後にし、商店街の裏側へ夜の街へと繰り出た。夕方前にはシャッターを下ろしすっかり眠りにつく街の表に反して、一本路地を曲がってしまえばこの時間はもう彼らのもの。目に容赦のないチカチカネオンが特徴的な異世界は今日も多くの若者やサラリーマンにOLで賑わっており、昼間とは熱気の種類が異なる活気に満ち溢れていた。
 名前は悪目立ちしないよう、俯きかつ足早にいわゆる繁華街の大通りから、ともすれば見落としてしまいそうな狭い路地へ入っていく。迷路のように複雑な道を慣れた足取りで突き進むめば、二桁目を超えた角の先、見覚えのある縦看板の元へたどり着いた。
 まだ彼は来ていない。周囲を確認してから名前は両膝を抱え、遠慮なく地面に尻を据える。この服装の言い訳つける、一つのアイディアがあった。頭を仕舞い猫のように丸まる彼女の姿は周囲の景色と相まって心苦しい一枚絵を作り上げる。

「名前ちゃん?」

どれくらいそうしていただろうか。不意に名前を呼ばれて顔を上げれば、名前の待ち合わせ相手がそこにいた。
 皺ばかりが目立つ冴えない顔、しっとりした夜風に吹かれてなお止まらない汗、いつ会っても変化のないしなびた背広。いかにも幸が薄い中年の痩せリーマンは今日も会社から気力をこってり搾り取られてきたらしい。どこにでもいそうな会社員であるのが特徴と言って差し支えない、そんな男だった。

「ど、どうしたの。こんなところに座っちゃって。しかもその格好は…」
「心配してくれるの?」
「もちろんだよ!」
「嬉しい」

へにゃり。力のない笑顔に呆気なくときめかされて男は名前を安心させようと慣れない笑みを形作る。普段から化粧も服装も隙のない彼女がこんな姿を自分に晒すなんて。よっぽどのトラブルを考える一方、もしやかなり気を許してくれているのでは?と舞い上がらずにはいられない。
 なんて、男が何を考えているか名前には全てお見通しだ。どうやら上手い具合に勘違いしてくれたらしい。まるで乙女のごとく頬を蒸気させ、落ち込んでいるはずの彼女の背中を嬉しそうにさする。

「(これで上手いこと同情を誘えば、今日はいつもより多く貰えるかも!)」

もう成果を出したつもりで、心の丘を飛び跳ねる。ニヤつく腹の内とは裏腹に顔の造形は今にも泣き出してしまいそうな悲しみに暮れていた。服装を逆手にとった作戦が上手くいきそうで、つい笑いを耐えきれないでいる名前を男を益々落ち込んでいると踏んだようだ。

「何か嫌なことでもあったの?」

こくり。唇を強く噛み締め、キュッと拳を丸める。

「すごく嫌な奴に会った」
「えっ…。か、彼氏とか?」

いきなり不躾だな、と名前は一つ視線をそらす。まあ、居心地の悪い相手に再会してしまったのは事実だ。

「違う。でも...その男のせいで私は…っ」

そこから先は湧き上げる激情のせいで言葉を紡ぐことができなかった、という設定にしておく。肩を震わせる名前に男の脳裏が察しをつける。まるで純血を散らされた処女のように涙ぐむ彼女が、どんな目にあったのか。事実ありもしない想像が膨らんでいくばかり。



 彼らは、彼女は互いの服の下を知っている、そんな関係だ。決してこれから初夜を迎えるような初々しき仲ではない。いつもの場所、と繁華街の中でも辺鄙な場所にあるちんけなホテルの前で落ち合うのがその証拠。
 奥を暴き暴かれた。その過程で、男は彼女の倫理観が常人とは一周ズレていることも、大抵の行為に肯定的なのも、もちろん把握済み。にも関わらず彼女がこうして涙するほどに苦痛を伴う出来事、そしてその相手とは。

「…可哀想に。そいつに酷いことをされんたんだね」
「(酷いこと、かな?ま、いっか)」

特には深く考えず、名前は頷いた。すると男は自身の想像が正しいと思い込んだのか、いるはずもない暴漢にやりきれない憎悪を抱く。怒りに震える彼の様子を機敏に感じ取って名前は少しだけ焦った。その気持ちは嬉しいが、いもしない相手を憎むより名前に同情を投げかけてくれた方が彼女の思惑としてはありがたい。

「すごく辛かった。もう思い出したくもない」
「名前ちゃん…」
「だから…お願い、忘れさせて」

ここぞとばかりに畳み掛ける、名前の常考手段だ。今夜は中々の名演技ではないだろうか。とびっきりの猫撫で声をかき鳴らし腕の裾を掴む。男の喉が上下するのを頭の冷静な部分がじっと観察していた。

「う、うん...いいよ。僕が、僕に任せて。忘れさせてあげる」
「良かった...ありがとう。今日会えなかったらどうしようかと思ってたの」

名前は膝を伸ばして立ち上がり、男と向き直った。あくまで自然に腕を絡ませて、恋人同士が口づけを交わす、一歩手前の距離まで迫る。じっと互いの瞳がまるで何かのタイミングでも見計らうかのように交錯した。きっと自分では気づいていないのだろう、荒々しい鼻息が名前の口元に被さり、前触れもなく理性がニョキッと顔を出す。

「(ウッ。くさい)」

男の唇が少しずつ尖り始めるのに反比例して名前の昂ぶりがが少しずつ冷めていく。自分のことなのに、どうしていきなり気分が萎えていくのか理由が分からない。会った時は乗り気なつもりでいたが、今はちっとも疼かない下半身に、仕方なく相手と距離を取る。

「おあずけね。行こ」
「エッ…」

部屋に入ればなんとかなるだろう。安易な考えをひた隠し、取ってつけた言い訳に、虚を食らった男は残念かつ不服に別の意味で唇を尖らせた。名前は何か言いたげな視線を無視してネオン看板の下にある入口へ先に足を踏み入れる。露骨な戸惑いぶりが後方からひしひし伝わってくるのが気持ちよかった。

「(...そう。これよこれ!男はこのくらいチョロくなくっちゃ)」

どこかの誰かとは大違いだ、どうしてかアーサーと比べてしまう名前だが奴はもう過去の男。一々気にするのは馬鹿らしい。加えて向こうは彼女の存在など記憶の片隅にすら残っていないだろう。あるはずもない後ろ髪が引かれそうになって名前は無理やり考えを断ち切り、部屋を選ぶパネルの前に立つ。

「名前ちゃんはどこがいい?」
「う〜ん、好きなところでいいよ」

下品な言い方にはなるが、結局することに変わりはない。見栄を張って高い部屋を選ぶくらいなら安い部屋でたんまりお給料をもらえる方が名前としても願ったり叶ったりだ。

「それなら、この部屋なんてどうかな?」

伸びた指先がSと名のつく部屋を指し示した時、名前は「えっ」と表に出ない驚きの声を上げた。別にそこまで高い部屋にしなくとも。男の財布の心配より、そこから彼女に流れてくる諭吉の数が減ってしまいそうで素直に喜ぶことができない。

「(ん?ちょっと待って)」

パネルを前に名前は男の右隣にすりついて腕を組んでいる。彼の手はしっかり捕らえているのに、どうして彼女の右横から綺麗な指が顔を出しているのだろう。もとより弱い名前の知能が一生懸命回転し始める。

「しかし、彼には些か予算が厳しいと見た。ここは僕に任せてもらえないだろうか?」

聞こえるはずもない声にまず幻聴の類を疑う。しかし聞いたこともない台詞を名前の妄想で再現した割には生々しい。というか、立ち姿が既に視界に映り込んでいる。

「な、…な、なん…ッ」
「その場合、君のパートナーにはご退出願うけれど、どうだろう」

羽振りの良さでは負けてないつもりだよ。
良い顔で、良い声で堂々と名前の体を買うと宣言せしめた男、ーーーアーサーは自身の登場を未だ飲み込めないでいる二人へ小さく肩を竦めた。

「もちろん、君達が真っ直ぐ互いの家に帰ってくれるのが一番なのだが」

気配の一切を感じさせず、突然彼らの横に現れた男は揃って呆然と口を開ける二人を置いて、マイペースにもホテルの内部を物珍しそうに観察していた。

「これがラブホテルか。華美な建物と思ったが内部は存外、老化が進んでいるね」

しみじみと誰に言うわけでもない感想に二人は頷けない。まだ、この男の登場をはっきりと認知できていないのだ。アーサーも答えが欲しくて呟いたのではないのだろう。三者の間にはしばらくの間奇妙な沈黙の時間が訪れていた。

「(げ、幻覚...?)」

であれば、こんなところにこの男がいるはずがない。

「…どうして、」
「おい、誰だね君は」

ようやく彼の存在を認めることができた名前から地を這うような恨み声が漏れる。どうしてここにいるのか、まさか跡をつけて来たとでもいうのか、分からない事が多すぎて今にもパンクしてしまいそうな頭から捻り出した必死の一言だった。
 一方で名前のパートナーは突然現れたかと思えば、小馬鹿にされたと悟ったのか、自分よりもずっと若い美貌の男に鋭い視線を向けた。鬱陶しそうに小さな瞳をさらに細める。

「こんな場所で冷やかしのつもりか?これだから外人は」
「失礼。しかし貴方と彼女の組み合わせはいささか滑稽というもの。見たところ身内同士の繋がりがあるようにも思えない」
「だからどうした」
「...こんな場所で何をされるつもりで?」
「人の蜜事に首を突っ込むな。日本では君のような男こそ馬に蹴られるというものだよ」
「僕が馬に、か」

フッ、と美しい瞳を伏せながら口元を歪めるアーサーに未だ戸惑いを隠せない名前の、とうに消え去った心の淡い部分が小さな鐘を鳴らす。たったそれだけの仕草でありながら、壮絶な色気をまとって彼はどこか挑戦的に男に詰め寄った。
 カジノの夜のしたたり顔とも、マシュの家で対面した優しげな顔でもなく、まるで見たことのない表情を浮かべている。

「忠告感謝する。肝に銘じておこう」
「そうではなく...フン、君に慣用句は難しいか」
「色恋の欠片も見えなかったものでね。安い関係と疑りつい水を差してしまった」

ちょ、口が悪い。
言葉遣いの話ではなく、遠回しに怒涛の嫌味を叩きつけてくる。悪びれた表情と裏腹に皮肉を吐くのは彼の十八番なのだろうか。攻撃的な姿勢の背景には、きっと二人がこれからしようとする行為を蔑んでいるからに違いない。
 名前が絡めていた腕の先、強い力で握りしめられた拳が目に入った。明らかに苛立っている。決して低くはないプライドが、アーサーの立て続けの挑発によって刺激されていく。

「彼は、名前ちゃんの知り合い?」
「あっ、えっと」
「…...まさか、」

しまった、名前は直感する。この流れはまずい。

「ーーこいつが君の言っていた暴漢男か?!」
「いや、ちがっ。落ち着いて」

剣幕に気圧されて返答を詰まらせたのが良くなかった。名前が言い切る前に彼女の腕を勢いよく振りほどいて、男はアーサーの胸倉を掴む。その形相は、怒りに顔を燃え上がらせる相貌は名前の知る冴えないサラリーマンとかけ離れており、激しい怒りの様子に名前はらしくもなく後ずさる。
 まず全てを勘違いしている。彼女は暴漢されたなどと一言も告げていない。連想させるような雰囲気は匂わせてしまったが。だというのに名前とアーサーが知り合いと分かって、安直に情報を繋ぎ合わせてしまった男は彼女がよっぽど大切なのか、それとも。

「(嘘でしょ...?すごい怒ってる!)」

それもこれも名前が言い訳のためにしょうもない嘘をついたせいだ。決してアーサーの強気な態度だけが原因ではない。何度か体を重ねていることで男のことを分かったつもりでいたが、怒り身を任せて豹変する男の姿は名前の知らない彼の側面だった。最初の余裕は底をつき、見るからに優男なアーサーがこのままではボコボコにされてしまうのではと、未来の惨状を予期しては心臓が凍りつきそうになる。
 自分が止めの一言を聞かせなければ。焦りからくる使命感に、背広を引っ張るが男は気づいていない。

「待って!この人じゃない。私は何もされてないから」
「この男にそう言わされてるのか?!」

全然違う。
いつもは名前の言うこと為すこと全てを肯定してくれるのに、どうして肝心な時に限って話を聞いてくれないのだろう。

「手を離してくれないだろうか。皺がついてしまうのは困る」
「...ッ、お前...!」
「(いらない一言を、なんでっ)」

加えて悪質なのが、男の怒りを煽っておきながらアーサー本人が涼しい顔で佇んでいる事だ。明らかに雲行きの悪さを助長するような態度。何を企んでいるのかさっぱりな名前からすればこれ以上に火に油を注ぐ態度や発言はやめてほしい。

「(話を聞いてくれないのなら、無理やり距離を取らせるしかない)」

そう考えた名前は部屋一覧が並ぶパネルに視線を走らせた。適当な部屋を選んで物理的に引き離してしまえば、流石にアーサーも部屋まではついてこないだろう。見越した上でパネルを押さんとする彼女の腕を強い力で引くものがあった。いつかの夜を沸騰させる勢いに、名前の方を一切見ない男を鋭く睨む。

「あーさっ...、」
「君は何もしなくていい」

一見すれば気遣ってくれているような言葉も、この状況では"何もするな"と命令されているようにしか聞こえない。

「ところで、先程あるものを拾ったのだが」
「はぁ?」
「貴方のものか、確認していただきたい」

彼女の手首を捕えたまま、淡々とした様子でアーサーが取り出したのは一枚の紙だった。かなり小さいサイズのようだが、プリントされた文字からして見に覚えがある。

「(名刺...?)」

そこにはアーサーの胸倉を掴む男の名前がしっかりと刷られている。途端に、男の顔から分かりやす血の気が引いていく。この世の終わりを迎えんばかりの絶望をかたどって体を硬直させたままピクリとも動かなくなった。あれは彼の名刺だ。知られてはいけない沢山の情報がアーサーの手に握られている。

「素晴らしい企業にお勤めだ。役職からして貴方の働きぶりはさぞや見事なものなのだろう」
「...っ」
「それから私の後ろにある、おそらく監視カメラだろう。今後のためにも、その拳を収めてくれまいか」

名前と男は揃って弾かれたように顔を上げる。アーサーの指し示す先には彼の言う通り真っ黒な機器が天井から吊り下げられており、一連の出来事をしっかり記録していた。胸倉を掴み、名刺を取り返そうと手を伸ばす男の姿はともすれば暴力を働いているようにしか映らないだろう。名前と同じ想像をかき立てたのか男の絶望が度数を増し、形容しがたい表情を刻んでいく。

「しっ、...知らん!!俺は何もしてないぞっ」
「では去れ。以降、彼女に近寄るな」
「...っ、くそ」

胸倉を掴んでいた手が離れると案の定、アーサーのシャツは皺々になっていた。万が一ほつれでもできたら名前はあの服を弁償できるだろうか。荷物を抱えながらホテルの入口から逃げ去る男の背中を眺めながら、警察沙汰にならなかった結果にただ安堵するばかり。色々と間違いを犯している身ではあるが、経歴は未だ綺麗なままでいたい。

「さて」
「......。」
「外に出よう、いいね?」

アーサーの反論を許さない問いに名前は沈黙を返すしかなかった。




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