天気予報のお姉さんが言ってた通り、雲一つ無い晴天。
絶好のお花見日和だ。
昨夜から仕込んでおいた、たくさんの料理も次々と消えていく。
みんな美味しそうに、笑顔で賛辞の言葉を贈ってくれる。
隊士の人達の人数が多いので、なかなか大変だったが、作りがいはある。
しかし
少し離れた所に座る、彼の表情はそれ程楽しくなさそうに見えるのは何故だろうか。
「桜、綺麗ですね」
そう声をかけながら近藤さんの隣に座ると
「そうだな…」
と、ぼんやりとした返事が返ってきた。
「お弁当、どうでしたか?量が多かったんで、作るの結構時間がかかったんですよ。でもうまくはできたんじゃないかなーって思うんですけど」
「あぁ、美味しかった。ごちそうさま」
やはり楽しくなさそうな声色で返事が帰ってくる。
普段から忙しい近藤さん。
丁度休みが桜満開のタイミングだったので、せっかくだしとお花見に誘ったのだが……
「…すみません…無理に付き合わせてしまって…」
「え?」
「せっかくのお休みなのに、私のわがままでお花見に付き合ってもらって」
それを聞いた近藤さんが慌てた様子で否定してきた。
「そんな事ないって!すっごい楽しみにしてたから!」
「そうだったんですか?」
でも、そんな風には見えなくて。
「てっきり、2人だけで花見するのかと思ってたから……」
ごにょごにょと唇を尖らせながら話す近藤さん。
あぁ、そういう事だったのか。
「すみません、気付かずに…」
嬉しくて、謝っているのにへらりと顔が緩んでしまう。
「じゃあ、これで許してあげる」
そう言って、近藤さんは隣に座る私の膝を枕にしてごろんと寝転がってしまった。
「えっえっ!?」
突然の出来事で身動きも取れず、されるがままを受け入れた。
まぁ、もとより拒否等するわけはないのだけれど。
「綺麗だな」
近藤さんが桜を見上げながら眩しそうに呟いた。
私もつられて桜を見上げる。
「そうですね。本当に綺麗」
キラキラと太陽に照らされる桜が風に揺れてとても綺麗だ。
「夢子ちゃん」
名前を呼ばれて視線を近藤さんへと落とすと、いつもより数倍も近い近藤さんの目と目が合った。
「もう少し頭下げて」
私の頭へと右手を伸ばして来るのを見て、ドキドキと心臓が高鳴る。
花びらでもついていたのか。
素直に頭を下げると、ぐいと頭を捕まれ、唇が重なり合った。
突然の出来事で思考が暫く停止していたが、状況を理解して、かぁっと顔が熱くなっていく。
「来年は2人で花見しような」
にっと笑って私を見上げる近藤さんに、真っ赤な顔でうんうんと頷き続けるしか今の私にはできなかった。
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