太陽が西へと傾きだして随分と経ってしまった。
日が沈む前にと急いでお日様のにおいを含んだ布団を部屋へとどんどん運んで行く。
「つ…疲れた…」
今日は絶好の洗濯日和だと、お天気アナが言うのを聞いて、それならばと布団を干し始めたのがきっかけだった。
自分の布団を干して、近藤さんの布団を干して、隊士の皆の布団を干していって…
干したからには取り込まねばならない事を思い出したのは、疲れを感じだした頃だった。
「うー…腕と腰が…しにそう」
何枚運んだだろうか。
何度も繰り返す重労働に疲労が溜まっていくのを感じる。
普段の運動不足を痛感し、今度、山崎さんとバドミントンでもしようかと考えながら、最後の布団を取りに庭へと向かった。
「よいしょ…っ」
本日何度目かわからない動作を繰り返す。
疲れのためか、抱えた布団を部屋へと置いた拍子にふらりと布団へと倒れこんでしまった。
ぼふんという音と共に、身体がぽかぽか暖かい太陽のにおいと、この布団の所有者である彼のにおいに包まれた。
近藤さん…。
最近、全然一緒に居れないな…。
攘夷浪士達が大きな動きをしているらしく、真選組全体がピリピリと慌ただしくしているのだ。
こういう時、多少なりとも武道の心得があれば、皆の役にたてたのに。
近藤さんを守る事が、盾になることができるのに。
近藤さんの近くに居られるのに。
そんな事をぐだぐだと考えているうちに、無意識に瞼が下がっていく。
まだやる事はあるのに。
頭ではわかっているのに身体が起き上がろうとしない。
私はそのまま微睡む意識を手放した。
日もすっかり沈んでしまい、一日の終わりを感じ始める時間になってしまった。
ここ数日の多忙さにやっとひと休憩入れようと自室に帰ったところで、足元に広がる異変に驚いた。
「えっ、なんで夢子ちゃんが…?」
障子が開きっぱなしだったので、何かと訝しみながら部屋を覗くと、夢子ちゃんが自分の布団の上で眠っていた。
一体どういう事なのか。
「夢子ちゃん」
すやすやと心地良さそうに眠る彼女を起こすのはしのびなかったが、このまま寝ていても仕方がない。
ゆらゆらと肩を揺すりながら名前を呼ぶ。
「ん…」
身動ぎをしながら、うっすらと目を開いた彼女に優しく声をかけた。
「夢子ちゃん、起きて」
「うん…起きる…」
言葉とは裏腹に瞼を閉じてしまった彼女を見て苦笑いを漏らす。
「夢子ちゃん」
「…起きるよ……」
返事だけでまったく起きる気配がない。
手を握ればぎゅうと握り返してはくる。
でも起きない。
本当は起きているのではないかと顔を近づけるが反応は無し。
ならばとそのままチュッと軽く口付けを落とせば、夢子ちゃんがうっすらと目を覚ました。
ようやっと起きるかと思ったが、へらりと笑顔を見せて俺の首へと腕を回して抱きつき、そのまま再び寝息をたて始めてしまった。
いきなりの事にとても驚いたが、先程までの疲れを吹っ飛ばす程幸せな気持ちになった。
俺は起こすのを諦め、この幸せを離すまいと愛しい彼女を抱きしめた。
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